九月。
朝礼が終わろうとした、その時だった。
茂田が少しだけ真面目な表情で口を開く。
「みんなにお知らせがあります。」
事務所が静かになる。
「細井ちゃん。」
「来月から阿佐野店へ異動になります。」
「えっ?」
最初に声を上げたのは高崎だった。
「もう!?」
武藤も驚いた表情を見せる。
「早いねぇ。」
細井も少し緊張した様子で立ち上がった。
「まだ入社したばかりですが……。」
「阿佐野店でも頑張ります。」
深く頭を下げる。
スタッフから温かい拍手が送られた。
⸻
休憩時間。
「細井ちゃん、本当に行っちゃうの?」
高崎が少し寂しそうに聞く。
「はい。」
「私もびっくりしました。」
「でも、頑張ってきます。」
相馬が優しく笑う。
「阿佐野店には優しい人がたくさんいるから大丈夫。」
武藤もうなずいた。
「最初は不安だと思うけど、細井ちゃんなら大丈夫。」
「ありがとうございます。」
細井は少し安心したように笑った。
⸻
営業中。
浜谷は景品を補充しながら、細井のことを考えていた。
入社してまだ一か月ほど。
年上なのに後輩という、不思議な関係。
一緒に仕事をするようになってからは、自然と息も合うようになっていた。
そこへ細井がやって来る。
「浜谷くん。」
「はい。」
「異動、びっくりした?」
「正直、びっくりしました。」
浜谷は苦笑いした。
「でも、阿佐野店なら原町中央店から近いですし。」
「また会えますよ。」
細井は笑った。
「そうだね。」
「それに、浜谷くんにはいっぱい助けてもらった。」
「ありがとうございました。」
浜谷は首を振る。
「僕も細井さんと仕事ができて楽しかったです。」
「阿佐野店でも頑張ってください。」
「うん!」
「浜谷くんもね。」
二人は笑顔で握手を交わした。
⸻
細井の最終勤務日。
閉店後。
事務所にはスタッフ全員が集まっていた。
茂田が細井へ花束を渡す。
「細井ちゃん!」
「短い間だったけど、本当にありがとう!」
「阿佐野店でもその笑顔を忘れないでね!」
「はい!」
細井の目には少し涙が浮かんでいた。
高崎が笑いながら言う。
「たまには遊びにおいで!」
「もちろんです!」
武藤も優しく微笑む。
「困ったらいつでも連絡して。」
「ありがとうございます。」
石村が静かに口を開く。
「阿佐野店でも、細井ちゃんらしく頑張れ。」
山神も一言。
「おぅ。」
その短い言葉に、細井は笑顔でうなずいた。
「はい!」
最後に浜谷が前へ出る。
「細井さん。」
「短い間でしたけど、本当にありがとうございました。」
「阿佐野店でも頑張ってください。」
細井は少し照れたように笑う。
「ありがとう、浜谷くん。」
「また一緒に働こうね。」
「はい。」
「楽しみにしています。」
細井は最後に事務所を見渡した。
過ごした時間は長くはなかった。
それでも、この店で出会った仲間たちは、かけがえのない存在になっていた。
「お世話になりました!」
大きく頭を下げる。
スタッフ全員が拍手で送り出した。
「いってらっしゃい!」
その声を背に受けながら、細井は新しい職場――阿佐野店へ向けて、新たな一歩を踏み出すのだった。