午後。
クレーンゲームコーナー。
古坂がインカムで浜谷を呼ぶ。
「浜谷くん。」
「ちょっといい?」
「はい!」
浜谷が向かうと、一台のクレーンゲームが止まっていた。
「またエラー。」
「また?」
「うん。」
「リセットしたら一回は動くんだけど、すぐにまた止まる。」
浜谷は扉を開け、中を確認する。
配線。
センサー。
コネクタ。
アーム。
目に見える異常はない。
「とりあえずリセットします。」
電源を入れ直し、動作確認。
ウィーン……
正常に動き始めた。
「直りました。」
そう言った数分後。
ピーピーピー!
また同じエラー。
「えぇ……。」
浜谷は急いで戻る。
今度は念入りに確認する。
アーム内の清掃。
配線も差し直す。
再び動作確認。
「これで……。」
しかし。
ピーピーピー!
また止まった。
浜谷は腕を組む。
「分からない……。」
古坂も首をかしげる。
「こんなに繰り返すの珍しいね。」
営業終了後。
浜谷は最後まで原因を探した。
説明書も読む。
エラー履歴も確認する。
それでも決定的な原因は見つからない。
「……すみません。」
浜谷は悔しそうに言った。
「原因が分かりません。」
古坂は少し考えたあと、優しく言う。
「生田さんに任せよう。」
その言葉に浜谷はうつむく。
「……はい。」
「悔しいです。」
古坂は笑顔で肩を軽く叩いた。
「全部一人で直せる人なんていないよ。」
「困ったら詳しい人に頼るのも仕事。」
浜谷は静かにうなずいた。
「お願いします。」
⸻
数日後。
生田の出勤日。
浜谷も気になって様子を見に行く。
「おはようございます。」
「おはよう。」
生田は問題のクレーンゲームを開け、工具を並べていた。
「このクレーンゲームだよね?」
「そうです。」
「何回も止まるって聞いてるよ。」
「見てみるね。」
「お願いします!」
浜谷は隣で見守る。
生田は配線を一本一本確認し、基板も点検する。
動作確認。
また分解。
再確認。
時間だけが過ぎていく。
「……。」
浜谷は驚いていた。
(生田さんでも……。)
普段なら次々と原因を見つける生田が、この日は何度も頭を悩ませていた。
ようやく原因を突き止め、部品を調整する。
再び電源を入れる。
ウィーン……
何度テストしても、もうエラーは出なかった。
生田は工具を片付けながら笑う。
「いやぁ。」
「今回は苦戦した。」
浜谷は目を丸くする。
「生田さんでもですか?」
「うん。」
「こういう機械は、たまに意地悪するからね。」
浜谷は少し肩の力が抜けた。
「僕だけじゃなかったんですね。」
生田は笑ってうなずく。
「直せなかったことより。」
「原因を諦めずに探したことが大事。」
「その積み重ねが経験になる。」
浜谷は大きくうなずいた。
「ありがとうございます。」
店を見渡す。
どんなに経験を積んだ人でも、苦戦する機械はある。
その姿を見て、浜谷は少しだけ前を向くことができた。
「次は、自分で直せるようになりたい。」
そう心に決め、浜谷は工具箱を静かに閉じた。