数か月ぶりの原町中央店。
営業開始と同時に、店内はいつもの賑やかな空気に包まれた。
子どもたちの笑い声。
クレーンゲームの電子音。
メダルゲームの払い出し音。
そして、スタッフたちのインカムの声。
「石村、向かいまーす。」
「おぅ。」
「アリガトゴザイマス。」
聞き慣れた声が店内に響く。
浜谷は景品補充をしながら、思わず笑みを浮かべた。
(変わらないなぁ……。)
ほんの数か月離れていただけなのに、どこか懐かしい。
それでいて、不思議と昨日までここで働いていたような安心感もあった。
景品を整え、お客様をご案内し、フロアを巡回する。
身体は自然と動いていた。
「浜谷くん。」
石村が声を掛ける。
「はい!」
「その景品、もう少し右かな。」
「はい!」
浜谷は景品の向きを微調整する。
石村はうなずいた。
「うん、その方が見栄えいい。」
「ありがとうございます。」
以前なら緊張してしまっていた何気ないやり取りも、今は落ち着いて受け止められる。
そんな自分に、浜谷自身も少し驚いていた。
その時だった。
ピーッ、ピーッ。
メダルゲームからエラー音が鳴り響く。
「浜谷くん!」
日村がメンテナンスルームから顔を出す。
「ちょっと見てくれる?」
「はい!」
浜谷は工具箱を持ち、すぐにメダルゲームへ向かった。
表示されたエラー番号を確認する。
カバーを開け、内部をのぞき込む。
阿佐野店で生田から教わった点検方法。
大澤から教わった配線確認。
そして、日村から何度も聞いた「まずは落ち着いて原因を探すこと」。
一つひとつ思い出しながら確認していく。
「……ありました。」
一本の配線が少しだけ浮いていた。
浜谷は慎重に差し込み直し、動作確認を行う。
ピッ。
エラー表示が消える。
メダルゲームは何事もなかったように動き始めた。
「直りました!」
日村は少し驚いたように目を丸くする。
「おぉ。」
「もうそこまで出来るようになったんだ。」
「阿佐野店で色々教えていただいたので。」
浜谷が笑うと、石村も近くまで歩いてきた。
「見てたぞ。」
「阿佐野店で鍛えられたな。」
「まだまだ勉強中です。」
浜谷は照れ笑いを浮かべる。
石村は首を横に振った。
「いや。」
「十分成長してる。」
「前なら日村さんを呼んで終わりだった。」
「今は自分で原因を探して直せるようになった。」
「それだけでも大きな成長だよ。」
その言葉が胸に染みた。
「ありがとうございます。」
昼過ぎ。
クレーンゲームコーナーでは、川原がお客様対応をしていた。
「少々お待ちください!」
景品の向きを整え、取りやすい位置へ調整する。
「ありがとうございました!」
笑顔で送り出す姿は、とても落ち着いていた。
以前は分からないことがあるたびに浜谷へ駆け寄ってきていた川原。
今では自分で考え、自信を持って対応している。
その姿を見た浜谷は自然と笑顔になる。
(川原さんも成長してるな。)
休憩時間。
浜谷は自動販売機で飲み物を買い、休憩室へ入った。
そこには川原が座っていた。
「お疲れさまです!」
「お疲れさまです。」
浜谷は椅子へ腰掛ける。
「さっきの接客、見てました。」
「すごく落ち着いてましたね。」
川原は少し恥ずかしそうに笑う。
「本当ですか?」
「浜谷さんに教えてもらったこと、ちゃんと覚えてますから。」
「あとは石村さんや高崎さんにも色々教わって。」
「今は一人でも対応できるようになりました。」
浜谷は心からうれしくなった。
「すごいですね。」
「僕も負けてられないな。」
川原は笑う。
「浜谷さんの方が、もっとすごいですよ。」
「メンテナンスまで出来るようになってるじゃないですか。」
「阿佐野店で鍛えられましたね。」
二人は顔を見合わせて笑った。
原町中央店は変わらない。
店内の景色も、聞こえてくる音も、みんなの笑顔も。
だけど、その中で働く人たちは、少しずつ経験を重ね、少しずつ成長している。
阿佐野店で多くのことを学んだ自分。
そして、原町中央店で成長を続ける仲間たち。
変わらない景色の中で、変わっていく人たちの姿が、浜谷にはとてもまぶしく見えた。