一夏、織斑捨てたってよ   作:ダメオ

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先に言っておきます

すみませんでした


弾、サバイバルダンスするってよ

あのストーカー騒動から一週間後、一夏はゲームセンターにやって来て弾とゲームで遊んでいた。

 

 

「そう言えばよぉ一夏。お前彼女のこと放っといていいのか?」

 

「いや?正直セシリアや束姉と一緒にいたいよ?でもよ、今日はなんというか……嫌な予感がしてな。だから弾の所に来て、こうして遊んでるんだ」

 

「んなこと言っても、最近は平和だぜ?もうストーカーの連中見かけないし」

 

「そうならいいんだけどなぁ……」

 

「あんまそういうこと言うなよ。……てか、そろそろヤバいな」

 

「だな。補導される前に帰るか」

 

 

二人はゲームセンターから出た。

 

 

 

 

 

夜の暗闇の中、なんの前触れもなくストーカー兄が現れた。

 

 

「あ……どうも」

 

「ど、どうもッス」

 

 

弾は一夏の後ろに回って両手で尻をガードする。

 

 

「前は本当にすみませんでした……コレ、つまらない物ですが」

 

 

そう言ってストーカー兄はGO○○VAのチョコ詰め合わせを渡す。どうやら改めて謝罪に来た様だ。

 

 

「これはわざわざどうも」

 

 

一夏は弾の代わりにチョコを受け取る。

 

 

「本当は弟も謝罪に伺うべきだとは思ったのですが、何分、その……ケツを、痛めてまして」

 

「(ケツを痛めてケッ席ってか)

そうですか……」

 

 

恐らく初めて聞いたであろう欠席の理由に一夏は適当に相槌を打っておく。デッドはケツを痛める程にナニをしたのだろうか。実に解りたくない。

 

 

「本当に……すみませんでしたァ!」

 

 

ストーカー兄は突然土下座した。

 

 

「ちょ、いや、そんなんいいから!」

 

「いえ、本当にすみませんでしたァ!!」

 

 

更に土下座を強めるストーカー兄。一夏と弾は困り顔でストーカー兄の後頭部を見ていた。

 

 

「つきましては、弟も是非謝りたいと言ってますので、一度家に来てもらえないでしょうか!?」

 

「いやいや、反省してくれたなら、それでいいですよ」

 

「いえ、私も気が済みませんので……」

 

「いやいやいや」

 

「いやいやいやいや!」

 

 

一夏とストーカー兄がいやいや問答をし出した。なかなか折れないストーカー兄。すると、弾が意を決した表情で口を開いた。

 

 

「……行くか」

 

「えー……マジで?」

 

「だってラチ明かないだろこれじゃあ。それに、この人もこんなに反省してるなら大丈夫だって」

 

 

一夏は弾の言葉を聞いて考える。この土下座しているストーカー兄を退かすには、それが一番楽な方法だろうと。

 

 

「……仕方ない、か」

 

 

二人は満面の笑みを浮かべているストーカー兄と共にかつての魔窟へと向かった。

 

 

 

 

 

魔窟のリビングに入ると、ストーカー弟が土下座で二人を出迎えた。だが、尻が少々上がっている。まるでクラウチングスタートのように。どうやらデッドに手酷くヤられたようだ。

 

 

「ほ、本当にすみませんでした……!」

 

「いや、まあ、反省してくれたならそれでいいッスから……頭上げてください」

 

「許してくれるんですか!?」

 

 

ストーカー弟は頭を上げて弾の手を握る。

 

 

「いや、まあね。うん、ね?」

 

 

弾はストーカー弟から手を放そうとするが離れない。ガッチリとホールドされている。

 

 

「僕達、デッドさんに指導(意味深)されて『目が覚めまして』……」

 

「(『目覚めまして』じゃね?)」

 

「デッドさんが言ってたんです。ストーカーなんて女々しいマネしないで当たって砕けろって……ね」

 

 

ストーカー兄がじりじりと弾との距離を詰める。一夏はなにやら良からぬ雰囲気を察し、さりげなく弾から離れる。

 

 

「ア、アァー、ソウッスカー。ジャア、オレタチハコレデ……」

 

 

弾もこのデンジャラスなスメルを感じたのか、棒読みで言いながら帰ろうとする。だが、ストーカー弟は一向に手を放さない。すると、ストーカー兄は何か決心を固めた表情で弾の正面にやって来る。

 

 

「兄さん、ファイトッ!」

 

 

さながら女子高生特有のウザいノリで後押しするストーカー弟。完全に告白の流れの中、ストーカー兄は深呼吸をしてから自分の胸に手を置いて弾に熱い眼差しを向ける。想像して欲しい。ガチムチ強面のプロレスラーが乙女的なアクションで目の前にいるのを。正直恐怖である。

 

 

「ですから、その、弾さん!僕と……、僕と!付き合ってもらえないでしょうか!?」

 

「(コイツもう根本的にダメだ)」

 

 

なんの根拠と勝算があるのか解らないが、ストーカー兄は自信ありげに言う。

 

 

「無理無理無理!」

 

 

弾は当然即答した。だが、ストーカー兄は引き下がらない。

 

 

「そこをなんとか!」

 

 

この状況で告白したストーカー兄の度胸には、磨けば光る何かを感じた。だが、上手くいくはずはない。

 

 

「いやマジ無理だって!俺ホモじゃねぇし!!」

 

 

弾の言葉にストーカー兄はショックを受けている。何故かは解らない。

 

 

「そうですか……わかりました」

 

 

意外にも物解りが良いストーカー兄は言う。

 

 

 

 

 

そう言いながら、弾との距離をじりじりと詰め続けている。一夏は本日感じた嫌な予感の根源をここに見た。

 

 

「でしたら……一度だけ!思い出(意味深)を下さいッ!!」

 

 

まるで昭和のドラマのような台詞を言い、ストーカー兄は弾に襲いかかった!

 

 

「うおおおぉおッ!!?」

 

「好きです!」

 

「俺も好きです!!」

 

 

続いてストーカー弟も弾に襲いかかる!

 

 

「弾さん!さあ、こちらに!」

 

 

ストーカー兄は弾の襟首を掴み、魔窟最深部(寝室)に引きずり込もうとする。

 

 

「はわわわわァオ!!!?」

 

 

ホモブラザーズに引きずられ、弾は思わずはわわ軍師のようになる。一夏は目の前のホモブラザーズの気迫を肌で感じ、すぐさま行動に移る。

 

 

「弾!

(マジガンバッ!!)」

 

 

心で叫び、一夏は弾の救出を諦めて魔窟から脱出した。銀の福音相手に素手で無双出来る一夏も貞操の危機に対しては人並の恐怖を抱く。実に利口(クレバー)な判断である。

 

 

「ハァ、危ねぇところだったぜ……」

 

 

一夏はさながら一仕事終えたような顔立ちで空を見上げると、満天の星が輝いていた。綺麗だ。

 

 

「ローション…………ケツに垂ら…………一気…………」

 

 

魔窟の中から聞こえてくる呪文は聞こえないことにして、一夏は一人天体観測に精を出している。見事な現実逃避である。すると、一夏の携帯が鳴り響く。携帯を取り出し、電話に出る。

 

 

「もしもし」

 

『こんばんは、一夏さん』

 

 

電話の相手は蘭だった。

 

 

『お兄が電話出ないんです。一夏さん、知ってます?』

 

「ん?あ、あぁ、大丈夫。俺今、一緒だから。そろそろ帰るように言っておくから。じゃ!」

 

 

一夏は半ば強引に通話を終えた。

 

 

「……明日になってケツに大根突き刺さった弾の遺体が発見されたら嫌だし、一丁行くか!

(既に菊門の初めては散ったかも知れないが)」

 

 

一夏は物騒なことを言い、考えながらもさながら勇者のように魔窟に入っていった。すると、リビングの奥から声が聞こえた。

 

 

 

 

 

「ヒィ!ヒイィイイイ!ヒィイイイイィイッ!!」

 

 

 

 

 

それは、五反田弾の声だった。

 

 

 

 

 

「(ヤベェ!既にヒィヒィ言わされてる!?手遅れか!!?)」

 

 

一夏は慌てるも気付かれないよう、静かにリビングの中を伺う。

 

 

「ヒイイイ!!ヒイイイイ!!」

 

 

そこには、一糸纏わぬ産まれたままの姿で半泣き状態でゴボウを神主が如く振り回す一夏の親友五反田弾と、その隙を突いてじわりじわりと距離を詰めようとしているホモブラザーズがいた。

 

 

「(どういう状況?カバディでもやってんの?)」

 

 

一夏は弾の奮闘を見守りながらリビング内を見回す。散乱したおとなのおもちゃ、ローション、棒状の野菜。それを見て一夏は察した。

 

 

「(成程……ホモブラザーズがゴボウを突っ込もうとしたら、弾がそれを奪って反撃したって訳か。うん!超意味不明!)」

 

 

一夏は考えながら弾を見つめる。

 

 

「ウオォォオオオ!!?ウオウォオウゥッ!!!!」

 

 

ホモブラザーズのどちらかが近づこうとすると、ゴボウを振り回しながら原人語で威嚇する弾。盤面は膠着状態だ。

 

 

「(……イェイェイェイェイェイ)」

 

「ウォウオウォーッ!!!?」

 

「(チョーウケんですけど)」

 

 

腹を抱えて肩を震わせ、音無く笑う一夏。親友の危機に対して、あまりにもあんまりな対応である。

 

 

「ウオォ!?ウオォーッ!!!!」

 

「(あっ、気付いた。往くっきゃねぇな!!)」

 

 

弾が一夏の存在に気付き、叫び声を上げる。日本語は喋れない模様。一夏は即座にリビングに飛び込み、ホモブラザーズが反応する前にテーブルに置いてあったファ○○ーズを取る。

 

 

「殴ると暴行罪になるから、ファブってやらぁ!」

 

 

誠に今更感が否めない台詞を吐きながら一夏は振り向くホモブラザーズの顔面にファブリ○○を噴射(シュッシュ)する。

 

 

「キャアッ!!」

 

「イヤアッ!!」

 

 

被害者のような悲鳴を上げ、仰け反る加害者二人。

 

 

「弾、こっちだ!」

 

 

一夏の言葉を聞き、自分の服を持って走り出す弾。

 

 

「チクショーがぁ!!」

 

 

ストーカー兄は片手で目を押さえながら破れかぶれで片手を振り回す。

 

 

「ーーーヒャオォーッ!!!!?」

 

 

なんということでしょう。

 

一振りの刀と化したストーカー兄のライトハンドが、弾の露わとなった臀部の割れ目に突き刺さってしまった。だが、弾の足は止まらず、一夏と共に魔窟を脱出した。

 

 

「ウォオウオォォオーッ!!!!」

 

 

余程怖かったのか、涙を流しながら下着を履き、叫ぶ弾。

 

 

「(そこらのヤンキー五人に囲まれても無傷で立ち回れる弾をここまで恐怖のズンドコ(氷○○よし)に追い詰めるとは……ホモ、恐るべし)」

 

 

一夏は泣いている弾を尻目に考えていた。その後、深く傷付いた弾を五反田食堂に送り、一夏も家に帰る。そして、本日のことをデッドに報告した。

 

 

「なぁ〜にぃ〜!!?あのホモブロスめぇ!!よくもオレの弾くんを傷物にしようとしてくれたなオルァ!!」

 

「傷物にはなってないしお前のじゃないし」

 

「ホモブロス、ゆ゙る゙ざん゙!!最早フィストの刑では済゙ま゙ざん゙!!」

 

 

デッドはふざけたことをほざきながらボルテージを上げ、リビングから飛び出していった。

 

 

「…… さて、と!もう眠ろう!」

 

 

一夏は本日の出来事を頭の中からデリートし、自分の部屋へと行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一夏は学園に行く準備をしている最中にデッドが帰ってきた。

 

 

「朝帰りかよデッド。今までナニしてたんだ?」

 

「ちょっとハードにキメてホモブロスを県外追放してきた」

 

「そこまでヤるかねぇ」

 

「ヤる必要アリアリアリーヴェデルチだよ!!なんてったってオレの弾くんに手をつけようとしたんだからな!」

 

「もうツッコまねぇからな」

 

 

一夏はソウルスチールTシャツを着ながら吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、五反田食堂にて。弾と蘭が朝食を摂っていた。

 

 

「お兄……どうかした?」

 

「な、ナニが?」

 

「だって、きんぴらごぼう残してるし。普段なら完食するのにそれだけ残して……昨日なにかあったの?」

 

「いや!なにもない!なにもなかった!!」

 

 

弾は己に言い聞かせるように言いながらきんぴらごぼうを見つめる。ごぼうと人参で作られた五反田食堂特製きんぴらごぼうはごぼうや人参嫌いにも食べれる絶品。だが、現在の五反田弾は食べられなかった。棒状の野菜を見る度に、ごぼうを持ったホモブラザーズが頭を過るようになってしまったのだ。俗に言うトラウマである。

 

 

「……ご馳走様。そして行ってきます!」

 

「ちょ、お兄!」

 

 

弾は逃げるように五反田食堂から出て走っていった。その姿はまるで、ナニか怖いモノから逃げている弱者のようであった。

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