春休みも終わりに近づいたある日。
浜谷はいつものように出勤すると、石村に声を掛けられた。
「浜谷くん。」
「今日はメダルコーナーの仕事を覚えてもらおう。」
「はい!」
石村は近くにいた大野を呼ぶ。
「大野さん、今日は浜谷くんをお願い。」
「分かりました。」
大野は優しく微笑んだ。
「じゃあ、一緒に回ろうか。」
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開店前のメダルコーナー。
まだお客様はいない。
ゲーム機のデモ画面だけが静かに動いていた。
大野は一台のメダルゲームの前で立ち止まる。
「まずはエラー解除から。」
「エラーが出たら、最初に画面の表示を確認するの。」
「いきなり機械を開けるんじゃないんですね。」
「そう。」
「それから、お客様にどんな状況だったかを聞く。」
「最後に必要なら機械を開ける。」
浜谷はメモを取りながら何度もうなずく。
「なるほど……。」
大野は機械を開け、中の仕組みを見せた。
「ここにメダルが詰まるとエラーになることがあるよ。」
普段は見ることのない機械の内部に、浜谷は思わず見入る。
「ゲーム機って、こんな風になってるんですね。」
「一台一台少し違うから、焦らず確認することが大事。」
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続いて、大野はメダル補充を教える。
「補充する場所も機械によって違うの。」
「だから確認してから入れること。」
浜谷は補充用のメダルを慎重に流し込む。
ジャラジャラという音が響いた。
「結構重いですね。」
「無理しないで少しずつね。」
補充が終わると、大野は続けた。
「補充したら終わりじゃないよ。」
「ちゃんと動くか確認して、扉を閉めるところまでが仕事。」
「はい!」
浜谷は忘れないようにメモへ書き込んだ。
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その後も二人は店内を回りながら、
エラー解除の方法。
補充の仕方。
機械ごとの違い。
お客様対応で気を付けること。
一つずつ教わっていく。
「全部覚えられるか不安です……。」
浜谷が苦笑すると、大野は笑った。
「最初から全部覚えなくて大丈夫。」
「分からないことは何度でも聞いて。」
その言葉に浜谷は少し安心した。
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開店後。
お客様で賑わい始めた店内。
『メダルコーナーお願いします。』
インカムが鳴る。
浜谷は大野と一緒に向かった。
小さな男の子が困った顔でゲーム機を見つめている。
「遊んでいたら止まっちゃって……。」
浜谷は教わった通り、まず画面を確認した。
メダル切れの表示。
「少々お待ちください。」
機械を開け、補充を行う。
扉を閉め、エラーを解除すると、ゲームは再び動き始めた。
「動いた!」
男の子が嬉しそうに笑う。
「ありがとうございました!」
「いえ、失礼いたしました。」
その様子を見ていた大野が小さく拍手した。
「初めてにしては完璧だったね。」
浜谷は照れながら笑った。
「緊張しました。」
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夕方。
再びメダルゲームでエラーが発生する。
しかし今度は見たことのない表示だった。
浜谷は少し考えたあと、インカムを押す。
「大野さん、お願いできますか?」
「はーい。」
大野は画面を見ると、
「これは少し複雑だから、一人で触らなくて正解。」
と笑った。
浜谷は解除方法を横で見学する。
何でも一人でやろうとしない。
分からない時は先輩を頼る。
それも仕事なのだと浜谷は学んだ。
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閉店後。
浜谷は今日書いたメモを読み返していた。
ゲームセンターの仕事は接客だけではない。
機械を知り、お客様が安心して遊べる環境を守ることも、大切な仕事だった。
「今日はどうだった?」
帰る準備をしていた大野が聞く。
「難しかったです。」
浜谷は少し笑って続けた。
「でも、もっと覚えたいって思いました。」
大野もうれしそうに笑う。
「その気持ちがあれば大丈夫。」
少し離れた場所で山神が一言。
「おぅ。」
その一言に、浜谷も思わず笑った。
今日覚えたことは、ほんの一部。
それでも、新しい世界を知ることができた一日だった。