ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

291 / 291
妖艶なあの人はよう見えん!?

阿佐野店。

 

ある日の午後。

 

「浜谷くんってさ」

 

細井がふと口を開いた。

 

「女の人に弱いですよね」

 

近くにいた古坂が笑う。

 

「分かる」

 

「分かりますよね?」

 

樋口も頷いた。

 

「綺麗な人とかいると、ちょっと見てない?」

 

「見るニダ」

 

茂田まで加わった。

 

四人の視線が。

 

少し離れたところで作業している浜谷へ向く。

 

本人は何も知らない。

 

「でも、本当にそうなのかな?」

 

古坂が言った。

 

「確かめてみる?」

 

細井が笑った。

 

作戦は単純だった。

 

存在しないお客さんを作る。

 

そして、浜谷の前でその人が、とても色っぽい女性であるかのように話す。

 

それだけである。

 

しばらくして、浜谷が戻ってきた。

 

「何の話してるんですか?」

 

「別にー」

 

細井が答える。

 

そして。

 

作戦開始。

 

古坂が何気なく言った。

 

「さっきのお客さん、すごかったね」

 

樋口が合わせる。

 

「すごかったです。めっちゃセクシーでした」

 

浜谷の手が。

 

ほんの一瞬止まった。

 

「…………」

 

茂田も続ける。

 

「妖艶だったニダ」

 

浜谷が反応した。

 

細井は笑いを堪えながら言う。

 

「ほんと色っぽかったですよね」

 

「へえ」

 

浜谷は平静だった。

 

少なくとも本人は、そのつもりだった。

 

「じゃ、巡回行ってきます」

 

四人が一斉に浜谷を見る。

 

「…………」

 

「何ですか?」

 

「別に?」

 

「行ってきます」

 

浜谷は歩き出した。

 

店内を巡回する。

 

メダルゲーム。

 

クレーンゲーム。

 

通路。

 

ちらり。

 

ちらり。

 

「…………」

 

いない。

 

そもそも誰を探せばいいのか、浜谷は知らない。

 

どんな服か?

 

髪型は?

 

年齢は?

 

何も聞いていない。

 

分かっているのはセクシー。

 

そして、妖艶で色っぽい。

 

それだけだった。

 

浜谷は一周して戻ってきた。

 

「…………」

 

細井が聞く。

 

「どうだった?」

 

「何がですか?」

 

「巡回」

 

「異常なしです」

 

「そっか」

 

「はい」

 

少しして。

 

浜谷はまた歩き出した。

 

古坂が呼び止める。

 

「琉くん、どこ行くの?」

 

「巡回です」

 

「さっき行ったよね?」

 

「巡回は何回してもいいじゃないですか」

 

二周目。

 

ちらり。

 

ちらり。

 

「…………」

 

やっぱり分からない。

 

浜谷が戻ってくる。

 

四人が見ている。

 

「何ですか?」

 

樋口が聞いた。

 

「いなかった?」

 

「何がですか?」

 

「妖艶な人」

 

「探してないですよ!」

 

即答だった。

 

細井が笑う。

 

「誰も探してるなんて言ってないよ?」

 

「…………」

 

浜谷が止まる。

 

茂田がニヤニヤしている。

 

古坂も。

 

樋口も。

 

「…………ドッキリ?」

 

「正解!」

 

細井が笑った。

 

浜谷は四人を見る。

 

「最悪や!」

 

「やっぱり探したんじゃん!」

 

「探してないです!巡回です!」

 

「二回も?」

 

「念入りな巡回です!」

 

茂田が言う。

 

「琉くん、妖艶なお客さんなんて最初からいないニダ」

 

「でしょうね!」

 

「残念?」

 

樋口が聞く。

 

「残念じゃないですよ!」

 

古坂が笑う。

 

「じゃあなんで二周したの?」

 

「…………」

 

浜谷は少し考えた。

 

「店内の安全確認です」

 

「シラ切ってる!」

 

細井が笑った。

 

「じゃあもし本当にいたら?」

 

「何がですか?」

 

「妖艶で色っぽいお客さん」

 

浜谷は答えた。

 

「普通に接客しますよ」

 

「見る?」

 

「見ません」

 

「ほんと?」

 

「…………」

 

四人が浜谷を見る。

 

浜谷は視線を逸らした。

 

「…………まあ、視界には入るかもしれないですけど」

 

「ほら!」

 

「それは仕方ないでしょ!」

 

阿佐野店。

 

浜谷琉は女の人に弱いのか。

 

その答えは。

 

二度にわたる念入りな巡回が何より雄弁に物語っていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【書籍化】3S探索者の叛逆無双譚 災厄前の世界に帰還した天才少年探索者は、最強魔法使いと共に剣と魔法で無双する(11月20日発売予定)旧名:3S探索者の代理人(作者:かんだ★)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

※オーバーラップノベルス様より書籍化します。11月20日発売予定。▼世界にダンジョンが現れて50年。人口を3割も減らした災厄も日常になった。▼ある日、敏腕弁護士の神崎薫は、婚約者に裏切られダンジョンの最下層へ突き落とされる。▼強運にも一命をとりとめた薫は、そこで探索者の如月秋人という少年と出会った。▼彼が3Sと呼ばれる最高ランクの探索者だったことから、薫は予…


総合評価:189/評価:7.71/連載:338話/更新日時:2026年11月05日(木) 08:00 小説情報

メカニカル☆ウィッチ(作者:星乃祈)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

ーー時は二一五〇年。二十二世紀。▼ かつて迷信とされた『魔法』と呼ばれる力の源になった未知のエネルギーである『魔力』が発見され、そこに宿る『精霊』を元に、限りなく人間に近い人格を持つ『人工精霊』が生み出されたそんな時代。▼ 人工精霊は機械仕掛けの魔女の意味を持つ『メカニカルウィッチ』と呼ばれる手のひらサイズの小さなロボットの体を手に入れることで、いつしか魔法…


総合評価:31/評価:-.--/連載:132話/更新日時:2026年10月31日(土) 08:30 小説情報

異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~(作者:龍翠)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

日本に帰還したはずの魔女シオンが降り立った先は、知らないニチアサアニメの世界だった。▼変身ヒロインたちが怪人と戦う中、偶然そのど真ん中に現れたシオンは、指パッチン一つで怪人を消滅させ、ヒロインたちの魔法まで解除してしまう。▼「せっかくニチアサの世界に来たんだから、好き放題してのんびり見学させてもらおうかな」▼敵の幹部を軽くねじ伏せ、悪の組織の本拠地に遊び半分…


総合評価:361/評価:7.55/連載:38話/更新日時:2026年09月07日(月) 08:30 小説情報

人とはこの世で最も醜悪な獣の総称である。(作者:顔のない女@人外ものしか書けない人)(オリジナル:現代/恋愛)

人付き合いがとても苦手で、教室の隅で息を潜めて震えながら生きてきた少女には、画面越しにしか愛せない推しがいた。▼ところがその推し——超大手VTuberの彼女は、偶然にもクラスに在籍していて、しかも彼女は少女が自分のガチ恋だと知ったうえで、距離を詰め、からかい、やりたい放題してしまう。▼やがて限界を超えた少女は、ある日の教室で魔が差し、最推しの彼女の唇を奪って…


総合評価:658/評価:8.47/完結:111話/更新日時:2026年08月03日(月) 23:05 小説情報

100均ホウキに百合が咲く~最強限界無職女のダンジョン救助配信~(作者:羽黒楓)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

田中紅亜(くれあ)が愛する推しの女性アイドル配信者が、ダンジョンで襲われた。▼食人植物に全身を拘束され、精神を保てるのはあと十日。だけど警察は動いてくれない。民間の救助費用は六千万円。無職の紅亜に払えるはずがない。▼だから紅亜は、自分で助けに行くことにした。▼持っていくのは、100円ショップのホウキとチリトリ。▼ブラック飲食店で心を壊した紅亜は、ご先祖さまが…


総合評価:81/評価:-.--/連載:62話/更新日時:2026年11月05日(木) 07:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>