原町中央店。
午前。
「浜谷くん!」
「はい!」
カウンターにいた浜谷を、高崎が呼んだ。
「今日、荷物いっぱい来るから荷受けお願いね!」
「…………」
浜谷の表情が止まる。
「荷受け……」
「うん!」
「僕がですか?」
「うん!」
浜谷は荷受けが苦手だった。
荷物を受け取る。
伝票を確認する。
数を確認する。
所定の場所へ運ぶ。
言葉にすればそれだけ。
なのだが。
一度に大量の段ボールが届くと。
何から確認して。
何をどこへ運べばいいのか。
浜谷の頭の中は急激に不安になる。
「大丈夫大丈夫!」
高崎が笑う。
「分からなかったら聞きます…」
「よろしく頼む〜!」
そして。
その時はやってきた。
「お荷物でーす!」
「来た!」
バックヤードへ向かう浜谷。
そこには。
段ボール。
段ボール。
段ボール。
さらに。
段ボール。
「…………多くない?」
浜谷の顔が引きつる。
渡された伝票を見る。
目の前の箱を見る。
「えっと……これが景品で……」
一箱目。
「これは……ガチャ景品?」
二箱目。
「こっちは……メダルゲームの部品?」
三箱目。
「待って待って……これ何?」
さらに別の荷物が置かれる。
浜谷の処理能力を。
段ボールの数が。
完全に追い越した。
「どれがどれ!?」
浜谷が伝票を何度も見比べる。
「浜谷くん」
後ろから高崎の声。
「はい!」
「狼狽えない!」
「狼狽えてます!」
「一個ずつやればいいから!」
高崎が伝票を指差す。
「まず荷物の個数確認して」
「はい」
「そのあと伝票と合わせる!」
「はい!」
「いきなり全部やろうとしない!」
「はい!」
「1個1個で、よろしく頼む〜!」
浜谷は言われた通り。
一つずつ確認していく。
「一、二、三……」
落ち着けばできる。
「こっちが景品で……」
できる。
「これは部品……」
できる。
「いける!」
「そうそう!」
その時。
川原がやってきた。
「お疲れ様です」
「あ、川原さん!」
「荷受けですか?」
「そうなんですよ」
浜谷は箱を一つ持ち上げた。
「これは景品だから倉庫に――」
「浜谷さん」
「はい?」
「それ、そっちじゃないですよ」
「え?」
川原が箱のラベルを指差す。
「これ、景品は景品でもガチャ景品です」
「…………」
浜谷が見る。
本当だ。
「危なっ!」
「こっちですね」
「ありがとうございます!」
浜谷は素直に箱を置き直す。
作業再開。
しかし数分後。
「川原さん、確認していいですか?」
「はい?」
「これ、倉庫で合ってます?」
「合ってます!」
「ありがとうございます!」
さらに。
「川原さん」
「はい」
「この箱は事務所ですよね?」
「事務所です」
「ありがとうございます!」
「浜谷さん」
「はい?」
「さっきから私に聞きすぎじゃないですか?」
「助けてください!」
「先輩ですよね!?」
「同い年です!」
「ファンステでは先輩です!」
「今だけ後輩とか関係ないです!」
川原が笑う。
高崎も笑っている。
「浜谷くん、メンテの時と全然違うね!」
「メンテは機械が相手じゃないですか!」
浜谷が段ボールを指差す。
「荷受けは段ボールが一気に来るんですよ!」
「段ボールも襲ってこないですよ」
川原が冷静に返す。
「僕には襲ってきてるように見えるんです!」
「重症ですね」
それでも。
高崎に手順を教えてもらい。
川原に何度か助けられ。
やがて。
最後の一箱を運び終えた。
「終わったぁ……」
浜谷が大きく息を吐く。
高崎が笑う。
「できたじゃん!」
「高崎さんのおかげです」
「川原さんにも助けてもらってたね」
浜谷は川原を見る。
「ありがとうございました」
「どういたしまして」
「先輩なのにすみません」
「ほんとですよ」
「そこは否定してくださいよ!」
三人が笑う。
メンテナンスなら。
少しずつ頼られるようになってきた。
けれど。
苦手な仕事だって。
まだまだある。
そんな時は。
先輩に教わって。
時には。
後輩にも助けてもらえばいい。
浜谷は積み上がった段ボールを見た。
「まぁ次はいけると思います」
川原が笑う。
「でもまた分からなかったら聞いてください」
「……多分聞きます」
「もう諦めてるじゃないですか!」