ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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浜谷のいない一日

一月。

 

大学の試験期間。

 

浜谷は大学の試験があるため、この日は休みだった。

 

珍しく、ファンステージ原町中央店に浜谷の姿はない。

 

「おつかれさまぁ〜ず!」

 

朝礼が始まり、茂田がいつもの調子で声を張る。

 

「あれ、今日は琉くんいないニダ。」

 

「大学の試験だろ。」

 

石村が落ち着いた声で答える。

 

「学生は大変だな。」

 

「ちゃんと頑張ってほしいね。」

 

⸻

 

営業が始まる。

 

いつもなら、

 

「浜谷くん、景品お願い!」

 

「琉くん、メダルお願い!」

 

そんな声が飛び交い、すぐに「はい!」と元気な返事が返ってくる。

 

しかし今日は、その返事がない。

 

高崎が少し寂しそうに言う。

 

「なんかさ、静かじゃない?」

 

藤屋も柔らかく笑いながらうなずく。

 

「確かに。いつもインカムで返事してくれるもんね。」

 

⸻

 

昼休み。

 

自然と昔話になった。

 

高崎が懐かしそうに口を開く。

 

「そういえばさ、私としげちゃんと山神さんって、ほぼ同期なんだよね。」

 

「そうニダ〜。」

 

茂田が得意げにうなずく。

 

「もうだいぶ長いニダ。」

 

山神は腕を組んだまま、短く答える。

 

「おぅ。」

 

そしてぽつりと付け加える。

 

「昔は千歌も若かった。」

 

「今の琉くんくらいだな。」

 

「ちょっと山神さん!」

 

茂田が笑いながらツッコむ。

 

事務所に笑いが広がった。

 

⸻

 

石村も穏やかに話し始める。

 

「俺と藤屋さんも、入った時期ほとんど同じだったよな。」

 

藤屋は少し照れながら微笑む。

 

「そうですね。もうそんなに経つんだなって思います。」

 

「ほんと、早いよな。」

 

⸻

 

古坂も楽しそうに会話に加わる。

 

「私と大沼ちゃんも、ほぼ同期みたいなものだよね。」

 

「はい!」

 

大沼が明るくうなずく。

 

「一緒に覚えたこと、たくさんありましたよね。」

 

「懐かしいですね。」

 

⸻

 

その様子を見ていた相馬が、少し感心したように言う。

 

「こうして見ると、この店って同期多いのね。」

 

石村が軽く笑う。

 

「だから仲がいいのかもな。」

 

⸻

 

話題は自然と浜谷へ。

 

高崎がくすっと笑う。

 

「でもさ、琉くん最初ほんと緊張してたよね。」

 

「あー、してたニダ!」

 

茂田がすぐに乗る。

 

「インカムもめちゃくちゃ小さい声だったニダ。」

 

石村も思い出して笑う。

 

「景品補充行くだけでもガチガチだったな。」

 

山神が短く評価する。

 

「今は違う。」

 

「よく動く。」

 

「おぅ。」

 

⸻

 

大沼が優しく微笑む。

 

「優しい子ですよね。」

 

「困ってると、すぐ来てくれますし。」

 

藤屋も同意する。

 

「ちゃんと周り見てますよね。」

 

そのとき、日村が珍しく口を開く。

 

「……。」

 

一瞬の沈黙のあと、

 

「メンテ……。」

 

「センス……アル。」

 

ぼそりとつぶやく。

 

その言葉に全員が驚く。

 

石村が笑いながら言う。

 

「日村さんがそこまで言うなら、本物だな。」

 

日村は少しだけ照れたように視線を逸らした。

 

⸻

 

夕方。

 

営業が落ち着く頃。

 

茂田がぽつりとつぶやく。

 

「やっぱり、一人いないだけで違うニダ。」

 

高崎も同じ気持ちで笑う。

 

「うん、なんか物足りないよね。」

 

山神が短く締める。

 

「おぅ。」

 

⸻

 

その頃。

 

大学では試験を終えた浜谷が、大きく伸びをしていた。

 

「終わった……。」

 

ほっとした表情で空を見上げる。

 

明日はまたファンステージ。

 

そんなことを考えながら帰路につく。

 

そして翌日。

 

「おはようございます!」

 

いつもの元気な声が事務所に響く。

 

「おつかれさまぁ〜ず!」

 

茂田がすぐに返す。

 

「おぅ。」

 

山神が短くうなずく。

 

「おはよう、浜谷くん。」

 

石村が穏やかに迎える。

 

「浜谷くん、おかえりなさい。」

 

藤屋が優しく微笑む。

 

たった一日。

 

それでもその一日で、浜谷は改めて感じる。

 

ここが、自分の帰ってくる場所だと。

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