ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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手が離せません!

休日の阿佐野店。

 

店内には子どもたちの歓声とゲームの音が響いていた。

 

「浜谷さん。」

 

大澤が太鼓ゲームの前で声をかける。

 

「反応が悪いです。」

 

「見てみます。」

 

浜谷は工具箱を持って筐体の前にしゃがみ込んだ。

 

パネルを開け、配線を一本ずつ確認する。

 

「センサーかな……。」

 

今日は少し厄介そうだった。

 

慎重に作業を進めていると——

 

「あの、店員さん。」

 

振り返ると、小さな男の子を連れたお父さんが立っていた。

 

「UFOキャッチャーの景品が変な向きになっちゃって……。」

 

浜谷は申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「申し訳ありません。今このゲームを修理しているので、あちらのスタッフにお声掛けいただいてもよろしいでしょうか。」

 

「分かりました。」

 

お父さんは茂田の方へ向かっていった。

 

「よし……。」

 

浜谷は再び作業を始める。

 

すると今度は——

 

「あの!」

 

メダルを持った男の子。

 

「メダルなくなっちゃった!」

 

「ごめんね!他の店員さん呼ぶから待っててね。」

 

「はーい!」

 

男の子は高村の方へ走っていく。

 

浜谷はようやく工具を持ち直した。

 

「今度こそ……。」

 

カチャ。

 

配線を差し直そうとした、その時。

 

「店員さん!」

 

また別のお客さんだった。

 

「このゲーム、エラーになっちゃったんだけど。」

 

浜谷は思わず苦笑いする。

 

「今日はすごいな……。」

 

近くで見ていた細井が笑う。

 

「浜谷くん、めちゃくちゃ話しかけられてるね。」

 

「修理してるって分からないんですかね。」

 

「近くにいる店員さんだからじゃない?」

 

「そうなんでしょうけど……。」

 

浜谷は思わず店内へ向かって叫んだ。

 

「もう!」

 

「他の人に言ってよ!」

 

一瞬、店内が静まり返る。

 

……と思った次の瞬間。

 

茂田をはじめ、高村、矢水、細井、大澤まで吹き出した。

 

「琉くん。」

 

茂田は笑いながら言う。

 

「お客さんからしたら、近くにいる店員さんが浜谷くんなんだニダ。」

 

「だから悪気はないニダ。」

 

浜谷は照れ笑いを浮かべた。

 

「それは分かるんですけどね。」

 

「今日は修理が全然進みません。」

 

「その分、私たちが売り場回るから。」

 

高村が笑顔で言う。

 

「浜谷さんは修理に集中してください。」

 

「ありがとうございます。」

 

浜谷は再び太鼓ゲームへ向き直った。

 

センサーを調整し、配線を確認し、電源を入れる。

 

画面が正常に立ち上がる。

 

試しにバチで叩く。

 

ドン。

 

カッ。

 

ドドン。

 

反応は完璧だった。

 

「直りました!」

 

大澤が静かにうなずく。

 

「さすが。」

 

浜谷は工具箱を閉じる。

 

すると茂田が笑って言った。

 

「今日は修理より接客してた時間の方が長かったニダ。」

 

「本当ですよ。」

 

浜谷は苦笑いしながら答える。

 

「次に修理するときは、“修理中です”って札でもぶら下げておこうかな。」

 

その言葉に、事務所のみんなはまた大笑いした。

 

今日も阿佐野店には、笑い声とゲームの音が心地よく響いていた。

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