ある日の阿佐野店。
クレーンコーナーで景品を並べていた古坂が、浜谷と細井を呼び止めた。
「二人とも、ちょっとお願いがあるんだけど。」
「はい?」
「この台のお菓子タワーを作り直したいの。」
古坂が指さしたのは、お菓子が山のように積まれたクレーンゲーム。
しかし、お客様が減って崩れたことで見栄えが悪くなっていた。
「せっかくなら、『一回やってみたい!』って思ってもらえるようなタワーにしたいんだよね。」
細井は腕まくりをする。
「面白そう!」
浜谷も箱を手に取った。
「じゃあ、やってみましょう。」
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まずは土台作り。
細井はどんどんお菓子を積み始める。
しかし。
「あっ!」
ガラガラッ。
あっという間に崩れてしまった。
「難しい!」
古坂は苦笑いする。
「だからお願いしたの。」
その様子を見ていた浜谷が、お菓子を手に取りながら言った。
「たぶん、土台が狭いんです。」
「え?」
「大学で少し勉強したんですけど、こういうのって下がしっかりしてないと上が安定しないんですよ。」
細井が笑う。
「さすが土木!」
浜谷は床に並べながら説明する。
「ピラミッドみたいに重さを分散させた方が崩れにくいと思います。」
「なるほど!」
「まず下を広くして……。」
「その上に少しずつ小さくしていけば……。」
二人で慎重に積み始めた。
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「そこ、少し右!」
「はい!」
「今度はその箱を縦!」
「了解!」
息はぴったりだった。
途中で少し傾くと、
「ストップ!」
浜谷がすぐ修正する。
「ここを一段ずらしましょう。」
「おぉ!」
細井が感心する。
「なんか本当に工事現場みたい!」
浜谷は笑った。
「大学で橋とか擁壁とか勉強してるので。」
「お菓子でも理屈は似てる気がします。」
古坂も興味深そうに見つめる。
「へぇ~。」
「浜谷くん、そんなこと考えながら積んでるんだ。」
⸻
三十分後。
「……できた!」
目の前には、高さのある立派なお菓子タワーが完成していた。
左右のバランスも美しく、今にも崩れそうで崩れない絶妙な形。
「すごい!」
細井は思わず拍手する。
「めちゃくちゃ映える!」
古坂もうなずく。
「これなら思わず一回やりたくなるね。」
ちょうど通りかかった親子も足を止めた。
「すごーい!」
「やってみたい!」
その声を聞いた古坂は笑顔になる。
「大成功だね。」
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営業終了後。
古坂は二人に頭を下げた。
「ありがとう。」
「すごくいい台になったよ。」
細井は満足そうに完成したタワーを眺める。
「崩すのがもったいないね。」
浜谷も笑う。
「でも、お客様に取ってもらうためのタワーですから。」
「たくさん遊んでもらえたら嬉しいです。」
その言葉に古坂はうなずいた。
「うん。」
「きっと明日には、きれいに崩れてるね。」
三人は顔を見合わせ、思わず笑った。
ゲームセンターでは、景品を積み上げることもまた、お客様を楽しませるための大切な仕事なのだった。