阿佐野店で働き始めて数週間。
この日も浜谷は開店準備をしていた。
すると事務所の扉が開く。
「オハヨウゴザイマァス。」
聞き慣れた早口の声だった。
「日村さん!」
原町中央店のメンテナンス担当・日村。
阿佐野店ではメンテナンス作業の日になると、定期的に応援へ来ていた。
「今日もよろしくお願いします!」
「アリガトゴザイマス。」
日村は軽く会釈をすると、工具箱を持って店内を見回り始めた。
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営業前。
浜谷は茂田へ声を掛けた。
「茂田さん。」
「ちょっと相談があるんです。」
「どうしたニダ?」
浜谷は少し緊張した表情で話し始める。
「僕……。」
「メンテナンスをやってみたいです。」
茂田は少し驚いた表情を見せた。
「メンテニダ?」
「はい。」
「クレーンや接客も好きなんですけど……。」
「機械を直せるようになりたいんです。」
「お客様が困っている時、自分で対応できるようになりたくて。」
茂田は少し考えたあと、笑顔になった。
「もちろわ。」
「本人がやりたいって言うのが一番。」
「今日ちょうどヒムが来てるし、お願いしてみるニダ。」
「ありがとうございます!」
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しばらくすると茂田が日村を呼んだ。
「ヒム。」
「浜谷くんにメンテ教えてほしいあげて。」
日村は浜谷を見る。
「……アリガトゴザイマス。」
「キョウハイッショニミテマワリマショ。」
浜谷は思わず笑顔になった。
「よろしくお願いします!」
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午前中。
二人は店内を巡回する。
「まず。」
「毎日。」
「異常ないか見る。」
日村はいつものように早口だが、一つひとつ丁寧に教えてくれる。
「この音。」
「違う。」
「覚える。」
「はい!」
エラーの確認方法。
扉の開け方。
清掃の仕方。
景品機の簡単な調整。
浜谷は一つも聞き漏らさないよう、真剣にメモを取っていた。
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昼頃。
一台のクレーンゲームにエラーが表示される。
「浜谷くん。」
日村が浜谷を呼ぶ。
「やる?」
「えっ、僕ですか?」
「うん。」
「大丈夫。」
「横いる。」
浜谷は教わった通りに操作する。
慎重に確認しながら作業を進める。
数分後。
「直りました!」
画面は通常表示へ戻った。
浜谷は思わず笑顔になる。
「できた……!」
日村も小さくうなずいた。
「アリガトゴザイマス。」
「いい。」
その一言が何よりうれしかった。
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営業終了後。
茂田が浜谷へ声を掛ける。
「どうだったニダ?」
「すごく楽しかったです!」
「もっと覚えたいです!」
茂田は満足そうに笑った。
「じゃあ決まりニダ。」
「これから浜谷くんは、阿佐野店でメンテナンス担当として育てるニダ。」
浜谷は驚きながらも、大きくうなずいた。
「はい!」
その様子を見ていた日村が一言。
「……アリガトゴザイマス。」
浜谷は笑顔で頭を下げた。
「これからもよろしくお願いします!」
こうして浜谷は、自ら希望した新たな道――メンテナンス担当としての第一歩を踏み出した。