原町中央店。
午後。
山神はメダルゲームコーナーを歩いていた。
「すみませーん!」
客の声がする。
山神が向かおうとすると。
「はい!今行きます!」
先に浜谷が駆けていった。
メダルゲームのエラーらしい。
山神は少し離れたところから、その様子を見る。
浜谷は扉を開け。
内部を確認し。
詰まっていたメダルを取り除く。
リセットを押し、復旧。
「お待たせしました!もう大丈夫です!」
客に頭を下げる。
山神。
「おぅ」
そのまま歩いていると。
今度はクレーンゲームの前。
川原が客と話していた。
「もう少しこっち側を狙ってみてください」
アームの動きを説明しながら。
丁寧に接客している。
客がプレイする。
景品が動く。
「そうです!いい感じです!」
もう一度。
景品が獲得口へ落ちた。
「取れた!」
「おめでとうございます!」
川原が笑う。
少し離れた場所で。
山神。
「おぅ」
そこへ日村がやってきた。
「山神さん」
「おぅ」
「何見てるの?」
山神が視線を向ける。
浜谷は再びメダルゲームを確認している。
川原は景品を整えている。
「琉くんと川原ちゃん」
「二人?」
「おぅ」
日村も二人を見る。
「浜谷くん、メンテできるようになった」
「おぅ」
「川原さんも接客もクレーンも慣れたし」
「おぅ」
「最初の頃とは全然違う」
「おぅ」
日村が笑う。
「嬉しい?」
「おぅ」
「珍しく素直だ」
「おぅ」
しばらくして。
浜谷と川原が戻ってきた。
「山神さん、日村さん。何してるんですか?」
「二人のこと見てた」
日村が答える。
「僕ら?」
「うん。成長したなって」
川原が少し照れる。
「いやいや、まだまだですよ」
浜谷も頷く。
「僕もまだ分からないこといっぱいありますし」
山神が二人を見る。
「最初は」
「はい?」
「二人とも危なっかしかった」
「そんなに!?」
浜谷が笑う。
川原も。
「今は大丈夫ですか?」
山神は少し考えた。
「まだ危なっかしい」
「まだ!?」
「おぅ」
日村が吹き出した。
「でも前よりは、でしょ?」
山神は。
少しだけ笑った。
「おぅ」
浜谷と川原が顔を見合わせる。
「褒められたんですかね?」
「多分」
「多分なんだ」
その時。
店内からエラー音が鳴った。
浜谷が反応する。
「あ、行ってきます!」
「お願い」
浜谷が工具を持って向かう。
ほぼ同時に。
「すみませーん!」
別の客から声がかかる。
「はい!」
川原がクレーンゲームへ向かった。
二人の背中を。
山神は静かに見送った。
日村が隣で言う。
「いい子たちが入ってきたね」
「おぅ」
「さすが山神さん、2人の面接しただけある」
「おぅ」
教えて。
見守って。
気がつけば。
自分で考えて動くようになっていた。
山神にとって。
それはきっと。
景品よりも。
差し入れよりも。
何より嬉しい。
原町中央店にやってきた。
二人の若い店員はまさに。
天からのおくりもの。
そして。
今日も聞こえる。
いつもの一言。
けれど。
今日のそれは。
ほんの少しだけ。
嬉しそうだった。