休日。
浜谷は買い物ついでに、近くのゲームセンターへ立ち寄っていた。
「久しぶりに他のお店も見てみようかな。」
店内をゆっくり歩く。
クレーンゲーム。
メダルゲーム。
プリントシール機。
一通り店内を見て回る。
すると、あるクレーンゲームの前で足を止めた。
「……あれ?」
景品になっていたのは、ぬいぐるみでも、お菓子でもない。
ハンドソープだった。
「最近こういうの増えたなぁ。」
さらに隣を見る。
洗濯用洗剤。
ティッシュペーパー。
キッチンペーパー。
柔軟剤。
「完全に日用品コーナーだ。」
浜谷は思わず笑う。
「これなら取れたら普通に嬉しいな。」
一人暮らしを始めてからというもの、日用品のありがたさを身にしみて感じるようになっていた。
「ティッシュなんて何個あっても困らないし。」
「洗剤も使うし。」
「ハンドソープも絶対使う。」
学生だった頃なら、真っ先にぬいぐるみやお菓子へ向かっていた。
でも今は違う。
「大人になったなぁ。」
少しだけ笑いながら店をあとにした。
――数日後。
阿佐野店。
「おはようございます!」
いつものように出勤した浜谷は、開店準備のためクレーンコーナーへ向かう。
すると。
「あれ?」
見慣れない景品が並んでいた。
「……ハンドソープ?」
思わず二度見する。
その横には、詰め替え用のハンドソープまで並んでいる。
「本当に入ったんだ。」
ちょうど景品を並べていた茂田が笑う。
「気付いたニダ?」
「はい!」
「最近こういう景品人気あるんニダ。」
「そうなんですね。」
「お客様も『助かる』って言ってくれるし。」
「実用的だから喜ばれるニダ。」
浜谷は休日に見たゲームセンターを思い出した。
「この前、別のお店でも見ました。」
「やっぱり増えてるんですね。」
そこへ高村もやって来た。
「私はこういう景品好きだよ。」
「毎日使うし。」
「買わなくて済むなら助かる。」
浜谷は頷く。
「なるほど。」
続いて矢水もハンドソープを見ながら言う。
「私はティッシュかな。」
「気付いたらなくなってるんですよね。」
「あとキッチンペーパーも嬉しいです。」
「確かに。」
浜谷も笑う。
「一人暮らし始めてから、日用品ってありがたいなって思うようになりました。」
すると、近くで景品を並べていた大澤が一言。
「……洗剤。」
浜谷たちは一斉に大澤を見る。
「子どもいるから。」
それだけ言うと、大澤はまた黙って景品を並べ始めた。
高村が笑う。
「大澤さんらしい。」
矢水も頷く。
「洗剤はいくらあっても困りませんもんね。」
茂田は景品を見渡しながら言う。
「景品って、誰に喜んでもらうかを考えるのも大事なんニダ。」
「子ども向けだけじゃなくて。」
「大人が嬉しい景品も必要ニダ。」
浜谷はハンドソープを見つめながら頷いた。
「ゲームセンターって奥が深いですね。」
開店時間。
最初のお客様がハンドソープのクレーンゲームの前で立ち止まる。
「これ欲しい!」
その一言を聞いた浜谷は思わず笑顔になった。
ゲームセンターは、今日も少しずつ進化している。
景品が変われば、お客様の笑顔も変わる。
そんな新しい発見をしながら、浜谷は今日も店内を歩き始めるのだった。