ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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報告します

10月。

 

平日の原町中央店。

 

夏休みも終わり、店内はいつもの落ち着きを取り戻していた。

 

朝礼。

 

「おつかれさまぁ〜ず!」

 

茂田の元気な声が事務所に響く。

 

「今日はイベントコーナーのレイアウトを少し変えるよ!」

 

「藤さんと琉くん、お願いね!」

 

「はい!」

 

浜谷と藤屋はそろって返事をした。

 

⸻

 

営業が始まる前。

 

二人はイベントコーナーで景品を並べ替えていた。

 

「浜谷くん。」

 

「報告します。」

 

「こちらの景品、残り五個です。」

 

「ありがとうございます。」

 

浜谷はすぐに在庫を確認する。

 

「補充してきますね。」

 

「お願いします。」

 

藤屋はいつもの穏やかな笑顔を浮かべた。

 

しばらく作業を続けていると、浜谷はふと気になっていたことを口にした。

 

「藤屋さん。」

 

「はい?」

 

「藤屋さんって、いつも『報告します』って言いますよね。」

 

藤屋は少しだけ驚いた表情を見せた。

 

「そうかな?」

 

「はい。」

 

「インカムでも、直接話す時でも。」

 

「必ず言ってますよね。」

 

藤屋は少し考え、静かに笑った。

 

「実はね。」

 

「昔、それで失敗したことがあるの。」

 

⸻

 

「まだ入社したばかりの頃。」

 

「景品が少なくなっていることに気付いてたのに、『あとで伝えよう』って思ってしまって。」

 

「そのまま忙しくなって、結局報告できなかったの。」

 

「そのせいで景品がなくなっちゃって、お客様にも迷惑をかけちゃった。」

 

浜谷は黙って話を聞く。

 

「その時、店長に言われたの。」

 

『迷ったら報告。』

 

『小さなことでも報告。』

 

『それだけで防げることはたくさんあるよ。』

 

「それ以来かな。」

 

「報告するのが癖になったの。」

 

藤屋は少し照れくさそうに笑った。

 

「だから今でも、『報告します』って最初に言っちゃう。」

 

⸻

 

浜谷は大きくうなずいた。

 

「そういう理由だったんですね。」

 

「勉強になります。」

 

「僕も気を付けます。」

 

藤屋は優しく微笑んだ。

 

「ありがとう。」

 

「浜谷くんなら、大丈夫。」

 

⸻

 

午後。

 

インカムが鳴る。

 

『イベントコーナー、景品補充お願いします。』

 

浜谷はすぐにボタンを押した。

 

「浜谷です。」

 

「報告します。」

 

「イベントコーナーの景品補充、これから向かいます。」

 

その声を聞いた藤屋は、思わず笑みをこぼした。

 

「ふふっ。」

 

「いい報告だったね。」

 

「ありがとうございます。」

 

浜谷は少し照れながら笑う。

 

⸻

 

閉店後。

 

茂田が事務所で声を上げた。

 

「今日もおつかれさまぁ〜ず!」

 

「イベントもバッチリだったね!」

 

「藤さん、琉くん、ありがとう!」

 

「ありがとうございます。」

 

藤屋はいつものように頭を下げた。

 

そして浜谷を見る。

 

「報告します。」

 

「今日は、一緒に仕事ができて楽しかったです。」

 

少し珍しい報告だった。

 

浜谷は笑顔で答える。

 

「僕もです。」

 

「ありがとうございました。」

 

藤屋は少し照れながら微笑んだ。

 

「それじゃ。」

 

「お先、失礼します。」

 

そう言って事務所を後にする。

 

その背中を見送りながら、浜谷は思った。

 

仕事は一人ではできない。

 

だからこそ、小さな「報告」が仲間を支え、お店を支えている。

 

今日、また一つ大切なことを学んだ気がした。

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