阿佐野店。
午後。
「いたたた……」
浜谷が顔をしかめながら、背中を押さえていた。
それを見た細井が近づいてくる。
「浜谷くん、どうしたの?」
「背中痛いんですよ……腰も」
「また腰?」
「今回は背中もセットです」
「セットって何」
少し離れたところにいた茂田も振り返る。
「琉くん、また痛めたニダ?」
「みたいです」
「何したの?」
「それがですね……」
浜谷は少し言いづらそうにした。
「最近、寝てる時にエビ反りになってるみたいで」
「エビ反り?」
「朝起きると、なんか反ってるんですよ」
細井が首を傾げる。
「どういう寝方してるの?」
「僕が聞きたいです」
もともと若いくせに腰痛持ちの浜谷。
そこへ最近の謎のエビ反りが加わり、今日は背中から腰にかけて、いつも以上に痛みが出ていた。
そこへ大澤もやってくる。
「大丈夫?」
「普通に歩く分には大丈夫なんですけど、重いもの持つのがちょっと……」
「じゃあ今日は持たない方がいい」
「いや、でも仕事なんで」
浜谷が近くの景品箱へ手を伸ばす。
「浜谷くん」
細井が止めた。
「はい」
「持たない」
「でも」
「殴るよ?」
「背中痛いんで今日はやめてください」
「じゃあ持たないで」
「はい……」
珍しく一発の交渉もなかった。
今日は細井が景品の入った箱を運び、大澤も普段以上に力仕事を引き受ける。
茂田も店内を動きながら、浜谷が重いものを持とうとしていないか気にしていた。
「琉くん!」
「はい!?」
「それ重いやつニダ!」
浜谷の手には箱。
「そんなでもないですよ」
「置くニダ」
「はい……」
箱を置いた。
「今日はみんなでやるから、琉くんは無理しない!」
「すみません」
「早く治すニダ」
大澤がその箱を持ち上げる。
「これくらいなら持つよ」
「ありがとうございます」
浜谷は少し申し訳なさそうだった。
いつもなら自分が率先してやっていることを、今日は誰かにお願いする。
それがどうにも落ち着かない。
それでも。
背中は痛い。
腰も痛い。
無理をして悪化させれば、もっと迷惑をかける。
今日は素直に頼ることにした。
夕方。
細井が台車を押して倉庫から戻ってくる。
「細井さん、ありがとうございます」
「いいよ」
大澤にも。
「大澤さんもありがとうございます!」
「どういたしまして」
茂田にも。
「茂田さんもありがとうございます」
「今日は大人しくしてるニダ」
「はい」
浜谷は三人を見る。
今日一日。
かなり助けてもらった。
「みなさん、ありがとうございます!」
三人が浜谷を見る。
浜谷は笑顔で続けた。
「治ったら、おんぶさせてください!」
「大丈夫!」
細井。
茂田。
大澤。
三人の声が綺麗に重なった。
「…………」
浜谷が固まる。
「いや、お礼ですよ?」
「大丈夫」
「琉くんの背中に乗る必要ないニダ」
「私も大丈夫」
全員。
遠慮した。
「なんでですか」
「治った背中また痛めるでしょ」
細井が言う。
「確かに」
浜谷は納得した。
せっかく治して。
また誰かを背負って痛めては意味がない。
琉の背に乗せてもらう必要は。
どうやらなさそうだった。