原町中央店。
午前。
浜谷は山神と並んで、クレーンゲームの景品を補充していた。
「山神さん」
「おぅ」
「山神さんっていくつですか?」
山神は浜谷を見る。
「琉くんは?」
「僕、今年で二十二です」
「三倍いってないくらいだ」
「うわぁ、すごい!」
浜谷が山神を見る。
白髪。
落ち着いた雰囲気。
何があっても動じない。
そして。
「おぅ」
この一言で大体なんとかなる。
「僕、歳を取ったら山神さんみたいにダンディーになりたいんですよ」
「おぅ」
「渋くてカッコいいじゃないですか」
「おぅ」
「僕も将来、『おぅ』だけで生きていけますかね」
「それは無理だろ」
山神が笑った。
浜谷は店内の巡回に向かった。
一人の女性客がクレーンゲームコーナーへ入ってきた。
浜谷の視線が。
止まった。
胸元の大きく開いた服。
短いホットパンツ。
目元には妖艶なほくろ。
ぷっくりとした唇。
「…………」
浜谷が見る。
女性客が歩く。
浜谷の目も動く。
「…………」
女性客が台の前で立ち止まる。
浜谷の目も止まる。
「浜谷さん」
「…………」
「浜谷さん」
「はい!?」
川原が横に立っていた。
「何見てるんですか?」
「いや、なんでもないです」
「ずっと見てましたよね?」
「見てません」
「見てました」
「景品を見てたんですよ」
「どの景品ですか?」
「…………」
浜谷は女性客の方を見る。
その周辺には。
大量の景品。
「いっぱいあります」
「この変態!!」
「なんでですか!」
浜谷が慌てる。
「たまたま視線の先にいたんですよ!」
「ずっと目で追ってたじゃないですか!」
「追ってません!」
「じゃあ今、何の景品見てたんですか?」
「…………」
「ほら!」
「コマッターモンダー…」
「誤魔化さないでください!」
川原に怒られながら。
浜谷は仕事へ戻った。
その少し離れた場所。
「…………」
山神が立っていた。
そして。
見ていた。
同じ女性客を。
「…………」
かなり。
見ていた。
そこへ茂田が来た。
「山神さん」
「おぅ」
「何見てるニダ?」
「おぅ」
「…………」
茂田が山神の視線を追う。
女性客。
山神。
女性客。
山神。
「ガン見の冠!」
「おぅ」
「認めるニダ!?」
騒ぎを聞いて。
高崎もやってきた。
「何してるの?」
「山神さんが女性のお客さんをガン見してたニダ」
高崎が山神を見る。
「また?」
浜谷が反応した。
「また!?」
山神は。
「おぅ」
「山神さん!?」
浜谷の中にあった。
ダンディーな山神像が。
少しだけ揺らいだ。
「僕、さっき山神さんみたいになりたいって言ったばっかりですよ!」
「おぅ」
「そこも含めてですか!?」
「おぅ」
「どっち!?」
川原が呆れたように浜谷を見る。
「浜谷さんも人のこと言えないですけどね」
「僕はまだ二十一ですよ!」
「華の大学生ですから!」
「関係ないでしょ!」
高崎が笑う。
「何歳になっても男は男ってことじゃない?」
浜谷が山神を見る。
山神も浜谷を見る。
二十一歳。
その三倍には届かないくらい。
年齢は離れている。
それでも。
同じ女性を見て。
同じように怒られている。
浜谷は少し考えた。
「いくつになっても……」
川原が嫌な予感を察した。
「浜谷さん?」
「男だもの」
「何ですか、それ!」
山神が頷く。
「おぅ」
「山神さんだけ分かってくれた!」
「喜ぶところじゃないです!」
茂田が二人を見る。
「似た者同士ニダ」
「そんな!」
浜谷が山神を見る。
山神はいつもと変わらず。
「おぅ」
やっぱり、男はいくつになっても変わらない。
そう思った女性陣であった。