ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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大澤さんのお仕事

メンテナンス担当になって数日。

 

浜谷は毎朝、日村から教わったことを思い出しながら店内を巡回していた。

 

「まずは異常がないか確認。」

 

「音もよく聞いて……。」

 

クレーンゲームを一台ずつ見て回り、清掃や簡単な点検を行う。

 

以前は何気なく見ていた景品機も、今では違った景色に見えていた。

 

⸻

 

開店前。

 

茂田が浜谷に声を掛ける。

 

「琉くん。」

 

「今日は大澤さんの仕事を見てみようか。」

 

「はい!」

 

「ヒムとはまた違うやり方だから、きっと勉強になるニダ。」

 

浜谷はうなずいた。

 

「お願いします!」

 

⸻

 

工具箱を持った大澤が歩き出す。

 

「浜谷さん。」

 

「今日は隣で見ていてください。」

 

「はい。」

 

店内を巡回していると、一台のクレーンゲームの前で大澤が立ち止まった。

 

「少し音が違います。」

 

浜谷は耳を澄ませる。

 

しかし違いが分からない。

 

大澤は扉を開け、内部を確認する。

 

ローラーの汚れを落とし、レールを清掃する。

 

最後に動作確認。

 

先ほどよりも滑らかにクレーンが動いた。

 

「すごい……。」

 

浜谷は思わず声を漏らす。

 

「音だけで分かるんですか?」

 

大澤は静かにうなずいた。

 

「毎日見ていると。」

 

「少しの変化でも気付けるようになります。」

 

「壊れてから直すんじゃなくて、壊れないようにするのもメンテナンスです。」

 

その言葉を聞き、浜谷はメモ帳へ書き込んだ。

 

⸻

 

午後。

 

景品機に小さなエラーが表示された。

 

大澤が浜谷を見る。

 

「浜谷さん。」

 

「やってみますか?」

 

「はい!」

 

浜谷は深呼吸をして作業を始める。

 

日村から教わった手順を思い出しながら、一つひとつ確認する。

 

「……よし。」

 

エラーは解除された。

 

正常に動くクレーンゲームを見て、浜谷はほっと息をつく。

 

「できました。」

 

大澤は小さく微笑んだ。

 

「大丈夫です。」

 

「落ち着いてできていました。」

 

浜谷は思わず笑顔になる。

 

「ありがとうございます!」

 

⸻

 

閉店後。

 

事務所で茂田が声を掛ける。

 

「どうだった?」

 

浜谷は少し考えてから答えた。

 

「日村さんは、メンテナンスの基礎を教えてくれました。」

 

「大澤さんは、毎日機械を見ることの大切さを教えてくれました。」

 

「同じメンテナンスでも、考え方が少し違っていて、すごく勉強になりました。」

 

大澤は照れくさそうに笑う。

 

「私も。」

 

「まだまだ勉強中ですよ。」

 

浜谷は力強くうなずく。

 

「僕ももっと経験を積んで、頼られるメンテナンス担当になりたいです。」

 

茂田は満足そうに笑った。

 

「その気持ちがあれば大丈夫。」

 

「焦らず、一つずつ覚えていこう。」

 

浜谷は「はい!」と元気よく返事をした。

 

こうして浜谷は、阿佐野店の仲間たちに支えられながら、新たな一歩を着実に踏み出していくのだった。

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