原町中央店。
休憩室。
川原は椅子に座りながら、スマホを眺めていた。
向かいでは浜谷が飲み物を飲んでいる。
「浜谷さん」
「はい?」
「夜中に食べるラーメンって、なんであんなに美味しいんですかね」
「……急ですね」
川原がスマホを見せる。
画面には、美味しそうなラーメンの写真。
浜谷は少し考えた。
「背徳感じゃないですか?」
「背徳感?」
「食べちゃいけない時間に食べるから美味いんですよ」
「あー」
川原は納得したように頷く。
「じゃあ寝る前のポテチとかも?」
「背徳ですね」
「夕飯前のアイス」
「背徳です」
「朝から唐揚げ」
「それは別にいいんじゃないですか?」
「いいんですか?」
「じゃあ朝からニンニクマシマシ」
川原は少し考えた。
「……背徳ですね」
「でしょ?」
そこへ高崎が入ってきた。
「何の話してんの?」
川原が答える。
「背徳についてです」
「仕事中に何の話してんの」
高崎は呆れながら荷物を置いた。
「麻美は何かあるニダ?」
いつの間にか茂田までいる。
「なんで私も参加することになってるの?」
「背徳のグルメニダ!」
「何それ」
浜谷が説明する。
「夜中のカップ麺とかですよ」
「あー」
高崎も少し考える。
「夜中にケーキとか?」
「背徳ですね」
川原が頷く。
茂田も腕を組む。
「夜中のラーメンは背徳ニダ」
「茂田さん、食べるんですか?」
「たまに食べたくなるニダ」
「分かります」
話しているうちに、なぜか全員少し楽しそうになってきた。
しばらくして。
夕方。
出勤してきた相馬にも、川原が聞いた。
「相馬さんって、背徳のグルメあります?」
「何それ?」
「食べちゃいけないと思いつつ食べると美味しいものです」
相馬は少し考える。
「休みの日に昼からお酒とか?」
「おお……」
浜谷が反応した。
「強いの来た」
川原も感心する。
「大人の背徳だ……」
「そんな大袈裟なものじゃないでしょ」
相馬が笑った。
すると川原が突然言った。
「じゃあ、理想の背徳のグルメを考えましょう」
高崎が振り返る。
「まだやるの?」
川原は指を折りながら考え始める。
「まず、仕事終わりにコンビニへ行きます」
「はい」
「カップ麺を買います」
「うん」
「ポテチも買います」
「もう多いですよ」
「アイスも買います」
「まだ買うの?」
「帰ったらお風呂に入ります」
浜谷が頷く。
「ここまでは健全ですね」
「そして深夜零時」
川原が人差し指を立てる。
「全部食べます」
「最悪のシナリオじゃないですか」
「最高ですよ!」
高崎が笑う。
「絶対胃もたれするよ」
「若いねぇ」
相馬も笑う。
茂田が大きく頷いた。
「そして翌朝後悔するまでが背徳ニダ!」
川原が茂田を見る。
「それです!」
「そこまで含めるんですか?」
浜谷だけが呆れていた。
やがて休憩も終わり、川原が立ち上がる。
浜谷がふと思い出した。
「川原さん」
「はい?」
「それ、今日やるんですか?」
「……」
川原が止まる。
少し考えてから。
「明日休みなんですよね」
「やる気じゃないですか」
「やるニダ」
「やるね」
「若いねぇ」
全員に言われ、川原は笑った。
「いいじゃないですか!明日休みなんだから!」
川原木乃香、二十一歳。
仕事終わり。
コンビニに寄って。
カップ麺とポテチとアイスを買う。
今夜の背徳のグルメは。
もう決まっていた。