ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

48 / 222
新たな挑戦

阿佐野店で働き始めて数週間。

 

この日も浜谷は開店準備をしていた。

 

すると事務所の扉が開く。

 

「オハヨウゴザイマァス。」

 

聞き慣れた早口の声だった。

 

「日村さん!」

 

原町中央店のメンテナンス担当・日村。

 

阿佐野店ではメンテナンス作業の日になると、定期的に応援へ来ていた。

 

「今日もよろしくお願いします!」

 

「アリガトゴザイマス。」

 

日村は軽く会釈をすると、工具箱を持って店内を見回り始めた。

 

⸻

 

営業前。

 

浜谷は茂田へ声を掛けた。

 

「茂田さん。」

 

「ちょっと相談があるんです。」

 

「どうしたニダ?」

 

浜谷は少し緊張した表情で話し始める。

 

「僕……。」

 

「メンテナンスをやってみたいです。」

 

茂田は少し驚いた表情を見せた。

 

「メンテニダ?」

 

「はい。」

 

「クレーンや接客も好きなんですけど……。」

 

「機械を直せるようになりたいんです。」

 

「お客様が困っている時、自分で対応できるようになりたくて。」

 

茂田は少し考えたあと、笑顔になった。

 

「もちろわ。」

 

「本人がやりたいって言うのが一番。」

 

「今日ちょうどヒムが来てるし、お願いしてみるニダ。」

 

「ありがとうございます!」

 

⸻

 

しばらくすると茂田が日村を呼んだ。

 

「ヒム。」

 

「浜谷くんにメンテ教えてほしいあげて。」

 

日村は浜谷を見る。

 

「……アリガトゴザイマス。」

 

「キョウハイッショニミテマワリマショ。」

 

浜谷は思わず笑顔になった。

 

「よろしくお願いします!」

 

⸻

 

午前中。

 

二人は店内を巡回する。

 

「まず。」

 

「毎日。」

 

「異常ないか見る。」

 

日村はいつものように早口だが、一つひとつ丁寧に教えてくれる。

 

「この音。」

 

「違う。」

 

「覚える。」

 

「はい!」

 

エラーの確認方法。

 

扉の開け方。

 

清掃の仕方。

 

景品機の簡単な調整。

 

浜谷は一つも聞き漏らさないよう、真剣にメモを取っていた。

 

⸻

 

昼頃。

 

一台のクレーンゲームにエラーが表示される。

 

「浜谷くん。」

 

日村が浜谷を呼ぶ。

 

「やる?」

 

「えっ、僕ですか?」

 

「うん。」

 

「大丈夫。」

 

「横いる。」

 

浜谷は教わった通りに操作する。

 

慎重に確認しながら作業を進める。

 

数分後。

 

「直りました!」

 

画面は通常表示へ戻った。

 

浜谷は思わず笑顔になる。

 

「できた……!」

 

日村も小さくうなずいた。

 

「アリガトゴザイマス。」

 

「いい。」

 

その一言が何よりうれしかった。

 

⸻

 

営業終了後。

 

茂田が浜谷へ声を掛ける。

 

「どうだったニダ?」

 

「すごく楽しかったです!」

 

「もっと覚えたいです!」

 

茂田は満足そうに笑った。

 

「じゃあ決まりニダ。」

 

「これから浜谷くんは、阿佐野店でメンテナンス担当として育てるニダ。」

 

浜谷は驚きながらも、大きくうなずいた。

 

「はい!」

 

その様子を見ていた日村が一言。

 

「……アリガトゴザイマス。」

 

浜谷は笑顔で頭を下げた。

 

「これからもよろしくお願いします!」

 

こうして浜谷は、自ら希望した新たな道――メンテナンス担当としての第一歩を踏み出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。