午後8時55分。
閉店まで、あと5分。
店内には「まもなく閉店です」というアナウンスが流れていた。
景品コーナーでは樋口が最後の景品整理。
古坂はレジ締め。
大澤はメダルコーナーを巡回している。
浜谷はメンテ室で工具を片付けていた。
「今日は平和だったなぁ。」
そう思った、その瞬間。
ピーピーピー!!
メダルコーナーから聞き慣れたエラー音が響いた。
「……。」
浜谷は天井を見上げる。
「最後の最後かぁ。」
苦笑いしながら工具箱を持つ。
「浜谷くん!」
大澤が呼ぶ。
「お願い!」
「行きます!」
エラーを起こしていたのは大型メダルゲーム。
画面にはエラーコードが表示されている。
「このコードなら……。」
浜谷はしゃがみ込み、カバーを開ける。
「たぶん詰まりですね。」
中を確認すると、案の定メダルがレールの途中で引っ掛かっていた。
「よし。」
慎重に取り除く。
リセット。
ウィーン……
正常に動き出した。
「終わりました!」
「ありがとう!」
大澤が笑顔になる。
その時だった。
ピーピーピー!!
今度は反対側からエラー音。
浜谷は固まる。
「……え?」
樋口が笑う。
「今日は浜谷くん大人気!」
「嬉しくないです!」
急いで二台目へ向かう。
今度はメダル切れによるエラー。
メダルを補充して無事復旧。
「よし!」
時計を見る。
午後8時58分。
「あと2分!」
その瞬間。
ガコン。
クレーンゲームが止まった。
浜谷は思わず笑ってしまう。
「今日は勘弁してくださいよ!」
古坂も笑う。
「閉店前に限って多いね。」
浜谷は急いでクレーンゲームへ。
エラー内容を確認する。
「センサーの誤検知か。」
リセットをかけ、動作確認。
アームは問題なく動いた。
「復旧しました!」
「助かったー!」
樋口が拍手する。
午後9時。
閉店。
店内には静けさが戻る。
工具を片付けながら浜谷は深く息をついた。
「最後の5分で三台……。」
「すごい記録ね。」
古坂が笑う。
「閉店まで我慢してたのかもね。」
大澤もうなずく。
「機械も『今日のうちに直してー!』って言ってたのかも。」
浜谷は苦笑い。
「だったら、もう少し早く言ってほしいです。」
その一言にスタッフ全員が笑った。
茂田も笑いながら近づいてくる。
「閉店前のエラーはゲームセンターあるあるニダ。」
「でも全部直して帰れると気持ちいいニダ。」
浜谷は工具箱を閉じる。
「そうですね。」
「明日来るお客様が気持ちよく遊べますから。」
茂田は満足そうにうなずいた。
「その気持ち、大事ニダ。」
営業が終わっても、ゲームセンターの仕事は終わらない。
明日もまた、お客様に楽しく遊んでもらうために。
浜谷たちの”閉店後のステージ”は、今日も静かに幕を閉じるのだった。