阿佐野店のとある休日の午後。
店内は家族連れや学生でにぎわっていた。
開店から数時間が経ち、スタッフも慌ただしく動き回っている。
入口では、樋口がお客様を笑顔で迎えていた。
「いらっしゃいませー!」
「こんにちは!」
小さな子どもにも目線を合わせて声を掛ける。
「今日はいっぱい遊んでいってね!」
その様子を見た浜谷は思わず笑顔になる。
「樋口さん、本当に明るいなぁ。」
すると高村が微笑んだ。
「あの子は、ああいうところがいいのよ。」
その数分後。
浜谷がクレーンコーナーを巡回していると、
「あっ、浜谷くん!」
樋口が景品を補充していた。
「このぬいぐるみ、もう少し前に出した方が取りやすそうですよね?」
「そうね。」
二人で景品を並べ替える。
作業が終わると、
「アザッす!」
そう言って樋口はどこかへ走っていった。
「忙しいなぁ……。」
浜谷がつぶやく。
昼過ぎ。
今度はメダルコーナー。
「すみませーん!」
お客様に呼ばれた浜谷が向かうと、
先に対応していたのは樋口だった。
「こちらで大丈夫ですよ!」
丁寧に説明を終えると、お客様は安心したように笑顔になる。
「ありがとうございました。」
「アザッす!」
また走っていく樋口。
浜谷は思わず笑ってしまう。
「本当にどこにでもいますね。」
その様子を見ていた細井が笑う。
「今日は入口担当だと思ったら、気付いたらクレーンにいるし。」
「さっきはイベントの手伝いもしてたよ。」
そこへ古坂もやって来た。
「私なんて五分前に景品コーナーで会ったよ?」
「分身してるのかな?」
みんなで笑っていると、高村がぽつりと言った。
「でもね。」
「樋口ちゃんって、お客様が困っているところへ自然と行くのよ。」
「入口で迷っている人がいたら案内して。」
「クレーンで困っていたら声を掛けて。」
「帰るお客様には『ありがとうございました』って見送る。」
「だから、いろんな場所で見かけるの。」
浜谷は納得した。
(なるほど……。)
(走り回っているんじゃなくて、お客様を見て動いているんだ。)
営業終了間際。
出口では樋口がお客様を見送っていた。
「ありがとうございました!」
「また遊びに来てくださいね!」
子どもが元気よく手を振る。
「ばいばーい!」
樋口も大きく手を振り返した。
その光景を見ていた浜谷が声を掛ける。
「樋口さん。」
「今日は入口にも出口にもいましたね。」
樋口は笑顔で答えた。
「入口では『ようこそ!』って迎えて。」
「出口では『また来てね!』って送り出したいんです。」
「その間も、お客様が困ってたら放っておけなくて。」
「気付いたら店中走ってます!」
「アザッす!」
その言葉に浜谷も思わず笑った。
ちょうどその時、インカムから茂田の声が聞こえる。
「樋口ちゃ〜ん。」
「今日は何キロ走ったニダ?」
樋口は笑いながら答えた。
「分かりませーん!」
「でも、元気だけは負けません!」
「それでいいニダ。」
「阿佐野店は元気が一番ニダ。」
店内に笑い声が広がる。
入口で迎え、店内を駆け回り、出口で見送る。
樋口の笑顔は、いつもお客様のそばにあった。
だから今日も阿佐野店には、たくさんの「また来るね」が生まれるのだった。