ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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初めてのクレーマー

春休み最後の週末。

 

ファンステージ原町中央店は朝から多くのお客様で賑わっていた。

 

「おはようございます!」

 

浜谷が出勤すると、

 

「おつかれさまぁ〜ず♪」

 

茂田が笑顔で迎える。

 

「今日は忙しくなるニダ!」

 

石村も売場を見回しながら言う。

 

「焦らず、一つずつやっていこう。」

 

「はい!」

 

浜谷は元気よく返事をした。

 

 

昼過ぎ。

 

店内を巡回していると、一人の男性客が早足で近づいてきた。

 

「ちょっと!」

 

「はい!」

 

浜谷は立ち止まり、笑顔で応対する。

 

「どうされましたか?」

 

男性は少し苛立った様子でクレーンゲームを指差した。

 

「全然取れないじゃないか!」

 

「お金だけ使わせる気か?」

 

突然の強い口調に、浜谷は一瞬言葉を失う。

 

「申し訳ございません……。」

 

男性はさらに続ける。

 

「これ、本当に取れる設定なの?」

 

浜谷は深呼吸をして答える。

 

「確認いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか。」

 

すぐにインカムを押す。

 

「石村さん、クレーン対応お願いします。」

 

『石村、向かいまーす。』

 

数秒後、石村がやって来た。

 

 

石村は景品の位置や設定を確認する。

 

「お待たせいたしました。」

 

「設定に問題はありませんでした。」

 

「ただ、こちらの景品は少し位置を調整いたします。」

 

石村は丁寧に説明しながら景品を動かす。

 

男性は少し表情を和らげた。

 

「そういうことなら、もう一回やってみるよ。」

 

挑戦すると、景品はあと一歩のところまで動いた。

 

「さっきより全然いいな。」

 

男性は納得した様子で再びプレイを始めた。

 

石村は浜谷に小さくうなずく。

 

「大丈夫。」

 

そう言って売場へ戻っていった。

 

 

対応後。

 

浜谷はほっと胸をなで下ろす。

 

「すごく緊張しました……。」

 

石村は笑う。

 

「怒っているお客様を見ると焦るよね。」

 

「でも、まずは話を最後まで聞くこと。」

 

「それだけで落ち着いてくださることも多いから。」

 

浜谷は真剣にうなずいた。

 

「はい。」

 

 

閉店後。

 

事務所。

 

茂田が浜谷へ声を掛ける。

 

「今日は大変だったニダ。」

 

「はい……。」

 

「正直、頭が真っ白になりました。」

 

高崎が笑う。

 

「でも、ちゃんと最後まで話を聞けてたよ〜。」

 

相馬もうなずく。

 

「慌てなかったのは良かったね。」

 

石村が静かに言う。

 

「『ありがとう』を言ってもらえる日もあれば、厳しい言葉をいただく日もある。」

 

「それでも、お客様に誠実に向き合うことが一番大切なんだ。」

 

浜谷はその言葉を胸に刻む。

 

「はい!」

 

店内の照明がゆっくりと消えていく。

 

楽しいことばかりではない。

 

それでも、お客様のためにできることを考え続ける。

 

それがゲームセンタースタッフの仕事なのだと、浜谷は少しずつ理解し始めていた。

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