阿佐野店。
午後。
カウンターで細井が何かを探していた。
「ハサミどこだっけ……」
引き出しを開ける。
ない。
別の引き出し。
ない。
「さっき使ったの誰だろ」
そこへ大澤がやってきた。
「ハサミ?」
「はい」
「あるよ」
「え?」
大澤がポケットからハサミを取り出した。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
その数分後。
今度は古坂。
「テープない?」
「あるよ」
大澤が出す。
「ありがと」
さらに高村。
「油性ペンってある?」
「はい」
大澤が出す。
「……大澤さん、何でも持ってるね」
「そう?」
そこへ矢水までやってくる。
「ドライバーってある?」
「どんなの?」
「小さいのなんだけど、見たことないのよね」
「あるよ」
「あるの!?」
細井が振り返った。
大澤の手には小さなドライバー。
矢水に渡す。
「ありがとう」
「……」
細井は大澤を見つめた。
「大澤さん」
「ん?」
「もしかして魔法使えます?」
「使えないよ」
即答だった。
ちょうどそこへ茂田が来る。
「何の話ニダ?」
細井が大澤を指差した。
「大澤さん、何でも出てくるんですよ」
「何でも?」
「ハサミ、テープ、油性ペン、ドライバー」
茂田の目が輝く。
「サワー、魔法少女だったニダ!?」
「違うよ!」
大澤が笑う。
古坂がじっと大澤を見る。
「……魔法少女」
「何?」
「いや」
古坂は少し考えた。
「少女?」
「古坂さん?」
「なんでもない」
「今なんか言ったよね?」
高村が笑いを堪える。
矢水が口を挟んだ。
「じゃあ魔女?」
「なんでそうなるの?」
「魔法使うし」
「使ってないよ」
「魔法少女よりは……」
「高村さんまで何言ってんの!」
いつの間にか、大澤が魔法少女なのか魔女なのかという話になっていた。
「じゃあ何か出してみてくださいよ」
細井が言う。
「だから魔法使えないって」
「十ミリのレンチ!」
「あるよ」
「あるんだ!?」
大澤が工具を出す。
「結束バンド!」
「ある」
「プラスドライバー!」
「はい」
「油性ペン!」
「さっき貸したでしょ」
「……強い」
細井が呟いた。
茂田も感心している。
「これは魔法ニダ……」
「だから違うって!」
「大澤さん、もう魔女でいいんじゃない?」
古坂が笑う。
「よくない」
「お母さん魔法少女・大澤!」
「やめて」
阿佐野店に笑い声が響いた。
しばらくして。
それぞれが仕事へ戻ろうとした時だった。
大澤が自分のポケットに手を入れる。
「……あれ?」
反対側。
「……ない」
高村が振り返る。
「どうしたの?」
大澤はポケットをもう一度探った。
「私のボールペン知らない?」
一同。
「……」
細井が言った。
「魔法で出してくださいよ」
「出せたら探してないよ!」
魔法少女でも。
魔女でも。
自分のボールペンまでは出せなかった。