ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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学生バイトの先輩

数日後。

 

浜谷は少し早めに出勤した。

 

「おはようございます!」

 

事務所へ入ると、

 

「おつかれさまぁ〜ず♪」

 

茂田が笑顔で迎える。

 

「おはよう!」

 

石村も書類から顔を上げる。

 

「おぅ。」

 

山神。

 

「オハヨウゴザイマァス。」

 

日村。

 

高崎も手を振る。

 

「浜谷くん、おはよう〜!」

 

浜谷も自然と笑顔になる。

 

少しずつ、この職場の空気に慣れてきていた。

 

 

着替えを終えた頃。

 

茂田が思い出したように言った。

 

「そういえば今日は、もう一人の学生アルバイトが来るニダ。」

 

「学生アルバイトですか?」

 

「うん!」

 

「浜谷くんより先輩。」

 

「大学四年生で、もう三年目。」

 

「三年目……!」

 

浜谷は驚く。

 

(学生なのに、そんなに長く働いてる人がいるんだ。)

 

その時。

 

事務所のドアが静かに開いた。

 

「おはようございます。」

 

落ち着いた声。

 

黒髪をまとめた女性が、笑顔で一礼する。

 

「おはようございます。」

 

スタッフ全員が自然と挨拶を返した。

 

茂田が浜谷を見る。

 

「紹介するニダ。」

 

「学生アルバイトの小瀧翠さん。」

 

「大学四年生。」

 

「このお店じゃ一番長い学生スタッフニダ。」

 

小瀧は優しく微笑み、浜谷へ向き直る。

 

「初めまして。」

 

「小瀧です。」

 

浜谷も慌てて頭を下げる。

 

「浜谷です!」

 

「よろしくお願いします!」

 

「こちらこそ。」

 

「困ったことがあったら何でも聞いてね。」

 

その柔らかな笑顔を見て、浜谷の緊張はすっと和らいだ。

 

 

午前中。

 

浜谷は小瀧と一緒にクレーンゲームコーナーを担当することになった。

 

「景品はね。」

 

「ただ並べるだけじゃなくて、お客様が『取りたい!』って思える見せ方が大事なんだよ。」

 

そう言いながら、小瀧はぬいぐるみを少し傾ける。

 

それだけで印象が大きく変わる。

 

「わぁ……。」

 

「全然違いますね。」

 

「でしょ?」

 

「こういう小さな工夫が意外と大事なんだ。」

 

さらに、お客様から声を掛けられると、

 

「少々お待ちください。」

 

「すぐ確認してきますね。」

 

落ち着いて対応する。

 

浜谷はその姿を見ながら必死にメモを取っていた。

 

「そんなに書かなくても大丈夫だよ。」

 

小瀧が笑う。

 

「失敗して覚えることの方が多いから。」

 

「私も最初は何もできなかったし。」

 

浜谷は少し安心したように笑った。

 

 

昼頃。

 

一人の男の子がクレーンゲームの前で困っていた。

 

「取れない……。」

 

浜谷は近づこうとするが、どう声を掛ければいいか迷ってしまう。

 

その時。

 

小瀧が自然と隣へ歩み寄った。

 

「惜しかったね。」

 

「あと一回で取れそうだよ。」

 

男の子はうなずき、もう一度挑戦する。

 

景品は見事に落下。

 

「やったー!」

 

男の子は景品を抱えて飛び跳ねる。

 

「ありがとう!」

 

そう言って走っていく姿を見送りながら、小瀧は静かに言った。

 

「ゲームセンターってね。」

 

「景品を渡す仕事じゃないの。」

 

「お客様に『また来たい』って思ってもらう仕事なんだよ。」

 

浜谷はその言葉を胸に刻んだ。

 

(茂田さんも、同じようなことを言っていた。)

 

(ここで働く人たちは、みんな同じ想いなんだ。)

 

 

閉店後。

 

事務所。

 

茂田が浜谷に尋ねる。

 

「どうだったニダ?」

 

「小瀧さん、本当に優しいですね。」

 

石村が笑う。

 

「教えるの上手だからね。」

 

高崎もうなずく。

 

「浜谷くん、頼れる先輩ができたね〜。」

 

小瀧は照れくさそうに笑った。

 

「そんな、大したことしてないですよ。」

 

「いや、本当に勉強になりました。」

 

浜谷が頭を下げる。

 

「これからよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ。」

 

ゲーム機の電子音が静かに止まり、店内の照明が落ちていく。

 

学生アルバイトの先輩との出会い。

 

それは浜谷にとって、「働く楽しさ」を教えてくれる、新たな一歩となった。

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