ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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13人のお客!?

原町中央店。

 

ゲームセンターには。

 

今日もいろんなお客さんがやってくる。

 

その日。

 

最初に浜谷が出会ったのは。

 

四人家族だった。

 

父親。

 

母親。

 

兄。

 

妹。

 

クレーンゲームの前で。

 

父親が浜谷を呼び止める。

 

「これ、全然取れないんだけど」

 

「確認しますね」

 

浜谷が台を見る。

 

特に異常はない。

 

景品の位置を確認して。

 

少し手直しする。

 

「こちらでお願いします」

 

しかし。

 

母親が不満そうに言った。

 

「もっと取りやすくできないの?」

 

「申し訳ありません。こちらで様子を見ていただければ」

 

「結構お金使ってるんだけど」

 

父親も続く。

 

「普通もっとサービスするでしょ」

 

「…………」

 

浜谷が説明している横で。

 

兄と妹は。

 

なんとも居心地が悪そうだった。

 

「もういいじゃん……」

 

兄が小さく言う。

 

妹も母親の服を引っ張った。

 

「やめてよ……」

 

そこへ石村がやってくる。

 

「どうされました?」

 

浜谷と交代するように。

 

落ち着いて対応に入った。

 

少し離れた場所まで来て。

 

川原が浜谷を見る。

 

「大変そうでしたね」

 

「子どもたちの方が大人でしたよ……」

 

二組目。

 

メダルゲームコーナー。

 

浜谷が巡回していると。

 

常連の老夫婦がいた。

 

「あら、浜谷くん!」

 

「こんにちは!」

 

「久しぶりじゃない」

 

「そうですか?」

 

おばあさんが笑う。

 

「最近いないから」

 

「ああ、阿佐野行ってること多いですからね」

 

「そうそう」

 

隣のおじいさんも頷く。

 

「いないと寂しいよ」

 

「そんなこと言っても何も出ませんよ?」

 

「メダル出してよ」

 

「それは無理です!」

 

三人で笑う。

 

「でも、また来てね」

 

浜谷は少しだけ嬉しくなった。

 

「はい。原町の人間なんで」

 

三組目。

 

またメダルゲーム。

 

浜谷が歩いていると。

 

見覚えのある男性がいた。

 

「…………」

 

以前。

 

理不尽なことで浜谷に怒鳴ったことのある客。

 

向こうは。

 

普通にメダルゲームをしている。

 

浜谷は思わずいつもの笑顔を忘れて、無言で通過した。

 

そこへ相馬が来る。

 

「浜谷くん、どうしたの?」

 

「いえ」

 

一度だけ振り返る。

 

「……何でもないです」

 

忘れてはいない。

 

忘れてはやらない。

 

四組目。

 

クレーンゲーム。

 

「すみませーん!」

 

明るい声に浜谷が振り返る。

 

若い女性が二人。

 

一人は日焼けした肌。

 

もう一人は色白。

 

二人ともかなり露出の多い服装だった。

 

「これ、直してもらえます?」

 

「はい!」

 

浜谷が向かう。

 

「どの景品ですか?」

 

「これー」

 

「分かりました」

 

浜谷は景品を直す。

 

「こちらでどうぞ!」

 

「ありがとー!」

 

「ありがとうございます!」

 

浜谷が離れる。

 

少し先に。

 

山神がいた。

 

「…………」

 

「山神さん」

 

「おぅ」

 

「何も言ってませんよ」

 

「おぅ」

 

「……見てました?」

 

「おぅ」

 

山神は笑っている。

 

「僕もです!」

 

五組目。

 

男子中学生が三人。

 

プリっとプリンセスの景品が入った台の前にいた。

 

「カヲリじゃなくてアツコ欲しいんだけど」

 

「店員呼べば?」

 

「いや、無理だろ」

 

「なんで?」

 

「恥ずいじゃん」

 

少し離れたところで。

 

川原がその会話を聞いていた。

 

プリっとプリンセス好きとしては。

 

聞き逃せない。

 

浜谷がやってくる。

 

「どうしたんです?」

 

川原が小声で事情を話す。

 

浜谷は三人を見る。

 

なるほど。

 

浜谷は台へ向かい。

 

景品を確認するふりをして。

 

アツコの景品を前に出した。

 

「こちら、アツコ前に出しておきました。よかったら遊んでみてください」

 

「あ……ありがとうございます」

 

浜谷はそのまま離れる。

 

中学生たちは。

 

すぐにゲームを始めた。

 

川原が笑う。

 

「優しいですね」

 

「店員として当たり前ですよ!」

 

「思春期ですからね」

 

「プリっとプリンセスに年齢制限はないですから」

 

「というか、川原さん気づいたなら自分で行けばよかったのに」

 

そして。

 

十三人目。

 

「おーい」

 

聞き覚えのある声。

 

浜谷が振り返る。

 

「長北!」

 

長北長介が立っていた。

 

「来たぞ」

 

「お前、原町来るの初めてじゃね?」

 

「そう」

 

「阿佐野には来たことあるのに!?」

 

「順番が逆になったな」

 

そこへ川原がやってくる。

 

「浜谷さんの知り合いですか?」

 

「はい、大学の友達です」

 

長北が軽く頭を下げる。

 

「長北です」

 

「川原です」

 

「浜谷さんと同い年で、ファンステでは後輩です」

 

「余計な説明しないでください」

 

川原が笑う。

 

「合ってるじゃないですか」

 

カウンターでは。

 

茂田がその様子を見ていた。

 

近くには日村。

 

少し離れたところには石村。

 

メダルコーナーには相馬。

 

山神の。

 

「おぅ」

 

という声も聞こえる。

 

家族で来る人。

 

いつものように遊びに来る人。

 

ちょっと苦手な人。

 

華やかな人。

 

好きなものを素直に言えない人。

 

そして。

 

浜谷を知っている人。

 

ゲームセンターには。

 

いろんな人がやってくる。

 

今日。

 

原町中央店を訪れた。

 

十三人のお客さん。

 

明日になれば。

 

また違う誰かが。

 

この場所の扉を開ける。

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