原町中央店。
ある日の午後。
カウンターには、茂田、山神、石村がいた。
それぞれ作業をしながら。
店内を見る。
「…………」
茂田が顔を上げた。
クレーンゲームコーナー。
川原が客と話している。
少し離れたメダルゲームコーナーでは、大沼。
そして。
カードゲームコーナーでは浜谷も客に捕まっていた。
石村も気づく。
「……三人とも捕まってるね」
「捕まってるニダ」
「おぅ」
若手三人。
同時に。
クレーム対応中だった。
川原はクレーンゲームの前で頭を下げていた。
「申し訳ございません。ただ、こちらは何度かプレイされて景品が動いている状態ですので――」
「もういいよ」
客が遮った。
「お前じゃ分かんないだろ。上の人呼んで」
「…………」
大沼も。
「申し訳ございません。確認したんですが、こちらでは――」
「だからさ、お前はいいから。もっと分かる人いないの?」
「…………」
浜谷も。
「ですので、こちらのカードゲームでは――」
「お前みたいな青二才はいいから、上の人呼んで」
「…………」
青二才。
浜谷は一瞬だけ止まった。
今どき、久しぶりに聞いた気がした。
カウンター。
三人の様子は茂田たちからも見えていた。
「…………」
石村が言う。
「行きますか」
「行くニダ」
「おぅ」
三人が。
それぞれ別の方向へ歩き出した。
「お待たせしました」
川原のもとへ向かったのは茂田。
「店長の茂田です。お話を伺います」
「茂田さん……」
「木乃香ちゃん、ここは大丈夫ニダ」
「……はい」
茂田は対応を引き継いだ。
けれど、その説明は川原がしていたものとほとんど変わらなかった。
「おぅ」
大沼の隣には山神が立った。
「代わるぞ」
「山神さん……ありがとうございます」
山神が客から事情を聞く。
そして、大沼が説明したことと同じように説明した。
浜谷のところには石村。
「どうした?」
「あ、石村さん」
事情を聞き、石村は浜谷に代わって客と話す。
その説明も浜谷がしていたことと大きくは変わらなかった。
しばらくして、三件の対応が終わった。
カウンター付近。
川原、大沼、浜谷。
若手三人が揃った。
「…………」
「…………」
「…………」
川原が口を開く。
「私、上の人呼んでって言われました」
大沼も頷く。
「私も似たような感じ」
浜谷が言う。
「僕なんて青二才ですよ」
「青二才?」
川原が浜谷を見る。
「はい」
「今どき言うんですね」
「僕も思いました」
大沼が少し笑った。
けれど、三人とも少しだけ引っかかっていた。
原町中央店では若い三人。
川原。
大沼。
浜谷。
経験も、立場も、得意な仕事も違う。
それでも、『若い』ただそれだけで。
何も知らないと決めつけられることがある。
そこへ茂田たちが戻ってきた。
川原が頭を下げる。
「茂田さん、ありがとうございました」
「気にしなくていいニダ」
そして茂田は続ける。
「木乃香ちゃんの対応、間違ってなかったニダ」
「え?」
「私も同じ説明したニダ」
大沼を見る山神。
「奏子ちゃんも大丈夫だったぞ」
「……ありがとうございます」
「おぅ」
浜谷も石村を見る。
「石村さん、すみません。助かりました」
「別にいいよ」
石村が笑う。
「浜谷くんも説明は合ってたからね」
「はい」
三人とも間違っていたから助けてもらったわけではなかった。
ただ若いというだけで話を聞いてもらえなくなった時。
後ろから先輩たちが出てきてくれた。
浜谷が呟く。
「まあ、実際青二才なんでしょうけどね」
川原が笑う。
「認めるんですか?」
「だって若いですし」
「私たちもですよ」
大沼も笑った。
浜谷は少し考える。
「でも」
そして。
川原と大沼を見る。
「青二才で、なにが悪いんですかね」
川原が頷く。
「確かに」
「ね」
大沼も笑った。
後ろで聞いていた茂田も笑う。
「その通りニダ」
経験なら、これから増やせばいい。
知らないことなら、これから覚えればいい。
困った時には、後ろにいる先輩を頼ればいい。
原町中央店の若い三人。
まだ知らないこともある。
まだ助けてもらうこともある。
それでも。
今日もそれぞれの場所で。
ファンステージの店員として。
ちゃんと立っている。
青二才でなにが悪い。
のびしろがあるってことじゃないか。