浜谷が三年目の勤務も折り返そうとしていた頃。
気が付けば一年も半分以上が過ぎ、阿佐野店での仕事にもすっかり慣れていた浜谷。
この日も休憩時間になると、浜谷、茂田、細井の三人は休憩室でジュースを飲みながら談笑していた。
「いやぁ、早いねぇ。」
茂田がペットボトルを机に置く。
「もう今年も半分以上終わっちゃったよ。」
「ほんと早いですね。」
浜谷も笑いながらうなずく。
細井も窓の外を見ながらつぶやいた。
「気付いたらもう夏も終わりだもんね。」
少しの沈黙。
茂田は浜谷を見て、少し寂しそうに笑った。
「でもさ。」
「琉くんとも、一緒に働けるの今年で最後なんだよね。」
「そう考えると寂しいなぁ。」
細井もうなずく。
「私もそう思ってた。」
「あと半年くらいしか一緒に働けないんだなって。」
しかし。
当の浜谷だけが首をかしげていた。
「……?」
「何の話ですか?」
茂田と細井は顔を見合わせる。
「え?」
「だって琉くん大学四年生でしょ?」
「卒業したら就職じゃん。」
細井も続ける。
「だから、今年で卒業だよね?」
浜谷は数秒考え込む。
「あれ……。」
「え?」
「僕、大学院に進学するって言ってませんでしたっけ?」
休憩室が静まり返る。
「……。」
「……。」
そして次の瞬間。
「「えーーーーーー!!?」」
二人の声が休憩室に響いた。
浜谷は逆に驚く。
「あれ?」
「言ってなかったですか?」
茂田は思わず立ち上がる。
「聞いてないよ!」
細井も目を丸くした。
「初耳なんだけど!」
浜谷は苦笑いする。
「研究室の先生とはその話ばっかりしてたので、てっきり皆さんも知ってるのかと……。」
「来年から大学院へ進学する予定です。」
「だから、あと二年は学生ですね。」
「二年!?」
茂田は机を軽く叩いた。
「じゃあ、まだ一緒に働けるじゃん!」
細井も安心したように笑う。
「よかったぁ。」
「本気で今年でお別れだと思ってた。」
浜谷は照れ笑いを浮かべる。
「そんなに驚かなくても……。」
すると休憩室のドアが開いた。
「どうしたの?」
高村が不思議そうな顔で入ってくる。
茂田はすぐに振り返った。
「高村さん聞いて!」
「琉くん、大学院行くらしい!」
「えっ?」
高村も目を丸くする。
「そうなの?」
「初めて聞いた。」
「なんで言わなかったの?」
浜谷は申し訳なさそうに笑う。
「聞かれなかったので……。」
三人は顔を見合わせる。
「いや、普通言うでしょ!」
声がぴったり重なった。
浜谷は思わず肩をすくめる。
「すみません……。」
その姿がおかしくて、休憩室は笑いに包まれた。
茂田は笑いながら浜谷の肩を軽く叩く。
「じゃあ安心した。」
「あと二年、よろしくね。」
浜谷も笑顔でうなずく。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
細井も笑いながら立ち上がる。
「じゃあ浜谷、あと二年しっかり働いてもらうからね。」
「それは覚悟してます。」
休憩終了のチャイムが鳴る。
茂田は立ち上がって背伸びをした。
「よし、仕事戻ろっか。」
「おつかれさまぁ〜ず!」
三人は笑顔のまま休憩室を後にした。