営業終了後。
店内には「閉店しました」のアナウンスが流れ、お客様の姿もなくなった。
景品コーナーでは樋口が最後の清掃を終え、高村は売上の確認をしている。
浜谷はメンテ室で工具箱を閉じようとしていた。
その時だった。
「浜谷くん。」
大澤がメダルコーナーから顔を出す。
「ごめん。」
「最後に一台だけお願い。」
「了解です。」
浜谷は苦笑いしながら工具箱を持ち直した。
向かった先は、店の入口近くにあるメダルゲーム。
営業中は忙しくて手が付けられなかった機械だ。
「動くことは動くんだけどね。」
「ちょっと異音がするの。」
「なるほど。」
浜谷はカバーを外し、中をのぞき込む。
「ベルトかな……。」
ライトで照らしながら、一つひとつ確認していく。
店内はもう静かだった。
聞こえるのは工具の音だけ。
しばらくして異音の原因を見つけた。
「ここですね。」
ローラーに小さなメダルの破片が挟まっていた。
取り除き、各部を清掃する。
「これで……。」
試運転。
ウィーン。
先ほどまでの異音は消えていた。
「直りました。」
「さすが。」
大澤は安心したように笑う。
「ありがとう。」
その時。
店の外へ続く自動ドアが開いた。
夜風が店内へ流れ込む。
「今日は星きれいニダ。」
茂田が外を見ながら言った。
浜谷もつられて外へ出る。
営業を終えた駐車場。
街の明かりの向こうには、たくさんの星が輝いていた。
「ほんとですね。」
「こんなに見えるんだ。」
細井も仕事を終えて外へ出てきた。
「今日は空気澄んでるね。」
樋口も駆け寄る。
「わぁー!」
「すごい!」
みんな自然と空を見上げる。
しばらく誰も話さなかった。
仕事終わりの静かな時間。
昼間の賑やかさが嘘のようだった。
細井がぽつりとつぶやく。
「昼間は機械の音ばっかり聞いてるから、こういう静かな時間っていいね。」
浜谷もうなずく。
「毎日忙しいですけど。」
「こういう時間があると、また明日も頑張ろうって思えます。」
茂田は笑顔で二人を見る。
「今日もみんな、お疲れさまニダ。」
「機械も元気になった。」
「スタッフも元気。」
「それが一番ニダ。」
高村も店から出てきた。
「そろそろ帰ろっか。」
「はい!」
樋口が元気よく返事をする。
浜谷はもう一度だけ夜空を見上げた。
昼間は何台もの機械と向き合い、エラーに追われる毎日。
それでも営業が終わり、静かな店の前で見上げる星空は、不思議と疲れを忘れさせてくれる。
「また明日も頑張ろう。」
誰に言うでもなくつぶやくと、細井が隣で笑った。
「うん。」
「また明日。」
浜谷も笑顔で答える。
「また明日です。」
星空の下。
今日も一日、たくさんのゲーム機を直したメンテナンススタッフたちは、それぞれの帰り道へと歩き出すのだった。