ようこそ!ゲームセンター『ファンステージ』へ!   作:君脇玲

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気づけば1時間

昼過ぎ。

 

平日の阿佐野店は、お昼のピークを過ぎ、少し落ち着いた空気が流れていた。

 

浜谷はカウンターでレジ周りを整えながら、景品袋の補充をしていた。

 

そこへ茂田がやってくる。

 

「浜谷くん。」

 

「はい。」

 

「今ちょっと落ち着いてるニダ。」

 

「そうですね。」

 

二人はカウンターに並び、何気なく話し始めた。

 

「阿佐野店、もう慣れたニダ?」

 

「はい。最初は緊張しましたけど、今はだいぶ慣れました。」

 

「よかったニダ。」

 

浜谷は店内を見渡しながら話す。

 

「最初はお店の広さも違うし、お客様の雰囲気も違うし、戸惑うことばかりでした。」

 

「でも、皆さん優しいですから。」

 

「細井さんはメンテのことをいろいろ教えてくれますし、大澤さんは困ったらすぐ助けてくれます。」

 

「高村さんは店全体をよく見てますし、樋口さんはいつも元気で。」

 

「古坂さんも、久しぶりに一緒に働けて嬉しいです。」

 

茂田は嬉しそうに笑った。

 

「みんな個性あるニダ。」

 

「でも、いいチームになってきたニダ。」

 

「本当にそう思います。」

 

話題は自然と原町中央店へ移った。

 

「原町中央店はどうニダ?」

 

「やっぱり特別ですね。」

 

浜谷は少し懐かしそうな表情になる。

 

「最初に働いた店ですから。」

 

「右も左も分からない僕を、石村さんや山神さん、高崎さん、藤屋さん、相馬さんが育ててくれました。」

 

茂田は笑いながら言う。

 

「浜谷くん、最初はインカム全然しゃべれなかったニダ。」

 

「あれは忘れてくださいよ。」

 

「お客様に聞こえるくらい緊張してたニダ。」

 

「本当に恥ずかしかったです。」

 

二人は声を上げて笑った。

 

「でも今じゃ普通に接客してるニダ。」

 

「慣れました。」

 

「人は成長するニダ。」

 

浜谷は少し照れながらうなずいた。

 

「そうですね。」

 

今度は浜谷から質問する。

 

「茂田さんは、原町中央店と阿佐野店を兼任して大変じゃないですか?」

 

茂田は少し考えてから答えた。

 

「大変ニダ。」

 

「でもね。」

 

「どっちの店も大事ニダ。」

 

「どっちにも頑張ってるスタッフがいる。」

 

「だから、どっちもちゃんと見たいニダ。」

 

浜谷はその言葉を静かに聞いていた。

 

「店長って、本当にすごいですね。」

 

「そんなことないニダ。」

 

「みんなが頑張ってくれるから、お店が回るニダ。」

 

「私はその手伝いをしてるだけニダ。」

 

浜谷は笑顔で首を振った。

 

「いや、茂田さんがいるから安心して働けるんです。」

 

「原町中央店でも、阿佐野店でも。」

 

茂田は少し照れくさそうに笑った。

 

「ありがとニダ。」

 

話はさらにメンテのことへ。

 

「最近、メンテどうニダ?」

 

「楽しいです。」

 

浜谷は迷わず答えた。

 

「もちろん難しいこともあります。」

 

「エラーが続く日は嫌になりますし。」

 

「説明書を読んで、『なんかわからんけどだりぃ』ってなることもあります。」

 

茂田は思い出して笑う。

 

「この前言ってたニダ!」

 

「でも、直った瞬間が一番嬉しいんです。」

 

「だから頑張れます。」

 

茂田は優しくうなずいた。

 

「浜谷くん、向いてるニダ。」

 

「最後まで諦めない。」

 

「そこが一番大事ニダ。」

 

「ありがとうございます。」

 

二人の話は止まらない。

 

新人時代の失敗談。

 

阿佐野店で起きた出来事。

 

お客様との思い出。

 

メンバーそれぞれの話。

 

気づけば笑い声が何度もカウンターに響いていた。

 

すると、高村が近づいてきた。

 

「茂田さん。」

 

「浜谷くん。」

 

「そろそろ休憩行かなくていいの?」

 

「え?」

 

二人は同時に時計を見る。

 

「あっ!」

 

予定では一時間前に休憩へ入るはずだった。

 

「一時間過ぎてる!」

 

浜谷は思わず声を上げる。

 

茂田も頭を抱えた。

 

「話しすぎたニダ。」

 

樋口が笑いながらやってくる。

 

「ずーっと楽しそうに話してましたよ!」

 

細井もクスクス笑う。

 

「途中から誰も割って入れませんでした。」

 

浜谷は苦笑い。

 

「そんなに話してました?」

 

「うん。」

 

高村が笑う。

 

「二人とも時間忘れてたよ。」

 

茂田は照れくさそうに笑った。

 

「ごめんニダ。」

 

「じゃあ、休憩行ってくるニダ。」

 

「僕も行ってきます。」

 

休憩室へ向かう途中、茂田がぽつりと言った。

 

「浜谷くんと話してると、本当に時間があっという間ニダ。」

 

浜谷も笑顔で答える。

 

「僕もです。」

 

「またゆっくり話しましょう。」

 

「もちろんニダ。」

 

仕事のこと。

 

仲間のこと。

 

お店のこと。

 

話したいことは、まだまだ尽きない。

 

だからこそ、二人は気づかなかった。

 

時計の針が、一時間も進んでいたことを。

 

それは、店長とスタッフという立場を超えて、お互いを信頼しているからこそ生まれた、何気なくも温かな時間だった。

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