3月。
浜谷がファンステージで働き始めて、一年が経った。
浜谷も20歳になっていた。
いつものように事務所へ入る。
「おはようございます!」
「おつかれさまぁ〜ず!」
茂田が笑顔で迎える。
「琉くん。」
「今日で一年ニダ。」
「え?」
浜谷は少し驚いた。
「あ、本当ですね。」
去年の今日。
初めてインカムを付け、何も分からないまま出勤した日。
あれから、もう一年。
「早いなぁ。」
石村がしみじみと言う。
「最初は本当に緊張してたもんな。」
「そうニダ。」
茂田も笑う。
「インカム聞こえないくらい声小さかったニダ。」
「景品補充行くだけでも緊張してたよね〜。」
高崎も思い出して笑った。
浜谷は恥ずかしそうに頭をかく。
「そんなにでしたか……。」
「そんなに。」
全員が笑った。
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営業が始まる。
この一年で、浜谷にできる仕事はずいぶん増えた。
景品補充。
接客。
イベント。
メダル対応。
クレーンゲームの初期対応。
インカムも自然に使えるようになった。
お客様から声を掛けられても、落ち着いて対応できる。
一年前とはまるで違う自分がいた。
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昼休み。
山神が缶コーヒーを飲みながら言った。
「おぅ。」
「一年続けば、一人前だ。」
浜谷は首を振る。
「まだまだです。」
すると日村が小さく言う。
「……。」
「イヤ。」
「イイ……。」
短い言葉だった。
でも浜谷には、その意味が十分伝わった。
「ありがとうございます。」
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午後。
茂田が浜谷を呼ぶ。
「琉くん。」
「一年続けてみてどうだったニダ?」
浜谷は少し考えてから答えた。
「最初は毎日失敗ばかりでした。」
「怒られることもありました。」
「でも。」
「皆さんが教えてくれたから、ここまで続けられました。」
「今では、この店に来るのが毎日楽しみです。」
その言葉を聞いた茂田は、満足そうに笑った。
「それなら採用して正解だったニダ。」
浜谷は小瀧さんから聞いた言葉を思い出す。
「ここの面接意外と厳しいから、うかったのはすごいよ。」
「大野さんが入ってから今までみんな長続きしなかったからね。」
「茂田さんたちをよろしくね。」
浜谷は少し嬉しくなった。
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閉店後。
帰り支度をしていると、大倉が店へ立ち寄った。
「お。」
「一年か。」
「おめでとう。」
「ありがとうございます。」
大倉は笑いながら浜谷の肩を軽く叩く。
「一年は通過点や。」
「二年目からが本番。」
「はい!」
その返事は、一年前とは比べものにならないくらい力強かった。
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帰り道。
浜谷は夜空を見上げる。
楽しかったこと。
失敗したこと。
怒られたこと。
笑ったこと。
全部が、この一年に詰まっていた。
(あっという間だったな。)
でも、まだ一年。
ここからもっと成長したい。
そんな気持ちが自然と湧いてきた。
浜谷は少しだけ笑う。
「二年目も、頑張ろう。」
春の夜風が、新しい一年の始まりを優しく運んでいた。