阿佐野店へ。
阿佐野店で働き始めて数日。
浜谷も少しずつ店の流れを覚え、景品の場所やバックヤードでの動きにも慣れてきていた。
「おはようございます!」
事務所へ入ると、高村が優しく微笑む。
「おはよう、浜谷くん。」
「今日もよろしくね。」
「よろしくお願いします!」
開店準備をしながら、高村がふと話し始めた。
「そういえば、山神さんは元気?」
浜谷は手を止める。
「山神さんをご存じなんですか?」
「ええ。」
「昔、山神さんが阿佐野店にいた頃、一緒に働いてたの。」
浜谷は驚いた。
「そうだったんですね。」
「今も全然変わらないですよ。」
「相変わらず『おぅ。』って一言です。」
高村は懐かしそうに笑う。
「ふふっ。」
「昔からああいう人だったの。」
「困った時は一番頼りになる人だったなぁ。」
「今も変わりません。」
「何だか安心しました。」
高村の穏やかな笑顔を見て、浜谷も自然と笑顔になった。
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開店すると、矢水はいつものように元気いっぱいだった。
「いらっしゃいませー!」
子どもたちに笑顔で手を振り、常連のお客様とも楽しそうに話している。
休憩中、矢水が浜谷の隣へ座った。
「浜谷さん。」
「今日はクレーン対応、ありがとうございました。」
「いえいえ。」
「矢水さんこそ、お客様と話すの上手ですよね。」
矢水は少し照れ笑いを浮かべる。
「ありがとうございます。」
「でもゲームセンターって、楽しみに来てくださる場所じゃないですか。」
「だから私も笑顔でいたいんです。」
「その方がお客様も楽しそうですし。」
浜谷はうなずいた。
「なるほど……。」
「勉強になります。」
「いえいえ。」
「私も毎日勉強ですよ。」
明るく話す矢水。
敬語ではあるものの、どこか親しみやすく、話していると自然と気持ちが軽くなる。
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昼過ぎ。
景品倉庫で補充をしていると、大澤がやって来た。
「浜谷さん。」
「その景品。」
「下の棚です。」
「ありがとうございます。」
浜谷が並べ替えていると、大澤のスマートフォンが鳴った。
「はい。」
電話に出た瞬間、それまでの表情が少し柔らかくなる。
「宿題終わった?」
「そう。」
「えらいね。」
短い会話を終え、電話を切る。
浜谷が尋ねた。
「お子さんですか?」
「はい。」
「小学生です。」
そう答えた大澤は、少しだけ照れくさそうに笑った。
仕事中はクールで無口。
しかし子どもの話になると、その表情は優しいお母さんそのものだった。
「早く帰ってあげないと。」
その一言に、浜谷も思わず笑みを浮かべた。
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午後の休憩。
樋口がスマートフォンを見ながら声を上げた。
「あっ!」
「新しい動画出てる!」
浜谷がのぞき込む。
「信濃路モンスターですか?」
樋口が驚く。
「えっ!」
「浜谷くんもシナモン好きなの!?」
「好きです!」
「毎週見てます!」
「うれしい!」
「阿佐野店で話せる人いないと思ってた!」
そこから二人は好きな企画やお気に入りの動画について話が止まらない。
その様子を見て古坂が笑う。
「二人とも、急に盛り上がったね。」
細井も苦笑する。
「共通の趣味ってすごいね。」
「ですよね!」
浜谷と樋口は思わず顔を見合わせて笑った。
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閉店後。
茂田が今日の営業を振り返る。
「おつかれさまぁ〜ず!」
スタッフ全員がお互いに「お疲れさまでした」と声を掛け合う。
浜谷はふと店内を見渡した。
山神との思い出を大切にしている高村。
いつも笑顔で周りを明るくする矢水。
クールだけど、家では優しいお母さんの大澤。
そして、シナモン仲間の樋口。
一人ひとりの人柄を知るたびに、この阿佐野店という場所が少しずつ好きになっていく。
そんなことを感じながら、浜谷は静かに店を後にした。