ようこそ未知を探求する教室へ   作:叙述トリッピー

11 / 34
page.11 類友

 

竜崎正の独白。

 

 

「久しぶりですね、皆さん」

 

 私は一回目の時間と同じ場所に座っていた。

クラス毎に分かれている光景はこの学校のクラス間の溝を現していた。

 

だが、今この瞬間だけは違う。

この場のBクラスの人間以外が苦しそうに顔を歪めているのだから。

皮肉にも全てのクラスの意見は初めて同じになった、そしてその原因である話し合いの結果は明白だった。

 

「結論は決まりましたか?」

 

私は彼らを真っすぐ見て告げた。彼らを死刑台へと送る準備はもう出来ていた。

 

「…えぇ、そうね。私たちDクラスは貴方の提案を飲むわ」

 

「…俺たちAクラスも同様だ」

 

 Aクラス、Dクラスは打開策を見つけられなかったようだ。

ここまでは予定通りだった、唯一気が付くであろう彼も今回は様子見らしい。無人島で忠告はしたはずだが、表立って行動するかはまだ決め切れていないらしい。

 

「そうですか。では龍園君は?」

 

「…いいぜ」

 

「成程、もう少し足掻くと思っていました」

 

そして関門であるCクラスもクリア。

龍園翔はその煽りに不快そうな唸り声を上げる事しか出来なかった。

 

「足掻く必要性もないわ。結果1で終わらせることは私たちにも利益がある」

 

「へえ。言い訳ですか?」

 

「違うな、竜崎。お前が何を考えているか分からないが、優待者が分かっているならば結果3を狙うべきだった」

 

「……」

 

「裏切り者の存在、本当は嘘なんじゃないかしら?」

 

 分かりやすい罠だった。

優待者を本当に知っているのかという確認の意図があった。

ただ、仮に嘘だったとしても意味がない。彼らにとって結果3ではないという安心できる材料があったのだ。

何を言おうと契約は締結される。

 

「分かりやすいですね、私から裏切り者の情報を引き出そうとしている」

 

「…違うわ」

 

「嘘ならもう少し努力をしてください。露骨すぎです」

 

ただ、分からない愚者を演じる必要はない。

策を見破れたと堂々と言う事に躊躇いは無かった。

彼女はきっと私の言葉を鵜吞みにはしない、そう言いたいのだろう。

しかし、私は知っている、船内を駆け回る彼らの姿を。無謀な虚勢だった。

 

「なら本当の事を言えば教えてくれるのかしら?」

 

「そうですね。ならお手伝いしましょうか?熱心に探していらっしゃるので」

 

「…それは冗談かしら?」

 

「さぁ、どうでしょうか」

 

険しい表情を浮かべる彼らを後ろに、私は隣に座る神崎隆二に目配せをした。

彼は私からの合図に頷くと、席を立ち一枚の紙を机の中心に置いた。

 

「では、ここに契約書を持ってきました。確認をしてください」

 

 

『特別試験契約書』

Aクラス、Bクラス、Cクラス、Dクラスは特別試験の結果に関して契約を締結する。 

 

 第1条:契約期間は、本試験(船上特別試験)終了までとする。

 

 第2条:今回の特別試験において、現在残っている全てのクラスは結果1とする。(現在とは試験開始日8月10日午後8時を示す)

 

 第3条:この試験において、以降優待者の解答を禁じる。

もし裏切りやそれに準ずる行為をした場合、該当クラスに対して3000万ppの罰金を科す。

 

 第4条:この契約に署名した者は上記の契約に同意したと見なす。

 

 

「では皆さん、改めて。この契約書を承諾しますか?」

 

「Aクラスは承諾する」

 

「Cもするぜ」

 

「私たちDクラスもするわ」

 

 書かれた契約内容を各クラスの代表者が確認したのち、承認された。これで全てのクラスが署名した。

 

「では皆さん、特別試験お疲れさまでした」

 

 あっさりとした幕切れだった。だが、彼らにも利があるのだから当然だった。

全て結果3で終わらせることも出来たが、これ以上要らぬ敵対心を煽る必要はない。共通の敵にもなる必要が無かった。

 

「それにしても危なかったですね。猿グループを高円寺くんが終わらせたらしいじゃないですか?」

 

「あはは、そうだね。あと少し終わらせるのが遅かったらペナルティだったよ」

 

「Dクラスは随分と幸運ですね」

 

 そう、私が契約書を作成している最中に猿グループが試験を終了したとアナウンスが流れたのだ。

当然私は他クラスから犯行を疑われたが、終わらせた本人である高円寺六助が堂々と犯人と宣言したため冤罪になる事は避けられた。

無駄な弁明をしなくて済んだので彼には感謝をしなければならない。

 

…しかし、思った以上に質問も反対も無かったためこの議論の時間終了まで暇になってしまった。

──少し遊ぶか。

 

「まだ時間がありますね、残り時間でこれでもしませんか?」

 

私はポケットの中に入っている物を取り出し机の上に置いた。

 

「それは?」

 

「──トランプです。皆さんと交流でも深めようかと思いまして」

 

 笑顔で言った私に、この場にいる全員が拍子抜けだといった顔をした。

暗く淀んでいた空気が壊れる音がした。

その緩慢な動きに釣られて、場が弛緩していく。

きっと今の彼らの頭は、頭がおかしいのではないかという疑いが占めている事だろう。

 

「てめえ、状況分かってるのか?」

 

「はい。皆さんは私の掌の上で踊った事がとても不服らしい」

 

「分かって言っている訳か」

 

「はい。ただ暇を持て余すのは勿体無い、そう思いませんか?」

 

 確かに皆、私との関係を深める気はないだろう。

この試験を牛耳っていたのは私であり、他クラスは良いようにされていただけに過ぎないのだから。

裏切り者という目先の敵があるからこそ、注意を逸らしているに過ぎない。

 

「……下らないわね、私はやらないわよ」

 

「本当に?」

 

「えぇ、本当よ」

 

当然、反対意見は出る。

私の健気な提案は考える暇も無く却下された。

トランプなんてやっている気分ではない。そう皆が眼で語っていたので私は少し譲歩する事にした。

 

「…じゃあ、そうですね。私に勝てば質問する権利を与えましょう」

 

この場にいる皆が欲しい情報、それは裏切り者の手掛かり。それを質問できるとなれば話は変わる。

 

「…それはなんでもかしら」

 

「いいえ。ただ答えなかった場合回数は消費されません。必ず一つは情報を差し上げますよ」

 

「……それは本気なのかい?僕たちしか利益はないけど」

 

「嘘は言いませんよ。皆さんもこれで少しはやる気になりましたか?」

 

私の提案が真実だと理解したのか、室内の誰かが息を呑んだ。

こんなゲームで裏切り者の情報を貰えるなんてやらない意味がないからだ。

 

「いいぜ、どっちにしろまだこの部屋からは出れねえわけだ。暇つぶしにはなるだろ」

 

「龍園君はそう言うと思ってました。では他のクラスはどうですか?」

 

「私は勿論参加するよっ!」

 

「じゃあ、僕もしようかな」

 

Dクラスの二大巨頭である、櫛田桔梗と平田も参加を表明した。

堀北学の妹は溜息を付きつつも参加を決めたらしく、軽く頷いた。

 

「そうですか。葛城さんたちはどうしますか?」

 

「俺は…」

 

「なんだ葛城、負けるのが怖えのか?」

 

「はぁ、分かった。参加しよう」

 

龍園翔の言葉に乗ったのか、単純に損得を勘案して得だと判断したのか分からないがAクラスも全員参加するらしい。

 

「ではこの場にいる全員が参加するとの事なので神崎君、配ってください」

 

「…お前は本当に人使いが荒いな」

 

「君も私に質問する権利がありますので、是非頑張ってくださいね」

 

「…はぁ」

 

「取り敢えず、ジジ抜きにしましょう」

 

神崎隆二は溜息を付きつつも渡されたトランプから一枚抜き、カードを配り始めた。

 

「少し雑談でもしませんか?」

 

私は手元に集まっていくカードを見ながら、そう提案する。

ただの遊びでも構わないが、どうせならこの場にいる人間を観察したかった。

 

「あなた達は何故、この学校を選んだんですか?」

 

そう気になっていた。

全ての人間がAクラスしか享受できない権利を狙っているわけでは無いだろう。この学校に居る意味がある人間は、一般受験で受からないであろう高望みをする人間か、ただ勝利を望む飢餓の獣だ。

 

「俺は大学に行くためだ」

 

「へぇ。貴方なら普通の高校でも問題が無い気がします」

 

私が素直に褒めたからか、葛城は意外そうな表情を浮かべた後話を続ける。

 

「学費がタダだからだ。俺の家はあまり裕福では無いからな」

 

「それは申し訳ない事を訊きました」

 

「問題ない。あまり気にするな」

 

葛城は私の質問に何も感情を揺らさなかった。

Aクラスを目指す理由もクラスメイトへの義理が比重を占めていると考えられる。

実に彼らしい堅実な姿勢だった。

 

「そうですね、では平田さん。貴方は?」

 

「え、僕かい?」

 

突然の質問に平田は少し目を見開いた。

 

「はい。答えたくありませんか?」

 

「いや、大丈夫だよ。そうだね…、ちょっと気になったからかな?」

 

「この学校の実績ですか?」

 

「うん、なんだか凄そうな学校だな。入ってみたいなぁなんて理由なんだ。ゴメンね?あんまり面白くないよね」

 

「いえ、それも立派な理由の一つでしょう」

 

彼は興味、そう話していた。

その表情は確かに申し訳なさそうだった。

が、感情が不自然に揺らいでいた。その有り触れた理由で感情を乱す事はない、だからこそ彼には隠し事があるのかもしれない。

 

隣で私には聴くなと目線を向けている櫛田桔梗と同じく、過去からの離別が目的かもしれない。

 

「では龍園君は?」

 

「俺か?そりゃ面白そうだからだろ。この学校はきな臭い、なら入ってみてえじゃねえか?」

 

「へぇ、そうですか」

 

私が深入りしなかったからか、龍園翔は私に挑発するように言葉を投げた。

 

「おいおい竜崎、俺にはなんも無しか?」

 

「貴方はそんな事気にしていないでしょう」

 

「…クク、さあな」

 

彼も予想通りだ。

私と同じくこの学校の噂に釣られて来た口だろう。私と同じ理由の為、特にいうことは無かった。

だからこそ、そんな質問ばかりで会話の主導権を握っていた私に嫌悪を隠し切れず、口を挟む者も出てくるだろう。

 

「…そういう貴方はなんでこの学校に来たのかしら」

 

「私は知る為です」

 

未知という人間らしさという可能性、その一端を見れたのだ。

この学校に態々来た意味があるというものだ。

 

「知る?何を知りたいのかしら」

 

「学校へは勉学の為に来る、そうらしいですよ」

 

「…答えになってないわね。貴方ふざけてるのかしら?」

 

その返答に納得いっていないらしい堀北学の妹が、眉間に皺を寄せながら私を追求するが無視した。

 

そして雑談の最中も続けていたトランプも終わりを告げた。

隣の人間からのカードによりペアが成立したため、ペアを場に捨てながら私はアガリを宣言した。

暇を埋めるために始めたが面白くはない、以後やるのは控えよう。そう心に誓いつつも、本題に入るため質問を行う事にした。

 

「一つ気になった事があります。この場にいる皆さんはクラス移籍する予定はあるんですか?」

 

「え、?」

 

 順番が回ってきた人間のトランプを捨てようとする手が止まった。

それは突然の話の切り替え、それに脳が追い付いていないというのもあるだろう。

彼らの間抜けな表情に少し面白さを感じたが、表情には出さずに堪える。

 

「この船上試験で予定通りにいけば、全てのクラスが1500万近くのppを入手する事になります」

 

各クラスがそれぞれその額を手にするならば、私の学年は合計で6000万程度のppを保有する事になる。

それほどの額だ、使い道を想像する事は必然だろう。人間は誰しも大金が手に入った時、その使い道を模索するのだから。

私の発言は裏切り者捜査を濁す事を主目的とし、その実は異なる。

 

「なら、Aクラスで卒業は容易になります。あなた達はそんな未来が現実となった今、どうしますか?」

 

この学校での勝利の定義を私はAクラスでの卒業としている。

だが、それは卒業間近でAクラスに移籍するのではなく、現在所属しているクラスでAクラスに行く事でしか達成できない。

 

これはあくまでも私の話でこの場にいる彼らは違う。

彼らには卒業後の進路がある。大学に進学するのか、就職するのかは個々人の判断によるだろう。

それさえ出来れば今のクラスを裏切っても良いと思う人間は出てきても可笑しくない。

 

「無駄に足掻く必要はない、移籍の為のポイントを集めるだけで良いんです。それでも今のクラスに固執しますか?」

 

私は右手の親指を口に咥えて、そう切り出した。

勝利を諦める人間に、私は興味が湧かない。

──だからこそ私は気になっている。この人間たちはどちらを選ぶのかを。

 

 

───

 

船上試験の二日目。

 

私は朝食のため、この船に存在するカフェへ向かっていた。

この船上で生徒が良く集まる人気の場所だが、早朝の今は人の姿は多くなかった。

何故なら、このカフェよりも料理の種類が多いビュッフェもあるからだ。朝食を取る生徒の殆どが居ないのも当然だった。

 

店員は私の来店に挨拶をし、席に案内する。

案内された席は海が美しく見える場所だった。

私は腰を下ろし、メニューを開かずに朝食を頼む。この船での朝食はいつも同じものを頼んでいたからだ。

 

料理が届くまでの間に、切っていた携帯の電源を入れる。

昨日の契約が結ばれるまでの保険の処理の為だ。電源がついてすぐ、画面には複数の通知が現れた。

 

各グループに待機している人間に合図があれば指定した名前の人物をメールに書き、解答しろと指示を出していた。

契約が結ばれればもうその必要は無くなる、故に待機という内容のメールを送る必要があった。

 

「ごゆっくりどうぞ」

 

先日の後処理をしている過程で、一之瀬帆波という人間から詳細を説明してという内容のメールが来た気がしたが、面倒だったため神崎隆二に丸投げした。

 

私が答える気が無いのは理解している筈だが彼女は未だに諦めない。

 

最近の彼女は少し前よりも私への質問が多くなった。

恐らく動向を確認する目的もあるだろうが、本心は違うだろう。

そう考えていると、朝食が到着した。目の前にはアイスティーと複数のドーナツが置かれていた。

 

「あれは…」

 

いざ、実食と手を付けようとするが、見知った生徒の姿が見えた為手を止めた。

その生徒は周りを見渡し、席を選ぼうとしていた。

私はこの試験でも大きくは動かなかった彼を手招きした。彼は私の姿を認識するとこちらに迷いなく近づいて来る。

その人物、綾小路清隆は私の目的を聞く事も無く目の前へと立っていた。

 

「無人島ぶりですね」 

 

「あぁ、そうだな」

 

「朝はいつもお一人ですか?」

 

「…いや、いつもは違うぞ」

 

「虚勢を張らない方が良いですよ」

 

彼は私の目の前に静かに腰を下ろすと、こちらをじっと見つめてきた。

私はドーナツを口に運びながら、メニューを彼に渡した。

 

「貴方は私の策に気付いていますね?」

 

「…なんのことだ?オレはただお前が結果1を取らせるために動いたとしか聞いていないぞ」

 

綾小路清隆は私の笑みに無表情で返した。

それは私の言っていることが本当に分かっていないと言いたげな顔にも取れて、私は彼のポーカーフェイスを突破する手段を模索する。

そして彼は私の言葉を何でもないように流して、店員にサンドイッチを注文した。

 

「では、無人島で何故リーダーになったんですか」

 

「平田がオレにしたんだ。目立たない奴がリーダーになるべきだって」

 

「いえ。貴方は上手く彼らを言いくるめて自らをリーダーにした」

 

「本当に、オレは何もしていないぞ」

 

迷いの一切ない言葉選び、動揺や変化のない様子。

人は突然質問攻めにされたら、困惑や戸惑いを隠せない筈だ。

彼にはそんな様子が一切見えなかった、彼は完璧過ぎる。私が何を言いたいのかを瞬時に思考し、当たり障りのない返答を考えて答えている。

若しくは私がそれを聞く事をあらかじめ予想していた、とも考えられる。

 

「成程。では駒作りの進捗はどうですか?」

 

「駒?チェスか何かの話か。オレはチェスなんて少ししかやった事がないから分からないぞ」

 

「チェスを今度しませんか?」

 

「あぁ、暇になったらいいぞ」

 

彼は私の打ち込んだ楔を気にする筈だ。

何故なら彼は手札が堀北学の妹しか居なかったせいで、無人島は負けたのだから。

それを踏まえて今回の特別試験では恐らく戦力強化に動くはずだ。 

 

「…順調ではないが予想内、ですよね?」

 

「すまん、オレにはなんの話をしているのか訳が分からない」

 

「いえ。私は貴方の進捗が分かりました」

 

私の結果1とする作戦はこの男にもメリットがある。

この試験はもう終わったも同然で、議論の時間は遊びや雑談の場と化すからだ。同クラスだろうと、他クラスだろうと交流を深める良い機会になる。

 

「貴方は私の同類です」

 

「……」

 

「勝つ為ならば手段を選ばない人間です」

 

私は言葉を告げ、目の前のアイスティーを口に含んだ。

そのすっきりとした香りと口の中に広がる仄かな渋みを味わいつつ、目の前の男を観察する。

 

「そして幼稚だ」

 

「…幼稚?」

 

「私もそうなんです、だから分かりました」

 

彼は私と似ている勝つためには手段を選ばない点は好感を覚える。

だが、ハッキリとした相違点もある。

私は今いるBクラスの面々を捨て石にするつもりは無く、彼にとっては同じクラスの人間はモノの一つでしかない。

 

つまり、取る手法はあちらの方が攻撃的となる。

今はまだ、彼が本領を発揮してないからこそ私が優勢だ。

ただ、それは仮初のもので私が無対策ならば覆る程度の差だった。

 

「手法は良いですが、情を利用する事に慣れると勝てませんよ」

 

「勝てない?」

 

「ええ、5%です。貴方は玩具を大切にしない人なのでその程度下がります」

 

彼のやり方には欠陥もある。

何度も同じ行動を行えば人が付いてこなくなる。

最初は勝つためだ等良い訳を並べれば、不満を浮べつつも理解はするだろう。

しかし、それを積み重ねれば信用は無くなる。自分で自分を苦しめる事となる。

 

「何故貴方が負けを選択しているのか、私は知りません」

 

「……」

 

「そして負けを厭わない精神は私とは違います」

 

そう、全ての人間が道具と考える勝つためならばなんでもする本心と、それと矛盾する負けを知りたいという心。

それが彼の幼さで強欲な人間の証明だった。

 

「私は負けず嫌いです。だからこそ、提案です。やる気を出してください」

 

だから、そんな『面白い』と思える彼に私は歩み寄ろう。

私と並ぶ可能性がある人間は多くは無い。一番何かを感じさせた男に、私は譲歩を行った。

 

「もし勝てたら、一つお願いを聞いてあげます。それぐらいのハンデを上げますよ」

 

私は優位なのだから、さも当然のことを言うように。彼はこの発言に今日初めて眉を動かした。

 

「私はゲームが好きなんです、でも難易度にはうるさい。ゲームは難易度が高いほどクリアした時に面白いですから」

 

「…分かった、考えておく」

 

「そうですか、なら頑張ってください」

 

最後に彼は本心を覗かせた。

今まで誤魔化してきた心を隠し切れなくなった。それは彼なりの私への返答で、私を敵として認めた証でもあった。

 

私はそれを確認した後、空になった皿をそのままに席を立った。

そして同時に綾小路清隆の朝食が届いた、丁度入れ替わりとなってしまったようだ。

 

「では、さようなら」

 

カフェを出て、今日の予定を組み上げる。

犯罪捜査のシミュレーションでもしてみるか?そう考えつつ、私は少し笑ってしまった。

──人間が絡むゲームは本当に難しい、だからこそ私は楽しめる。

 

「……アイツならオレは人間として見れるのかもしれないな」

 

ポツリと呟かれた声はもう聞こえなかった。

 

 

 




竜崎は綾小路を同類って言ってますが、本心じゃ無いです。
綾小路が対等な相手を欲しがってると察した為、その心を利用しただけです。
竜崎→綾小路:ライバル
綾小路→竜崎:道具じゃない人間扱いできるヤツ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。