ある日の朝。
朝礼が終わると、茂田は古坂に声をかけた。
「冨美子、ちょっといい?」
「うん!どうしたの?」
二人は事務所へ入っていく。
その様子を見た浜谷は少し気になった。
「何の話だろう……。」
石村は静かに答える。
「店長と二人で話すってことは、大事な話かもしれないな。」
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昼休み。
古坂はどこか考え込んでいた。
浜谷が声をかける。
「古坂さん、大丈夫ですか?」
古坂は少し笑う。
「うん。」
「まだ、ちゃんと決まったわけじゃないんだけどね。」
それ以上は話さなかった。
浜谷は気になりながらも、それ以上聞くことはできなかった。
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閉店後。
茂田は全員を事務所へ集めた。
「今日はみんなに報告があります。」
スタッフ全員が茂田を見る。
茂田は古坂の隣に立った。
「兼任店長になってから、阿佐野店へ行く機会が増えました。」
「向こうのお店も頑張っているんだけど、原町中央店との橋渡しになってくれる人が必要だと思っています。」
少し間を置く。
「そこで私から会社へお願いをしました。」
古坂は静かに前へ出る。
「来月から、阿佐野店へ異動することになりました。」
一瞬、事務所が静まり返る。
「えっ……。」
浜谷は思わず声を漏らした。
高崎も驚いた表情を見せる。
「古坂さんが?」
武藤は少し寂しそうに微笑んだ。
相馬もゆっくりとうなずく。
石村は古坂を見る。
「茂田さんが推薦したんだな。」
茂田は力強くうなずいた。
「うん。」
「古坂さんなら、お客様にもスタッフにも優しく接してくれる。」
「阿佐野店でも、きっと力になってくれると思ったの。」
古坂は照れくさそうに笑う。
「最初は私でいいのかなって思いました。」
「でも、千歌ちゃんが『一緒に阿佐野店を盛り上げよう』って言ってくださって。」
「私も挑戦してみようと思いました。」
浜谷は複雑な気持ちだった。
嬉しい。
でも、寂しい。
入社してからずっと一緒に働いてきた先輩が、別のお店へ行ってしまう。
その実感が少しずつ湧いてくる。
山神が静かに口を開く。
「阿佐野はいい店だ。」
「安心して行け。」
古坂は笑顔でうなずいた。
「はい!」
高崎も古坂の肩を軽く叩く。
「でも遊びに来てね。」
「もちろん!」
石村も笑う。
「隣店なんだから、会えなくなるわけじゃない。」
その言葉に、浜谷も少し安心した。
茂田はみんなを見渡す。
「古坂さんが安心して新しいスタートを切れるように、みんなで送り出そう。」
「はい!」
スタッフ全員の返事が事務所に響いた。
浜谷は古坂を見つめながら思う。
(出会いがあれば、別れもある。)
(でも、その別れは終わりじゃない。)
阿佐野店は、すぐ隣にある。
また一緒に働く日も、きっと来る。
そう信じながら、浜谷は笑顔で古坂に言った。
「古坂さん、応援してます。」
古坂も笑顔で答えた。
「ありがとう、浜谷くん。」
新しい一歩は、静かに動き始めていた。