阿佐野店。
祝日。
浜谷が出勤し、売り場へ出る。
「おはようございまーす!」
「琉くん!待ってたニダ!」
いきなり茂田が駆け寄ってきた。
「どうしました?」
「メダルが三ブース止まってるニダ!」
「三!?」
「あとクレーン二台!」
「五!?」
浜谷は店内を見る。
祝日ということもあり、普段より客が多い。
その中で。
エラー表示を出したメダルゲーム。
電源を落とされたクレーンゲーム。
合わせて五か所。
「なんで俺が来る日に限って……」
「頼むニダ!」
浜谷は工具を取りに向かった。
だが。
五か所を適当に回るわけにはいかない。
「待てよ……」
浜谷は考える。
メダル一号。
軽い詰まり。
すぐ直せそう。
メダル二号。
原因不明。
時間がかかりそう。
メダル三号。
エラー内容から、おそらくセンサー。
そしてクレーン二台。
一台は樋口が原因を確認中。
もう一台は完全停止。
「よし」
浜谷の中で。
作戦が完成した。
「まず一号を速攻で復旧。そのまま三号。二号は時間かかりそうだから後回し」
茂田が聞く。
「クレーンは?」
「樋口さん!」
「はい?」
浜谷が樋口を見る。
「そっち、原因分かりそうですか?」
「多分!こっちは私でなんとかなりそう!」
「じゃあその一台お願いしてもいいですか?」
「了解!」
「もう一台はメダル二台直してから僕が見ます!」
高村が笑う。
「なんか指揮官みたい!」
「今日は台数多いんで!」
細井が通りかかる。
「浜谷くん、私何すればいい?」
「細井さんはお客さんの対応お願いしていいですか?止まってる台聞かれたら、別の台で遊んでって伝えてください!」
「了解!」
浜谷は工具を握った。
「完璧や」
「何が?」
「メンテ作戦です」
そして。
作戦開始。
メダル一号。
予想通り詰まり。
除去。
復旧。
「一台!」
そのまま三号へ。
センサーを確認。
清掃。
リセット。
正常。
「二台!」
「順調ニダ!」
茂田が嬉しそうに言う。
浜谷も少し得意げになる。
「今日の僕、完璧ですよ」
「まさにパーフェクト浜谷です!」
その時。
樋口。
「浜谷くーん!」
「はい!」
「こっち、思ってた原因と違う!」
「マジですか!」
さらに。
細井。
「浜谷くん!」
「はい!?」
「今直したメダル、またエラー出た!」
「嘘でしょ!?」
高村までやってくる。
「浜谷くん!」
「今度は何ですか!?」
「別のメダルゲーム止まった!」
「増えた!?」
完璧だった。
メンテ作戦は。
完璧だった。
ただし。
機械が作戦に従ってくれなかった。
「一回整理します!」
浜谷は深呼吸する。
もう一度。
優先順位を組み直す。
直したはずの台。
新しく止まった台。
樋口が見ているクレーン。
客の多さ。
全部を見て。
「……よし!」
再び動き出す。
予定は崩れた。
そのたびに組み直す。
浜谷がメダル。
樋口がクレーン。
細井と高村が客を案内し。
茂田が全体を見る。
そして。
しばらくして。
最後の一台。
浜谷がリセットを押す。
正常に動き始めた。
「…………」
浜谷は立ち上がった。
「終わったぁ!」
「お疲れー!」
細井が笑う。
高村も拍手する。
茂田が言った。
「作戦通りだったニダ?」
「全然でした…」
即答だった。
樋口が笑う。
「パーフェクトじゃなかったね」
浜谷は工具を片付けながら首を振る。
「いや」
「?」
「途中で作戦を立て直して、最終的に全部直したんで」
胸を張る。
「結果的にはパーフェクトです!」
細井が笑った。
「自分に甘いなぁ」
「今日くらい褒めてくださいよ!」
祝日の阿佐野店。
予定通りにいかない機械たちと。
予定通りにいかないメンテナンス。
だからこそ。
崩れたら。
また考えればいい。
今日の作戦。
予定は。
全然パーフェクトじゃなかった。
それでも。
最後には。
全台稼働。
ならば。
浜谷にとっては十分。
つまり。
メンテ作戦はパーフェクトだった。