原町中央店。
事務所。
「…………」
茂田と浜谷が。
机を挟んで向かい合っていた。
二人の間には。
何枚ものカード。
「茂田さん」
「はい」
「一枚選んでください」
「これニダ」
「では……」
浜谷がカードをめくる。
「おお!」
「何ニダ!?」
その様子を。
事務所の入口から川原が見ていた。
「……何してるんですか?」
二人が振り返る。
「占いニダ」
「占い?」
川原が机を見る。
「タロット?」
「そうです!」
浜谷がカードを持ち上げた。
「僕、最近タロット占いの資格取ったんですよ!」
「え!?」
「通信講座で!」
「何してるんですか」
「勉強ですよ!」
川原は呆れながらも、カードに近づいた。
「ちゃんと占えるんですか?」
「失礼ですね!ちゃんと阿佐野では細井さんと古坂さんも占いましたよ」
「結果は?」
「細井さんには『殴られる未来が見えます』って言ったら、本当に殴られそうになりました」
「それ占いじゃないですよ」
「冨美子は?」
茂田が聞く。
「健康運を聞かれました」
「なんて?」
「僕じゃなくて病院で聞いてくださいって」
「占い師やめろニダ」
そこへ日村が入ってきた。
「何してるの?」
「浜谷さんが占いやってます」
「へえ」
日村が座る。
「じゃあ俺も」
「お任せください!」
浜谷がカードを並べる。
日村が一枚引く。
浜谷がめくった。
「……塔です」
「何それ?」
「突然の変化とか、崩壊とか」
「嫌だな」
「今日、機械壊れるかもしれません」
「それは占いじゃなくてもあり得る」
続いて高崎。
「私は?」
カードを引く。
「女帝!」
「へえ」
「激情、豊かさ、愛情……」
浜谷が高崎を見る。
「高崎さんじゃないですか!」
「どういう意味?」
「いい意味です!」
「本当に?」
「いい意味です!」
浜谷の声が少し裏返った。
藤屋もやってくる。
「私もやって」
「どうぞ!」
カードをめくる。
「運命の輪!」
「何?」
「転機とか、チャンスです!」
「イベント成功する?」
「するかもしれません!」
「曖昧」
「占いですから!」
大沼も興味津々で座った。
「恋愛運!」
「来ましたね」
浜谷がカードを並べる。
大沼が引く。
「恋人!」
「えっ!」
「おお!」
周囲が盛り上がる。
「大沼さん、いいですよ!」
「本当に!?」
「たぶん!」
「たぶん!?」
そこへ。
石村が事務所を覗いた。
「みんな何してるの?」
「浜谷さんの占いです」
川原が答える。
「石村さんもどうですか?」
「俺はいいかな」
「なんでですか!」
「悪い結果出たら一日気になるから」
「慎重!」
川原が笑った。
「石村さんらしいですね」
最後に。
川原が浜谷の前に座った。
「じゃあ私も」
「おっ。何を占います?」
「浜谷さんの占い師としての将来」
「僕を占うんですか!?」
川原が一枚選ぶ。
浜谷がめくる。
「…………」
全員がカードを見る。
浜谷も見る。
「…………」
川原が聞く。
「どうなんですか?」
「これは……」
浜谷が真剣な顔になる。
「まだまだ勉強が必要ということで」
「カードの意味は?」
「秘密です」
「読めないんじゃないですか?」
「違います!」
茂田が笑う。
「修行不足ニダ」
「資格持ってるんですよ!」
「通信講座でね」
高崎が言った。
「通信講座を馬鹿にしないでください!」
事務所に笑い声が響く。
浜谷はタロットカードを集めながら。
胸を張った。
「皆さん。また何か悩みがあったら僕のところへ来てください!」
「メンテの相談でいい?」
日村が聞く。
「それは日村さんに聞きます!」
「占い師の意味ないじゃん」
今日も。
原町中央店の未来は。
誰にも分からない。
ただ一つ。
浜谷がしばらく。
タロットカードを持ち歩くことだけは。
占わなくても分かりそうだった。