一夏、織斑捨てたってよ   作:ダメオ

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皆様お久しぶりです。

スランプが続き
ネタが思い浮かばない中
なんとかひり出すことが出来ました。

今回もどうかチラ見してやって下さい


秋彦、思い出が出来たってよ

IS学園のアリーナにて一人の少年がいた。少年の名は、織斑秋彦。あの織斑千冬の実弟であり、駁羅一夏のかつての実兄である。

 

 

「よし……始めるか」

 

 

秋彦はISスーツのみを身に纏った状態で自身の専用機である『白式』を展開する。だが、現れたのは白式の唯一の武装である近接ブレー ド『雪片弐型』のみ。秋彦はそれを素手で持って一人振るう。ただひたすらにブレードを振るい続ける。息が切らそうと動きを止めず、一切の衰えを見せず、何分も振るい続ける。その目付きと太刀筋は鋭く、何もない空間に『敵』を見ていた。

 

 

「ッ!!」

 

 

秋彦は『敵』の胴目掛けて横一閃に雪片弐型を振るう。だが、その刃は胴を斬り裂くことなく空を切る。そこを見逃さず、『敵』は秋彦の顔面に右の拳を叩き込んだ。

 

 

「……クソッ」

 

 

だが所詮『敵』は秋彦がイメージしたモノ。実際には斬れることもなければ殴られることもない。しかし、これがもし実戦であれば秋彦は先程の拳で確実に顔を潰されていただろう。そう考える秋彦は、己の弱さに苛立ちを覚えた。

 

 

「……今日はここまでにするか」

 

 

秋彦は雪片弐型を仕舞い、更衣室に向かう。その表情は実に暗かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハァ」

 

 

そして一年寮の部屋にて、秋彦はベッドに寝転がって溜め息を吐く。ただひたすらに己を鍛える日々を送っているが、成長を感じられない。一向に目標に近付けないことに歯痒さを感じていた。

 

 

「……もし、ここに箒がいたら気休めにはなったかも知れないな」

 

 

秋彦は一人呟いた。何の根拠も無かろうと、褒められるのは嬉しかった。だが、今ではその存在はいない。

 

 

「……休み、か」

 

 

秋彦はカレンダーを横目で見つめながら口を開くと、ゆっくりと身体を起こす。

 

 

「(思えば……、小さい頃から勉強ばっかりしていてあまり遊んだことが無かったな。街のことも、よく分からない)」

 

 

秋彦は考えた後に、ベッドから降りてTシャツを脱ぎ捨てる。

 

 

「(……気晴らしに、外に出ようかな)」

 

 

思い立ったが吉日。秋彦は即行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……人が一杯だな」

 

 

秋彦は外出許可をとり、IS学園の制服に身を包んで街中で立っていた。あまり外出をしないタイプの秋彦は必要最低限の部屋着しか持っておらず、唯一外で着ていても恥ずかしくないのはIS学園の制服のみだった。全く寂しい十五歳である。

 

 

「……とりあえず歩くか」

 

 

秋彦はゆっくりと歩き出す。人が多い中で全身真っ白の制服は良くも悪くも目立っていた。

 

 

「(あまり歩かないからなんだか新鮮だな)」

 

 

周りの視線を気にせずに秋彦は歩いている。探検気分で人混みから外れた場所を歩き、ふと見つけた裏路地に入っていく。

 

路地を抜けるとそこは先程の騒がしさの無い雰囲気が暗い場所だった。

 

 

「……場所によってこんなに変わるものなのか」

 

 

秋彦は辺りを見渡しながら歩く。表側よりは少ないが、ちらほらと人はいた。だが、誰も彼もがみすぼらしい格好をしている。秋彦は黙って歩いていると、右手に広い公園があった。公園の前で立ち止まった秋彦の視界に広がったのは、ダンボールとブルーシートで作った数々の家。そして、三〜四人で集まって会話をしている者、鳩に餌を与えている者、昼間から酒を飲んでいる者等々多数の人間がいた。

 

 

「ここは……ホームレスの溜まり場か」

 

「ーーーそうザンスよ」

 

「ッ!?」

 

 

背後から声をかけられ、秋彦は間合を離しつつ振り向く。そこにいたのは、肩まで伸びた茶髪の端麗な容姿を持つ男。男は細く鋭い三白眼で秋彦を見つめている。

 

黒いタンクトップとワインレッドのハーフパンツにサンダルという実に涼しげな服装とニヤリと笑みを浮かべている口元のせいか雰囲気が怪しい。

 

 

「……どちら様でしょうか?

(なんというか……不気味な奴だな)」

 

「オレはこの辺りのホームレスさんのお知り合い。休みの時はちょくちょくここに来てるのさ」

 

 

男は笑みを崩さずに言い、右手に持つレジ袋を揺らす。

 

 

「キミは何故にここに来たん?」

 

「歩いていたらここに……」

 

「歩いててここに着くってのは珍しいねぇ。ま!これもなにかの縁っつーことで、キミも来なよ!」

 

「は、はぁ……」

 

 

秋彦は男についていく形で公園の奥へと歩いていき、男は一人のホームレスの下に歩み寄っていく。ホームレスは三十代程の男で、奇抜な色の薄汚れたニット帽を被っている。

 

 

「チィーッス。お酒持ってきたよん!」

 

「おぉ、デッチャン!毎度どうもね!……ん?後ろの少年はどちらさんだい?」

 

「散歩してたらここに来たんだとさ」

 

「初めまして……。

(やはりホームレスなだけあって臭いがキツいが……次第に慣れるか)」

 

 

秋彦は嫌な顔一つせずに社交辞令として軽く自己紹介し、一礼する。秋彦は表面『は』良い子なのだ。

 

 

「おう、初めまして。オラのことはニットとでも呼んでくれ」

 

「ニット、ですか?」

 

「あぁ、名前は何年も前に捨てたしな」

 

「(……やはりそれ相応の事情があるんだな)

分かりました、ニットさん」

 

「キミも、良ければ飲むかい?」

 

 

秋彦とニットが会話していた最中、デッチャンと呼ばれた男は袋から缶ジュースを取り出し、秋彦に差し出す。

 

 

「(……折角の好意だ。遠慮せず受け取っておこうか)

……頂きます」

 

 

秋彦はデッチャンから缶ジュースを受け取る。それからデッチャンはニットにも缶ビールを渡し、二人は真っ昼間から酒を飲み始め、それを尻目に秋彦はジュースを飲んだ。

 

 

「カァーッ!真っ昼間から飲む酒は美味ぇなぁ〜!!」

 

「オラはあまり飲む機会無いからいつだって美味いねぇ」

 

「(修学旅行で一夏と姉さんと飲んだなぁ……あの時は、素直に楽しかった)」

 

 

秋彦は数日前の思い出を振り返りながらジュースを飲む。長年出来損ないと蔑んだ弟の本心を聞き、自身も本心を吐き出したあの夜は、今の秋彦にとって数少ない思い出となっていた。それから秋彦は少しだが変わった。かつては自分より劣っている者は心の内で見下していたが、今はその者達を理解しようと心掛けた。現在ホームレスと共にいるのが証拠である。かつての秋彦ならホームレスに近付きもしなかった。

 

 

「……ニットさん。ふと気になったのですが、生計はどうやって立てているのですか?」

 

「ここら辺りのゴミを拾って売ってるんだ。ここらは若人の溜まり場でかなりの頻度でポイ捨てがあるから食い扶持は余裕で稼げる。それにオラはこの街に食わしてもらってるようなものだからな。オラに出来る限りは綺麗に掃除してく。金にならなくてもな」

 

「(……この辺りが綺麗なのは、彼等のお陰ということか。そう考えると、ホームレスも捨てたものじゃないな)」

 

 

 

 

 

「ーーーオイ!見つかったぞ!!」

 

 

 

 

 

物思いに耽っている秋彦の耳に叫び声が飛び込んだ。デッチャンとニットも立ち上がり、声の方を見る。

 

 

「や、止めろぉ!!」

 

「ぎゃあぁぁぁあぁっ!!」

 

「オレらがなにしたって言うんだよぉ!!ぐあっ、ぎゃあッ!!!」

 

「ひっ、ひいぃ、頼む、助けて……!!」

 

 

公園に響き渡る悲鳴。秋彦が声の方を見ると、血塗れのホームレスが一人こちらに歩いてくる。

 

 

「ーーー逃げんなゴミが!!」

 

 

声と鈍い音が響く。ホームレスは頭から血を流し、倒れる。その背後には金属バットを持った今風のヤンキーが立っていた。それから更に三人、こちらに歩いてくる。合計四人の内一人は金属バットを持ち、二人は木刀を持っていた。

 

 

「なんなのよこの物騒カルテットは?」

 

「コイツ等、ホームレス狩りだ……!」

 

「(……頭の足りない馬鹿共か)」

 

 

デッチャンの問いにニットが答え、それを聞くと秋彦は実にシンプルに考え、ヤンキー四人組を睨む。

 

 

「おっ、もう一匹はっけ〜ん!」

 

「アレ?脇の二人はなんか違くね?」

 

「いぃや、ここのゴミ共と一緒にいんだからコイツ等もゴミっしょ!」

 

「それもそうだな。てか、ゴミ共より金持ってそうだから金の成るゴミってか?」

 

「おっ、コイツ超上手ぇこと言うじゃん!」

 

 

ヤンキー共の会話が耳に入る毎に秋彦の眉間に皺が寄る。屑が他者を屑と見下す。秋彦が感じたものは『同族嫌悪』だった。己の才能に溺れ、他者の表面上だけを見て蔑む。その他者は実は自分より優れていることに気付かずに。

 

 

「(……コイツ等はかつての僕と同じだ)」

 

 

秋彦はヤンキー共を見据えたまま歩み寄り、集団の前に立つ。

 

 

「あ?なにコイツ?やる気?」

 

「お前達に聞きたいことがある。なんでここのホームレス達を襲った?理由を述べろ」

 

 

秋彦は問いかける。それを聞いたヤンキー達は一斉に笑い出す。

 

 

「理由?ゴミ掃除だよ、ゴミ掃除!」

 

「そうそう!社会の役に立たないゴミを俺等が掃除してんの!」

 

「ま、ボク達ゼンリョーな若者だからぁ!ぎゃははは!」

 

「じゃあ俺からもしつも〜ん!なんでお前と後ろのヤツはゴミ共と一緒にいんの?リユーをのべろ!」

 

「まぁ?理由を述べた所で?お掃除するのは変わりないんですケド〜!」

 

 

ヤンキー達の言葉を聞いていると、秋彦の右手が握り拳となる。そこに、一人のヤンキーがバットを構えて走り出す。

 

 

「もう我慢出来ねぇ!脳みそブチまけろぉ!!」

 

 

秋彦にバットで殴りかかるヤンキー。フルスイングされたバットは秋彦の頭を捉えることなく空を切る。ヤンキーは渾身のフルスイングを避けられ、よろける。

 

 

「アラ?ミスっーーーぐぇっ」

 

 

今まで脳漿をブチまける勢いでかましてきたフルスイングを避けられ、驚くヤンキーだったが喋っている途中に声が出なくなる。

 

背後に回った秋彦の右腕がヤンキーの首を締め付けて左腕で頭をホールドし、喉を絞めながら気管を塞いだからだ。

 

 

「っひ、ぎぃ……っ!!?」

 

 

呼吸が出来ずにもがくヤンキーに見下すような視線を送り、そのまま首を極めにかかる。ぐきっ、と首から鳴ってはいけない骨の音が響いてヤンキーは白目をむき、失神する。秋彦は抵抗を止めたヤンキーを無造作に放る。口から泡を吹いて倒れているヤンキーの顔面を踏み付け、秋彦は残りの三人を睨む。

 

 

「ゴミ掃除か……いい理由だな。僕も手伝うよ。僕は目の前にある『社会の役に立たない生ゴミ』を三個程掃除するとしよう」

 

「んだとテメェ!!」

 

「チョーシこいてんじゃねぇぞ!!」

 

「マジやんぞゴラァ!!」

 

 

秋彦の言動に激昂したヤンキー達は御約束の言葉を口々に言う。秋彦はそれを無視して振り返る。

 

 

「デッチャンさん、ニットさん。逃げて下さい。僕一人で充分ですから」

 

「OKだ。キミの腕前、信用しよう。ホラ、ニット。行くよ?」

 

「お、おう」

 

 

デッチャンとニットが去っていくのを確認してから秋彦はヤンキー達を見据える。

 

 

「……本当に絵に描いたような不良(ボケ)だ。ある意味尊敬する。その能天気さ、僕も欲しかった」

 

「このヤロー!!」

 

 

秋彦の挑発で頭に血が上った一人が木刀で殴りかかる。だが、秋彦には当たらない。

 

 

「木刀はそんな風に振り回す物じゃあない。木の棒同然の扱いを受けて、その木刀が可哀想だ」

 

「うるっせぇんだよオラァ!!」

 

 

秋彦は回避しながら言う。ヤンキーが更に怒り、木刀を両手で持って頭目掛けて振り降ろす。その瞬間に懐に入り、木刀を持つ腕を左手と右腕で受け止める。

 

 

「でぇいッ!」

 

「がぁはっ!!」

 

 

そして、ヤンキーの腕を掴んで一本背負いを決める。本来の柔道とは異なり、腕を放す投げっぱなし式の為危険極まりない。

 

 

「隙ありぃ!!」

 

 

そこに背後から木刀を振り下ろすヤンキー。秋彦は背後を見ずに両手で木刀を挟み、受け止める。真剣白刃取りである。

 

 

「ちょっ、マジかよ!?」

 

「ふんっ!」

 

「いでぇっ!」

 

 

そこから秋彦は振り返りながら横に捻り、ヤンキーの手から木刀を奪う。それから振り返った勢いのまま柄の部分でヤンキーの側頭部を叩く。ヤンキーは叩かれた側頭部を押さえ、蹲る。秋彦はそれを見下ろしながら木刀の柄を掴み、無防備な頭に振り下ろす。直撃したヤンキーは意識を手放し、それを確認した秋彦は残り一人のヤンキーを見る。

 

 

「テ、テメェ、チョーシこきやがってぇ……!」

 

 

最後のヤンキーはポケットからバタフライナイフを取り出し、グリップを開いて刃を出す。

 

 

「……そっちがそう出るなら、こっちも容赦出来ないぞ」

 

 

秋彦は両手で木刀を握り、中段の構えを取る。

 

 

「うっせぇ!ぶっ殺してやるッ!!」

 

 

ヤンキーは走りながらナイフを振り回す。明らかなリーチの差すら理解せず、刃物を振り回すヤンキーを見下すように見つめながら秋彦はナイフを持った右手首に全力の小手打ちを見舞う

 

 

「いっってぇッ!」

 

 

手首が折れ、ナイフを落として右手を押さえるヤンキー。秋彦は木刀を逆手に持ち替えて更に間合を詰め、落ちたナイフを踏みながら柄を腹部に叩き込んだ。

 

 

「ぐへぇ、ぶふっうえぇっ!」

 

 

ヤンキーは腹部を押さえ、蹲りながら胃液を逆流させて吐き出す。秋彦は踏んでいるナイフを無造作に蹴り飛ばし、木刀をそこらに放る。

 

 

「なっ、なんで、こんなことに……いつもなら、相手がボコボコになるのにぃ……!チクショウ……!ふざっけんなよぉ……!!」

 

「その様子だと痛い目に遭ったことがないようだな。それなのに、人に木刀とバット、挙句にナイフを振り回しておいて自分がやられたらそれか……ふざけているな、お前」

 

 

眉間に皺を寄せ、秋彦はそのヤンキーの胸倉を掴んで無理矢理立たせる。

 

 

「テッ、テメェ……離せよ!このバカッ!」

 

 

圧倒的不利な状況の中ヤンキーが生意気な口を叩くが、秋彦に睨まれ萎縮する。

 

 

「それよりまず言うべきことがあるだろ」

 

「……わ、わかったよ!悪かった!マジ、悪かったって!」

 

「それが謝る者の態度か……?ふざけるなッ!!」

 

 

秋彦の右拳が唸り、ヤンキーを殴り飛ばして木に叩きつける。ヤンキーは木に寄りかかるように座り込み、そのまま意識を失った。

 

 

「ヒュ〜!」

 

 

背後から口笛と拍手が響く。振り向く秋彦の視界に、先程ニットと共に逃げた筈のデッチャンが笑顔で拍手をしていた。

 

 

「いやぁいや、なかなか強いじゃん!やるねぇ、織斑秋彦クン!」

 

「……何故僕の事を知っている?」

 

 

秋彦は木刀を順手に持ち替えてデッチャンを睨む。名乗っていないのに目の前の初対面の男は秋彦を知っている。警戒するに越したことはない。

 

 

「キミの弟から話を聞いたから」

 

「……一夏の知り合いか」

 

「ノンノンノン!オレはデッド・ウォルノックスだよ?知り合いというよりファミリィさ」

 

「一夏の……今の家族」

 

 

デッドの少々意味不明な言葉を聞いた後に秋彦は木刀をそこらに捨ててから少し考え、口を開く。

 

 

「……お礼を、言わせて下さい」

 

「何に対してのお礼だい?」

 

「新たな目標を見つけたことに対する礼です」

 

「新たな目標って……駁羅一夏のこと?」

 

「はい。アイツは『あの日』……第二回モンド・グロッソの時に誘拐された日から、一度も家に帰ることなく織斑の姓を捨て、僕と姉さんと縁を切った。それから、僕はIS学園で一夏と再会した。そしたら、アイツは出来損ないじゃなくなっていて。僕はおろか姉さんすらも越えていた。……生意気だと思ったが、嬉しかった。織斑千冬は確かに偉大だが僕は天才だ。自分の持つ力を理解した上で、僕は近い将来姉さんを越えることは目に見えていた。だから、本当に手が届かない遥か高みにある目標が欲しかった。いっそ清々しさすら感じる程に高く遠い所にある目標が……。そして、それが今の僕にはある。だから、僕の目標である駁羅一夏の家族に礼を言いたかった」

 

 

秋彦は長々と語る。驕りがあるとは言え嘘偽りの無い天才としての力を持つ秋彦は、今の一夏の背を追うことで己の願いを叶えることが出来た。

 

 

「そうかい……天才様のお眼鏡に適うようにいっちゃん君を鍛えられたなら本望っちゃ本望よん」

 

「それと……一夏は、織斑の家で笑ったことが無かった。でも今は、IS学園で毎日笑顔で過ごしている。……出来損ないとは言え血の繋がった家族が笑わないのは、とても寂しかった。だから……そのことでも、礼を言わせて下さい」

 

「…………」

 

「デッド・ウォルノックスさん。一夏を鍛えてくれて、一夏に笑顔を与えてくれて、ありがとうございます!」

 

 

秋彦は深く頭を下げる。彼が頭を下げると言うのは、一夏ですら無理と言わしめた程のことだ。

 

 

「……どう致しまして。その言葉、家族にも伝えさせてもらうよ」

 

「あ、そうだ!くれぐれも、一夏には秘密にしておいて下さい」

 

「OKOK!男同士の御約束ってね!んじゃ、オレは帰るよ!バイビ〜!」

 

 

そう言ってデッドは笑顔でその場を立ち去った。秋彦は満足気にそれを見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーー死ねぇ!!」

 

 

そこに響く声を聞き、秋彦は振り向く。先程背負い投げで倒した二人目のヤンキーの一人がナイフを持って秋彦の懐へと突撃してきたのだ。完全に油断していた秋彦の身体は動くこと叶わず、そのヤンキーの刺突撃を、只そこに立って受けるしかなかった。

 

 

「ーーーぐえぇッ!!」

 

 

秋彦の目の前で声が響き、ヤンキーが吹き飛んだ。秋彦の脳は目の前で起きた出来事に追いつけなかった。

 

自身に間も無くナイフを刺したであろうヤンキー。それが、六歩分程離れた場所にある木に叩きつけられていたのだから。

 

 

「声聞いてからキック余裕!ハハッ」

 

 

いつの間にやら秋彦の隣に立っていた男。

 

デッド・ウォルノックスはそう言い笑った。

 

 

 

 

「……あ、ありがとうございます」

 

「油断はメッ!だよぉ?さ、キミも帰りな!コイツ等はオレが片付けとくからさ!」

 

 

デッドは叩きつけられたショックで再び気を失ったヤンキーの首根っこを掴みながら言った。

 

 

「分かりました……」

 

「暇な時はまた遊びに来なよ?ジュースの一本は奢ったげるからさ」

 

「……分かりました。では、また」

 

 

秋彦は微笑みを浮かべ、公園を出た。今日の出来事は己の糧となり、思い出となる。そう考える秋彦の足取りは、実に軽いものであった。




気に入って頂けたならこれ幸いです

それと、誰か。

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