昼過ぎの阿佐野店。
メダルコーナーから浜谷のインカムが入る。
「浜谷です。メダルゲーム一台、修理終わりました。」
「了解。」
大澤は工具を持ってメダルコーナーへ向かった。
修理した筐体の動作を一つひとつ確認する。
メダルの払い出し。
センサー。
画面表示。
異常はない。
「……大丈夫。」
「ちゃんと直ってます。」
浜谷はほっと息をついた。
「ありがとうございます。」
一人で修理を任されるようになってから、少しずつではあるが、自信もついてきていた。
その時だった。
事務所のドアが開く。
「お疲れさま。」
入ってきたのは、エリアメンテナンス担当の生田だった。
生田は県内の店舗を巡回し、店舗のメンテナンス担当が直せないエラーを直す。日村と大澤の師匠的な存在だった。
「生田さん!」
浜谷はすぐに頭を下げる。
「こんにちは!」
「大澤さんから聞いたよ。」
「一人で修理したんだって?」
「はい。」
「説明書見ながらですけど……。」
「それで十分。」
生田は笑顔で答えた。
「見ないで直そうとする人より、ちゃんと確認しながら直す人の方が信用できるからね。」
そう言うと、生田は修理した筐体の前へ向かう。
扉を開け、内部を確認する。
配線。
コネクター。
ネジの締め具合。
清掃状態。
細かな部分まで丁寧に見ていく。
しばらくして扉を閉めると、生田は静かにうなずいた。
「うん。」
「よくこれ直したね。」
浜谷の表情が少し緩む。
「ありがとうございます。」
「仕事も丁寧だ。」
「配線もきれい。」
「工具の使い方も問題ない。」
「大澤さん、しっかり教えてくれてるね。」
大澤は少し照れくさそうに笑う。
「本人が頑張ってるだけです。」
生田は浜谷の方へ向き直る。
「浜谷くん。」
「メンテナンスは派手な仕事じゃない。」
「でも、この仕事ができる人が一人いるだけで、お店はすごく助かる。」
浜谷は真剣な表情で聞いていた。
生田は続ける。
「今日の修理を見て思った。」
「これなら安心だ。」
「阿佐野店は、浜谷くんがいるから安心だね。」
その一言に、浜谷は目を丸くした。
「え……。」
まさか、そんな言葉を掛けてもらえるとは思っていなかった。
少し離れた場所で聞いていた茂田が笑う。
「琉くん、すごいニダ。」
大澤もうなずく。
「最近、本当に安心して任せられます。」
浜谷は少し照れながら頭を下げた。
「まだまだ分からないことばかりです。」
「これからもっと勉強します。」
生田は笑顔で浜谷の肩を軽く叩く。
「その気持ちがあれば大丈夫。」
「困ったら一人で抱え込まないこと。」
「俺でも大澤さんでも、いつでも頼っていい。」
「はい!」
力強い返事だった。
その姿を見た生田は満足そうに笑う。
「これからの阿佐野店、期待してるよ。」
浜谷は工具箱を持ち直し、次の修理依頼へ向かった。
ゲームセンターの”楽しい”を支えるために。
今日も一人のメンテナンス担当が、静かに店を守っていた。