細井が原町中央店へ入社して二週間。
仕事にも少しずつ慣れ始め、景品補充やイベント準備も一人で任されることが増えてきた。
朝礼。
「おつかれさまぁ〜ず!」
茂田の元気な声が事務所に響く。
出勤メンバーを見渡しながら、今日の担当を発表していく。
「今日は土曜日だから忙しくなるよー!」
「イベント担当は琉くんと細井ちゃん!」
「二人でお願いね!」
「はい!」
浜谷と細井は同時に返事をした。
「よろしくお願いします、細井さん。」
「よろしくね、浜谷くん。」
年上の後輩と年下の先輩。
少し不思議なコンビだった。
⸻
営業が始まると、すぐに店内はお客様で賑わい始めた。
「浜谷くん!」
細井が景品の入った段ボールを持ってやってくる。
「この景品、どこに補充すればいい?」
浜谷は売り場を確認する。
「こっちですね。」
「ありがとうございます!」
二人は協力しながら補充を始めた。
「細井さん、景品は少し前に出すと見栄えが良くなりますよ。」
「なるほど。」
細井は浜谷の言われた通りに並べ直す。
少し離れて見てみる。
「本当だ!」
「こっちの方がきれい!」
その様子を見ていた石村が近づいてきた。
「細井ちゃん。」
「はい!」
「飲み込みが早いな。」
「ありがとうございます!」
「でも浜谷の言う通り、景品は見栄えが大事だからな。」
「はい!」
細井はすぐにメモ帳を取り出した。
石村は思わず笑う。
「またメモか。」
「忘れちゃうので。」
「その姿勢は大事だ。」
⸻
しばらくすると、高崎がやって来た。
「細井ちゃーん!」
「はい!」
「ちょっとこっち手伝って!」
「分かりました!」
細井は慌てて向かう。
浜谷もあとを追った。
高崎はイベントコーナーを指差す。
「今日、子ども多いでしょ?」
「だから景品減るの早いんだよ。」
「補充のタイミング、大事だからね!」
「はい!」
細井は真剣な表情でうなずいた。
高崎は笑う。
「返事だけは百点!」
「でもその素直さ、好きだよ。」
細井は照れくさそうに笑った。
「ありがとうございます。」
⸻
昼過ぎ。
インカムが鳴る。
『イベントコーナー、お客様対応お願いしまーす。』
「石村、向かいまーす。」
いつもの声が聞こえた。
しかし石村は別のお客様の対応中だった。
浜谷がインカムを押す。
「浜谷、向かいます。」
「細井さん、一緒に行きましょう。」
「うん!」
二人で向かうと、小さな男の子がクレーンゲームの前で困っていた。
「どうしたの?」
細井が優しく声をかける。
「取れない……。」
男の子は少し泣きそうな顔をしている。
浜谷が景品の位置を確認した。
「これはアシストですね。」
ルールに沿って景品の向きを少しだけ調整する。
「もう一回やってみよう!」
細井が笑顔で声をかけた。
男の子はコインを入れる。
アームが景品をつかむ。
ころん。
景品が取り出し口へ落ちた。
「やったー!」
男の子は飛び跳ねる。
「ありがとう!」
元気よく走っていく姿を見送りながら、細井も笑顔になった。
「よかったぁ。」
浜谷もうれしそうに笑う。
「細井さん、お客様への話し方、すごく優しかったです。」
「本当?」
「はい。」
「男の子も安心してました。」
細井は少し照れながら笑った。
「ありがとう、浜谷くん。」
⸻
休憩時間。
自動販売機の前。
細井は缶コーヒーを手に浜谷へ話しかける。
「浜谷くん。」
「はい。」
「みんな本当に優しいね。」
「そうですね。」
浜谷はうなずく。
「僕も最初は何もできなくて。」
「皆さんに毎日助けてもらってました。」
細井は笑う。
「だから浜谷くんも優しいんだ。」
浜谷は少し照れくさそうに笑った。
「まだまだです。」
「でも今日は助かりました。」
「ありがとうございます。」
「こちらこそ。」
二人は笑い合った。
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閉店後。
「お疲れさまでした!」
細井が元気よく頭を下げる。
茂田が拍手しながら近づいてきた。
「細井ちゃん!」
「今日すっごく良かったよ!」
「浜谷くんとのコンビ、いい感じ!」
武藤もうなずく。
「二人ともちゃんと声掛けしながら動けてたね。」
相馬が優しく微笑む。
「細井ちゃん、もうすっかり原町中央店の一員だね。」
石村も静かに言った。
「浜谷。」
「自然に後輩をフォローできるようになったな。」
その言葉に浜谷は少し驚く。
「ありがとうございます。」
細井が隣で笑う。
「頼りになる先輩だったよ。」
「いえ。」
「まだまだ勉強中です。」
浜谷は照れながら頭をかいた。
入社したばかりの頃は、教えてもらうことばかりだった。
それが今では、後輩と一緒に仕事をし、支える立場になっている。
少しずつ、確実に。
浜谷もまた、先輩として成長していた。
そして細井も、新しい仲間として原町中央店に溶け込み始めていた。