今日は浜谷の休日。
朝から目覚ましをかけることなく起き、私服に着替える。
「せっかくだし、遊びに行くか。」
向かった先は、自分の店ではない、とあるゲームセンターだった。
店内へ入ると、浜谷の目は一気に輝く。
「おぉ……!」
普通のお客様なら景品やゲームを見るところだが、浜谷の視線は少し違う。
「この景品、こんな置き方してるんだ。」
「なるほど、この橋渡し面白いな。」
「このPOPも見やすい。」
クレーンゲームを一台一台見ながら、スマホにメモを取っていく。
「これ、阿佐野店でも参考になるかも。」
「今度高村さんに話してみよう。」
そのまま店内を歩いていくと、今度はメダルコーナーへ。
「おっ。」
「この機種、初めて見た。」
珍しいメダルゲームを前に、浜谷は子どものような笑顔になる。
「こんなのあるんだ。」
「面白そう。」
少し遊んでみる。
「へぇ。」
「この演出いいなぁ。」
「音も凝ってる。」
遊びながらも、どこか店員目線で観察してしまう。
さらに奥へ進む。
その時だった。
ピーピーピー……
一台のメダルゲームがエラー音を鳴らしていた。
画面には赤い文字。
『ERROR』
浜谷は思わず立ち止まる。
「あ。」
数秒見つめる。
「これ……。」
「直せるやつだ。」
思わず足が機械へ向く。
「たぶんセンサーだな。」
「いや、配線かな。」
「説明書なくても分かるかも……。」
手がうずく。
(直したい……。)
(めちゃくちゃ直したい……。)
しかし。
「いやいやいや。」
浜谷は慌てて両手を引っ込めた。
「俺、この店の店員じゃない。」
「危ない危ない。」
苦笑いしながらその場を離れる。
ちょうどその時、店員が工具箱を持ってやって来た。
浜谷は少し離れた場所から見守る。
「そこじゃない。」
「もう一個奥……。」
心の中で実況が始まる。
「そうそう。」
「そのカバー外して。」
「あと一本。」
「惜しい!」
気づけば腕を組み、真剣な表情で見守っていた。
数分後。
店員が無事に修理を終える。
ゲーム機が正常に動き始めると、浜谷は誰よりも安心した表情になった。
「よかった。」
思わず小さく拍手する。
もちろん誰にも気付かれていない。
帰り道。
浜谷はコンビニでジュースを買い、公園のベンチに座った。
「休日なのになぁ。」
苦笑いする。
「ゲームで遊びに行ったはずなのに。」
気づけば景品の配置を見て、
メダルゲームを観察して、
エラーが出れば修理方法を考えていた。
完全に仕事モードだった。
「職業病だな。」
そうつぶやくと、自分でも笑ってしまう。
翌日。
阿佐野店。
細井が浜谷に聞く。
「昨日、休みだったよね?」
「何してたの?」
浜谷は少し照れながら答えた。
「ゲームセンター行ってました。」
「やっぱり!」
細井は笑う。
「ちゃんと遊んできた?」
浜谷は少し考える。
「半分遊びで……。」
「半分仕事でした。」
「どういうこと?」
「景品見たり、メダルゲーム見たり、エラー見つけて『直したい』って思ったり。」
細井はお腹を抱えて笑った。
「休みの日くらい仕事忘れなよ!」
浜谷も照れ笑いを浮かべる。
「無理でした。」
ゲームセンターが好きだから、この仕事を選んだ。
そして、この仕事が好きだから、休日でも自然とゲームセンターへ足が向く。
それは浜谷にとって、少し困った、でもどこか嬉しい職業病なのだった。