阿佐野店。
ある日の午後。
カウンターで、浜谷が小さくあくびをした。
「……ふぁぁ」
隣にいた茂田が振り返る。
「琉くん、眠そうニダね」
「いやぁ、最近あんまり眠れなくて」
「眠れないニダ?」
「はい。夜、布団入ってもなかなか寝つけないんですよ。寝ても途中で起きたりして」
「そうなんだ」
「それに、なんかずっと体調悪いんですよね。めちゃくちゃ具合悪いわけじゃないんですけど、ずっと本調子じゃないというか」
茂田は少し心配そうに浜谷を見た。
「それはよくないニダね」
「ですよねぇ」
「ちゃんとご飯食べてるニダ?」
「最近は食べてますよ」
「タバコは?」
「……まあ、それなりに」
「まずそれをやめろニダ」
「否定はしません」
茂田は少し考えた。
そして。
「青汁ニダ!」
「……はい?」
「青汁飲むニダ!」
「青汁ですか?」
「そうニダ。私、家にあるから今度持ってくるニダ」
「えっ、いいんですか?」
「いいニダ。今度、原町で一緒になる日あるニダよね?」
「ありますね」
「その時に渡すニダ!」
「ありがとうございます!」
浜谷は笑った。
ただ、正直なところ、青汁を飲んだことは一度ある。
その時はかなり苦かった。
「……青汁かぁ」
「何ニダ?」
「いや、なんでもないです」
「体調管理には青汁ニダ!」
「はい!」
それから数日後。
原町中央店。
浜谷はメダルコーナーで作業をしていた。
すると、インカムから茂田の声が聞こえてきた。
『琉くーん』
「はい、浜谷です」
『体調管理には何飲む〜ん?』
「…………」
浜谷は一瞬、手を止めた。
突然の質問。
しかし、すぐに思い出した。
「青汁ですっ!!」
『正解ニダ!』
思わず笑ってしまう。
『事務所来てほしいニダ!』
「了解です!」
浜谷は作業を終えると、事務所へ向かった。
コンコン。
「失礼しまーす」
「おっ、琉くん!」
茂田がロッカーの中にある袋を手に取った。
「はい、これ!」
「おお!」
中には、青汁が五本入っていた。
「五本もあるんですか!?」
「そうニダ! 持って帰るニダ!」
「ありがとうございます!」
浜谷が一本取り出す。
「へぇ……これが青汁」
「飲みやすいやつニダよ」
「そうなんですね」
「ちゃんと体調管理するニダ!」
「はい!」
浜谷は袋を受け取った。
「いやぁ、まさか本当に持ってきてくれるとは」
「約束したニダ!」
「ありがとうございます。めっちゃ嬉しいです」
茂田が笑う。
「でも、眠れないの続くなら、ちゃんと病院も行くニダよ?」
「そうですね。気をつけます」
「無理しないことニダ」
「はい!」
浜谷は青汁の入った袋を大事そうに持った。
「じゃあ、これ飲んで健康になります!」
「青汁だけで全部解決するわけじゃないニダよ?」
「分かってますって!」
二人は笑った。
その日の帰り道。
浜谷は袋を覗き込んだ。
青汁、五本。
数日前の何気ない会話を、茂田は覚えていてくれた。
それだけで、少し嬉しかった。
「……ありがたいなぁ」
夜。
自宅に帰った浜谷は、さっそく一本飲んでみた。
「いただきます」
ごくっ。
「……お?」
思ったより飲みやすい。
「意外とうまいな」
飲み終えると、空になった容器を見つめた。
そして、ふと茂田の声を思い出す。
『体調管理には何飲む〜ん?』
浜谷は一人で笑った。
「青汁ですっ!」
もちろん、青汁を一本飲んだからといって、すぐに眠れるようになるわけではない。
それでも。
自分の体調を気にかけてくれる人がいる。
そのことが、何より嬉しかった。
体調管理には何飲む〜ん?
答えは、もちろん。
青汁ですっ!!
ただし、睡眠もしっかり取りましょう。
タバコも控えめにしましょう。