茂田の「ニダ」と「おつかれさまぁ〜ず」を数えた翌日。
休憩時間。
浜谷は昨日のメモ帳を眺めながら笑っていた。
「店長、結局『ニダ』五十二回でしたね。」
その言葉に高崎が笑う。
「でもさ。」
「店長だけじゃなくて、みんな口ぐせあるよね?」
石村もコーヒーを飲みながら頷く。
「言われてみればそうかも。」
大沼も興味津々だ。
「探してみます?」
浜谷はメモ帳を開いた。
「じゃあ今日は、みんなの口ぐせを調べてみましょう!」
こうして、第二回・口ぐせ調査が始まった。
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最初のターゲットは石村。
インカムから声が聞こえる。
「石村、向かいまーす。」
浜谷はすぐにメモを書く。
「一回。」
十分後。
「石村、向かいまーす。」
「二回。」
石村は戻ってきて首をかしげる。
「何してるの?」
事情を聞くと苦笑いした。
「えぇ?そんなに言ってるか?」
高崎が即答する。
「めっちゃ言ってます。」
石村は照れくさそうに笑った。
「癖なんだろうな。」
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続いて山神。
「山神さん!」
浜谷が呼ぶ。
「おぅ。」
「これお願いします!」
「おぅ。」
「ありがとうございました!」
「おぅ。」
浜谷は笑いをこらえながら書く。
「『おぅ』三回。」
山神は新聞を読みながら一言。
「そんなもんだ。」
「おぅ。」
「四回です。」
事務所が笑いに包まれた。
⸻
日村は少し難しかった。
一時間で聞こえた言葉は、
「……了解です。」
「……アリガトゴザイマス。」
それだけ。
高崎が笑う。
「ヒムは数えやすいね。」
すると日村が静かに言う。
「……。」
「了解です。」
浜谷が笑顔で書く。
「三回目。」
日村は少しだけ照れくさそうに笑った。
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高崎はすぐに見つかった。
「よろしく頼む〜!」
景品補充でも、
「よろしく頼む〜!」
休憩前も、
「よろしく頼む〜!」
浜谷が数える。
「今日だけで七回です。」
「そんなに?」
高崎は自分でも驚いていた。
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藤屋は閉店前。
「藤屋、お先、失礼します。」
石村が笑う。
「毎回ちゃんと名字から言うよね。」
藤屋はきょとんとした表情。
「そうですか?」
「無意識でした。」
浜谷はメモする。
「これも立派な口ぐせですね。」
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大沼も負けていない。
「大沼、大丈夫です!」
クレーン対応。
「大沼、大丈夫です!」
イベント準備。
「大沼、大丈夫です!」
浜谷は思わず笑った。
「自分の名前まで入ってますね。」
「癖ですねぇ。」
大沼も照れ笑いする。
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相馬はというと、
「そうだねぇ。」
相談を受けても、
「そうだねぇ。」
お客様対応後も、
「そうだねぇ。」
石村が笑う。
「相馬さんらしいな。」
相馬も穏やかに笑った。
「そんなに言ってた?」
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閉店後。
事務所に全員が集まる。
浜谷がメモ帳を開いた。
「それでは結果発表です!」
拍手が起こる。
「まず店長。」
「『ニダ』『おつかれさまぁ〜ず』『シーユーアゲイン』!」
茂田は笑いながらガッツポーズ。
「三冠ニダ!」
「はい、一回。」
高崎がすぐに指を差す。
事務所は笑いに包まれる。
「石村さん。」
「『石村、向かいまーす。』」
石村は苦笑い。
「認めるしかないな。」
「山神さん。」
「『おぅ。』」
「おぅ。」
「今ので追加です。」
「日村さん。」
「『了解です。』『アリガトゴザイマス。』」
日村は照れたように頭を下げた。
「……アリガトゴザイマス。」
「また増えました!」
「高崎さん。」
「『よろしく頼む〜!』」
「よろしく頼む〜。」
「はい、追加です。」
高崎は大笑い。
「もうダメだ(笑)」
「藤屋さん。」
「『藤屋、お先、失礼します。』」
藤屋は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「これからも言います。」
「大沼さん。」
「『大沼、大丈夫です!』」
「大沼、大丈夫です!」
「追加です。」
最後に相馬。
「『そうだねぇ。』」
相馬は笑いながら頷く。
「そうだねぇ。」
「追加です!」
浜谷はメモ帳を閉じた。
「結論。」
「ファンステージは、口ぐせの多い職場でした。」
全員が笑う。
その時、石村が茂田を見て言った。
「でもやっぱり、一番印象に残るのは店長だな。」
全員が大きく頷く。
茂田は照れ笑いしながら肩をすくめた。
「そんなことないニダ。」
浜谷はすかさずメモ帳を開く。
「はい。」
「今日五十三回目です。」
一瞬静まり返った事務所。
次の瞬間――。
「ははははは!」
今日もファンステージには、いつもの笑い声が響いていた。