原町中央店。
午後。
浜谷はカウンターで大沼と話していた。
「浜谷くん、これってこっちでいいんだっけ?」
「あ、はい。それで大丈夫です」
「ありがと!」
大沼が笑う。
「…………」
浜谷も笑顔で返しながら。
ふと思った。
(大沼さんって前から思ってたけど可愛いよな)
小柄で。
明るくて。
話している時も、よく笑う。
(笑顔も素敵だし)
そして。
なぜか頭に浮かぶ。
(細井さんとはまたタイプが違って、癒される……)
「浜谷くん?」
「はい!?」
「どうしたの?」
「いや!なんでもないです!」
「?」
大沼が笑う。
また。
(可愛いな……)
そこへ。
「琉くーん」
茂田がやってきた。
「はい?」
浜谷を見る。
大沼を見る。
もう一度、浜谷を見る。
「…………」
「なんですか?」
「いやぁ?」
「なんですか、その顔」
「なんでもないニダ!」
「琉くん、細井ちゃんいるのに罪な男ニダ!」
明らかに何かを察した顔だった。
「細井さんとも特に何もないですけどね!」
浜谷は顔を赤くして、否定した。
しばらくして。
浜谷はメダルコーナーへ。
すると今度は藤屋と相馬がいた。
「浜谷くん」
「はい?」
藤屋がニヤニヤしている。
「大沼ちゃんと楽しそうだったね」
「普通に喋ってただけですよ」
相馬も笑う。
「浜谷くん、大沼ちゃん好きなの?」
「なんでそうなるんですか!?」
「顔」
「顔!?」
「なんかニコニコしてた」
「俺、普段からニコニコしてますよ!」
「それもそうね」
「ほら!」
浜谷は安心する。
ところが。
藤屋。
「でも大沼ちゃん可愛いでしょ?」
「…………」
浜谷が止まる。
「ほら」
「いや!」
「今の間は何?」
「大沼さんは普通に可愛いと思いますよ!」
言った。
直後。
浜谷は気づいた。
「あ」
藤屋と相馬。
「へぇ〜」
「やめてください!」
そこへ。
川原までやってきた。
「何の話ですか?」
藤屋が即答する。
「浜谷くん、大沼ちゃんが可愛いんだって」
「情報の切り取り方!」
川原が浜谷を見る。
「へぇー」
「その顔やめてください!」
「別に何も言ってないです」
「顔が言ってます!」
そして。
当の大沼が戻ってきた。
「何してるんですか?」
全員。
「…………」
「え?」
浜谷は目を逸らす。
大沼が首を傾げた。
「浜谷くん?」
「はい」
「なんでこっち見ないの?」
「今ちょっと見づらい事情がありまして」
「何それ?」
大沼が笑う。
また。
その笑顔。
(あぁ……やっぱ癒されるな)
「琉くん!」
突然。
茂田の声。
「うわっ!なんですか!」
いつの間にか茂田もいた。
「大沼ちゃんの沼にハマってるニダ?」
「ハマってません!」
「でも可愛いと思ってるんでしょ?」
藤屋が追撃する。
「それは……思ってますけど!」
大沼。
「え?」
「本人いるんだからやめてくださいよ!」
浜谷が顔を覆う。
大沼は少し照れながら。
「ありがとう」
「……どういたしまして」
「琉くん」
「なんですか!」
茂田がニヤッとする。
「大沼の沼に」
嫌な予感。
「浜谷が」
「やめてください」
「浜ります!?」
「無理やりすぎる!!」
全員が笑った。
浜谷は。
細井の笑顔が好きで。
大沼の笑顔にも癒され。
時には女性客にも目を奪われる。
我ながら。
忙しい男である。
ただ。
大沼奏子という沼。
その入口に。
浜谷は少しだけ。
足を踏み入れてしまったのかもしれない。