阿佐野店。
浜谷はゲーム機の前にしゃがみ込み、動作を確認していた。
「……大丈夫そうやな」
扉を閉めて立ち上がる。
そこへ矢水がやってきた。
「浜谷さーん、大倉さん来たよー」
「え、なんで?」
浜谷は少し驚いた。
今日は大倉の巡回日ではないはずだった。
「月一のお金を管理する日だから」
「あ、なるほど!」
それなら納得だった。
浜谷はそのままカウンターへ戻ろうとする。
すると。
事務所の扉が開いた。
ガラガラガラガラ――。
「うわっ」
大倉が金銭管理用のカートを押しながら、ものすごい勢いで出てきた。
忙しそうだった。
浜谷は少し離れた場所からその姿を見る。
「……あとで挨拶しよ」
今声をかけるのは邪魔になりそうだ。
ところが。
大倉の方が浜谷に気づいた。
「琉くん、お疲れさん!」
「あ、お疲れ――」
ガラガラガラガラ――。
「……様です」
もういない。
大倉はそのまま両替機へ向かっていた。
浜谷は一人取り残される。
「忙しそうやなぁ……」
カウンターへ戻った。
特に呼び出しもない。
浜谷は少しボーッとしたあと、パソコンでメンテナンス連絡を開いた。
各店舗から上がっているエラーや修理状況を確認する。
その時。
ガラガラガラガラ――。
「ん?」
さっき両替機へ向かった大倉が、今度はカートを押しながら事務所へ爆速で戻ってきた。
「早っ」
バタン。
事務所の扉が閉まる。
その直後。
ジャラジャラジャラ――。
小銭の音が響いてくる。
浜谷はパソコンを見ながら呟いた。
「うわぁ、大変そう……」
再びメンテナンス連絡へ目を戻す。
阿佐野。
別店舗。
そして原町中央店。
「原町、最近エラー出てないやん」
少し嬉しくなる。
その時。
バタン!
また事務所の扉が開いた。
「今度は何や」
大倉が出てくる。
今度はカートを押していない。
そして浜谷を見つけると。
「琉くん、お疲れさん!」
「あ、お疲れ様です!」
今度は言えた。
大倉はそのまま歩きながら続ける。
「今から原町行ってくるわ!」
「えっ」
浜谷が時計を見る。
「今からですか?」
「せやで!」
「さっきまで阿佐野のお金やってましたよね?」
「やってたで!」
「忙しすぎません?」
大倉は笑う。
「しゃあないやろ、仕事や!」
そのまま出口へ向かっていく。
「じゃ、お疲れさん!」
「お疲れ様です!」
自動ドアが閉まった。
浜谷はしばらく入口を見る。
「……ほんまに行ったり来たりやな」
そこへ高村がやってきた。
「あれ、大倉さんは?」
「原町行きました」
「もう?」
「ついさっきまで小銭ジャラジャラやってましたよ」
高村が笑う。
「忙しいねぇ」
「見てるだけで疲れます」
浜谷は再びパソコンへ目を向けた。
そこには先ほど見ていた原町中央店のメンテナンス連絡。
「……原町、エラー出てないのにな」
「メンテで行くんじゃないんじゃない?」
「あ、そっか」
エリアマネジャーの仕事は、メンテナンスだけではない。
店舗のお金を確認して。
店内を行ったり。
事務所へ戻ったり。
そして。
別の店舗へ向かったり。
阿佐野店を出ていった大倉が、今日このあと何店舗を行き来するのか。
浜谷には分からない。
ただ一つ分かるのは。
「大倉さん、帰る頃にはぐったりしてそう……」
月に一度のお金の管理日。
大倉康弘。
今日も行ったり来たりで。
まだ、ぐったりする暇すらなかった。