土曜日、午後一時。
ファンステージ恒例の「スマイルタイム」の時間。
各店舗で従業員の笑顔を撮影し、事業部チャットへ投稿する。
阿佐野店でも撮影の準備が始まっていた。
しかし、その頃――。
「貸し出し機、また紙幣読まないですね。」
浜谷はメダルコーナーで、メダル貸し出し機の修理をしていた。
工具箱を開き、パネルを外す。
配線を確認し、コネクターを差し直す。
最後に動作確認。
紙幣を投入すると、貸し出し機は正常に動き始めた。
「直りました。」
「うん。」
大澤が静かにうなずく。
「お疲れ。」
その様子を少し離れた場所から見ていた細井は、スマホを取り出した。
カシャッ。
工具を持ったまま、修理を終えてほっと笑う浜谷。
自然な笑顔の一枚だった。
「よし。」
数分後。
事業部チャットに投稿される。
『阿佐野店 スマイルタイム』
「えっ!」
浜谷は驚いた。
「いつ撮ったんですか?」
「修理終わった瞬間。」
細井は笑う。
「いい笑顔だったから。」
高村ものぞき込む。
「自然でいい写真ですね。」
矢水も笑顔でうなずく。
「メンテナンス中の写真って珍しいね。」
浜谷は照れ笑いを浮かべながら、事業部チャットをスクロールしていく。
すると、一枚の写真で指が止まった。
原町中央店。
写真には、石村、山神、日村、高崎、藤屋、相馬、大沼たちが笑顔で並んでいた。
兼任店長の茂田は阿佐野店にいるため、この写真には写っていない。
浜谷は思わず微笑んだ。
「みんな元気そうだなぁ。」
現在は阿佐野店へ応援勤務中。
所属は今も原町中央店のままだ。
写真を見るだけで、あの頃の空気がよみがえってくる。
そこへ細井が隣へ来た。
「原町中央店だ。」
「はい。」
「やっぱり懐かしいですね。」
細井も画面を見つめる。
「石村さんも山神さんも、全然変わってない。」
「高崎さんも藤屋さんも元気そう。」
浜谷は笑った。
「細井さんも原町中央店にいましたもんね。」
「うん。」
「阿佐野店も好きだけど、原町中央店はやっぱり特別だなぁ。」
「分かります。」
浜谷は静かにうなずいた。
「僕にとって、全部の始まりのお店ですから。」
その時、茂田が事務所へ入ってきた。
「何見てるニダ?」
「原町中央店のスマイルタイムです。」
茂田ものぞき込んで笑う。
「みんないい顔してるニダ。」
「今度原町戻ったら、またみんなで写真撮るニダ。」
「はい!」
浜谷は笑顔で返事をした。
その時、インカムが鳴る。
『メダルコーナー、ご対応お願いします。』
「浜谷、向かいます!」
「細井も行きます!」
二人はスマホをしまい、売り場へ走っていく。
応援先の阿佐野店でも。
所属する原町中央店でも。
浜谷にとって、そのどちらも大切な居場所だった。