浜谷の一人暮らしの部屋。
今日は大学が昼までで、バイトは休みの日。
窓から差し込む昼下がりの日差しが、静かな部屋を照らしている。
昼ご飯も学食で食べ終え、久しぶりにのんびりした午後だった。
「今日はのんびりしよかな。」
そうつぶやき、座椅子に寝転がる。
テーブルの上には飲みかけのコーラ。
エアコンの涼しい風を浴びながら、浜谷はスマートフォンを手に取った。
何となくショート動画を開く。
好きな配信者の切り抜き動画。
好きなミュージシャンのライブ動画。
好きな芸人のネタ動画。
思わず笑ってしまうような動画まで、次々と流れていく。
「便利な時代やなぁ。」
浜谷は苦笑いする。
一本見ると、また一本。
気づけば1時間ほど経っていた。
その時だった。
おすすめ欄に見慣れた映像が流れてきた。
ゲームセンター。
クレーンゲーム。
「お!クレーンゲームやん。」
仕事でも毎日見ているのに、不思議と気になってしまう。
浜谷は動画を再生した。
最初は普通に遊んでいる動画だった。
「お、この取り方うまいな。」
景品の重心を狙い、一発で落とす。
「なるほど。」
「そういう使い方なんか。」
店員目線でも思わず感心してしまう。
しかし、次の動画で表情が変わった。
ガタガタガタッ!
プレイヤーがクレーンゲームの筐体を何度も揺らしている。
景品を動かそうとしているのだ。
「えぇ……。」
浜谷は思わず顔をしかめた。
「これはアカンやろ。」
画面越しでもヒヤヒヤする。
「壊れたらどうすんねやろ。」
思わず独り言が漏れる。
さらに次の動画。
プレイヤーはレバーを何度も回し、アームをグルングルンと回転させ始めた。
狙いは背面にある景品。
「それもアカンのよなぁ。」
浜谷はため息をつく。
実際、店でもたまに見かける遊び方だ。
勢いよく回しすぎると、アームや配線に負担がかかることもある。
もちろん、すぐに壊れるわけではない。
それでも、毎日何百回、何千回と動く機械だ。
一つひとつの負担が積み重なれば、故障につながることもある。
さらに別の動画。
景品取り出し口から腕を伸ばし、中を触ろうとしている人。
「それも危ないわ……。」
浜谷は思わず首を横に振る。
「取れへんからって、中に手を入れるのはアカン。」
別の動画では、レバーを必要以上に強く叩いている人までいた。
「レバーも優しく使ってあげてや……。」
思わず笑ってしまう。
「もう職業病やな。」
普通の人なら、「すごい取り方だな」で終わる動画も、浜谷には違って見える。
「あの機械、大丈夫なんかな。」
「エラー出えへんかな。」
そんなことばかり考えてしまう。
動画を閉じる。
静かになった部屋で、浜谷は麦茶を一口飲んだ。
「面白い動画もいっぱいあるけど。」
「真似しちゃいけない動画もあるんよな。」
ゲームセンターは、お客様みんなが楽しむ場所。
だからこそ、一人ひとりがルールを守ることが大切だ。
乱暴に扱えば機械は壊れる。
壊れれば遊べなくなる。
そして修理するのは店員たちだ。
阿佐野店で何度も工具を握ってきた浜谷だからこそ、その大変さがよく分かる。
「普通に遊ぶだけで十分楽しいんやけどな。」
そうつぶやいて、スマートフォンの画面を消す。
ソファから立ち上がり、窓の外を眺めた。
「さて。」
「明日も頑張ろかな。」
ゲームセンターには、明日もたくさんのお客様が来る。
みんなが気持ちよく遊べるように。
そして笑顔で帰ってもらえるように。
浜谷はそんなことを考えながら、静かな休日をゆっくり過ごすのだった。