阿佐野店。
午後。
カウンター。
細井、古坂、樋口、大澤、高村、矢水。
六人の女性スタッフが。
同じ方向を見ていた。
「…………」
クレーンゲームコーナー。
浜谷が一人の女性客と話している。
二十代くらい。
楽しそうに話す女性客。
浜谷も笑っている。
細井が呟く。
「楽しそうですね」
「楽しそうだね」
古坂も頷く。
樋口が笑う。
「浜谷さん、分かりやすいですよね」
「若い女の人だから?」
大澤が聞く。
「言っちゃった」
矢水が笑った。
しばらくして。
今度は三十代くらいの女性客。
「ありがとうございます」
「いえいえ!頑張ってください!」
また浜谷が楽しそうに話している。
「三十代もいけるんだ」
古坂が言った。
「何がいけるの?」
高村が笑う。
さらに。
四十代くらいの女性客。
「これ難しいね」
「そうなんですよ。でも今いい位置ですよ!」
「本当?」
「本当です!」
「じゃあもう一回やってみる!」
浜谷が笑顔で応援する。
「四十代も」
細井が呟く。
さらに。
五十代くらい。
「浜谷くん、今日こっちなの?」
「今日は阿佐野です!」
「あら、よかった」
「ありがとうございます!」
「五十代にも名前覚えられてる」
大澤が言った。
さらに。
六十代くらい。
「これ孫に取ってあげたいんだけど」
「いいですね!お孫さん喜ぶと思いますよ!」
「なんてたってこのウチバはシナモンでも人気なキャラクターですから!」
「ちょっと見てみますね」
浜谷がしゃがんで台を見る。
「ウチバの右側、狙ってみてください」
「ありがとうね」
「いえ!」
矢水が腕を組む。
「六十代まで来た」
「何の観察してるんですか、私たち」
樋口が笑った。
すると。
七十代くらいの女性客が浜谷を呼んだ。
「お兄さん!」
「はい!」
「今日もいるのね」
「いますよ!」
「元気ねえ」
「まだまだ若いので!」
「あはは!」
二人で笑っている。
細井が言った。
「七十代も仲良い」
「すごいね」
古坂も感心する。
そして。
最後。
杖をついた八十代くらいの女性客がやってきた。
浜谷が気づく。
「こんにちは!」
「あら、お兄さん」
「今日はメダルですか?」
「そうよ」
「あんた、よく覚えてるわね」
「もちろんですよ!」
「ほんと口が上手いんだから」
女性客が浜谷の腕を軽く叩く。
浜谷が笑う。
「痛いですよ!」
「若いんだから大丈夫!」
「あはは!」
貯めていたメダルを卸す女性。
「メダルゲームまでお持ちしますよ!」
「あらぁ、いい男。助かるわぁ」
「あと半世紀若かったらよかったのにねぇ」
「僕も半世紀遅かったらね!」
女性客も笑う。
カウンター。
「…………」
六人が黙った。
高村が笑う。
「八十代まで」
「全年代制覇ですね」
樋口が言った。
「何を制覇したの?」
大澤が笑う。
そこへ。
浜谷が戻ってきた。
「皆さん何してるんですか?」
「浜谷くん」
細井が聞く。
「はい?」
「女性だったら何歳までいけるの?」
「何の話ですか!?」
「二十代から八十代まで全部楽しそうだったよ」
古坂が言った。
「接客してただけですよ!」
「全員女性だったね」
矢水が笑う。
「たまたまですよ!」
「本当に?」
「本当です!」
浜谷が必死に否定する。
「僕、男性のお客さんとも普通に話しますから!」
「でも今日は女の人ばっかり」
細井が笑う。
「だから偶然ですって!」
高村が浜谷を見る。
「まあ、どの年代の人とも話せるのはいいことじゃない?」
「ほら!」
浜谷が高村を指す。
「高村さんだけですよ!分かってくれるの!」
「でも」
高村が続ける。
「若い女の人と話してた時が一番楽しそうだったけど」
「高村さん!?」
女性陣が一斉に笑った。
浜谷は言葉を失う。
「…………」
細井がそんな浜谷を見て。
一言。
「男って馬鹿ネ」
「なんでそんなこと言うんですか!」
「知らない」
「しかも僕だけで男全体を括らないでください!」
阿佐野店。
女性客。
二十代。
三十代。
四十代。
五十代。
六十代。
七十代。
八十代。
誰が相手でも。
浜谷はよく喋る。
ただ。
二十代の時だけ。
ほんの少し。
笑顔が多かった。かもしれない。