ようこそ未知を探求する教室へ 作:フワンテ
Aクラス(竜崎)…1354cp
Bクラス(葛城)…1024cp
Cクラス(龍園)…492cp
Dクラス(堀北)…275cp
綾小路清隆の独白。
長くも短い夏休みが終わり、学生の本分である授業が始まった。
2学期に入り授業で扱う内容のレベルも上がっている。その為、必死に黒板を睨みつけている生徒がちらほらと目に入った。
しっかりと予習を終えた生徒は何の支障もなく授業を乗り越えられたのだろうが、ここはDクラス。夏休みを遊びつくした学生が殆どである為、多くの生徒が悲鳴を上げる事となった。
(…それにしても夏休みは濃厚だったな)
無人島、船上の特別試験は勿論だが、それよりも夏休み最終日だ。
オレは竜崎と何故かテニスをする事になった。確かに連絡先を交換はしたが社交辞令的なものだと思っていた。あの男はテニスの元Jrチャンピオンだったらしく、相当手強かった。
なにより、あの男はオレと仲良くなりたい、友人になりたいと話をしていた。
休日はいつも誰に声を掛ける事も無く時間が過ぎていく。そんな自業自得な孤独状態である為、友人が欲しいのは事実だった。
それに竜崎はオレと同じく友達が居なさそうだ。そして無理に話さなくても気まずくならない。まさに相性抜群だった。
…だが、オレの過去に感づいている。
オレは誰にも自分の出自であるホワイトルームの話をしたことは無い。だからこそその結論はアイツの観察により導き出されたという事になる。
異常な観察眼、そして推理力。アイツは既に二回他クラスに圧勝している。
無人島ではリーダーを全て当て、その上で自クラスのリーダーを当てさせなかった。
船上では裏切り者の存在をちらつかせ、他クラスに思考の時間を与えず契約を結ばせた。
あの男一人だけ実力がずば抜けている事は明白だった。
友人候補であるとともに、この学校で一番警戒しなければいけない人間だった。
それに助けられるという言葉、あれの意図が分からない。
オレの過去を理解したうえで助けるなど常人はしない提案だった。あの発言の真意が分からない以上、様子見をすべきだろう。
「今日から授業が再開するわけだが、2学期は9月から10月末まで体育祭に向け体育の授業が増えることになる」
そう考えこんでいると、どうやら茶柱先生が来ていたらしい。ホームルームの時間が始まっていた。
(体育祭が始まるのか、学生ならば必ず訪れるイベントの一つだな)
初めての経験に少しだけわくわくしていると、他のクラスメイトの悲鳴が聞こえた。
確かにこの手の行事は運動を得意としている生徒からすれば嬉しいのだろうが、やはり一定数は毛嫌いしている生徒もいる。今の声は運動が苦手な生徒だったはず、そうオレは記憶の断片をかき集めて思いだした。
「今から新しい時間割と体育祭に関する資料を配る。先頭の生徒は後ろに回すように」
先頭の生徒に列の人数分のプリントを渡し、受け取った生徒は自分の分を取って素早く後ろに回していく。
茶柱先生はその間にこの試験が各クラスに大きな影響を与えると話し、運動が苦手な生徒から再び悲鳴が上がったところで声を掛けられた。
「綾小路くん、ちょっと良いかしら?」
1人で先に資料を読んでいたらしい堀北が何かに気づいたらしく、そのページをこちらに見せつけてきた。
オレもページを捲り読み進めていくと意外な試験方式が書かれていた。
「今回の体育祭は全学年を2つの組に分けて勝負する方式を採用している。
お前たちDクラスは赤組に配属が決まっている。そしてこの体育祭の間はAクラス、星之宮先生が担任のクラスが味方となる」
「うげ、マジか!?」
池が驚いているが無理はない。これまでのクラス別での戦いだった、そのスタンスが崩れる試験だった。前回の船上試験とはまた違う協力態勢で、学年を超えての協力戦だった。
「まず体育祭のもたらす結果だ。説明は一回しか行わないのでしっかり聞いておくように」
茶柱先生は資料に書いてあることをより詳しく口頭で説明していく。
耳を傾けつつ視線を下に落とした。そこに書かれているのは以下の通り。
体育祭におけるルール及び組み分け
全学年を赤組と白組の2組に分け行われる対戦方式の体育祭。
内訳は赤組がAクラスとDクラス。白組がBクラスとCクラスで構成される。
・全員参加競技の点数配分(個人競技)
結果に応じて1位15点、2位12点、3位10点、4位8点が組に与えられる。
5位以下は2点ずつ下がっていく。団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。
・推薦参加競技の点数配分
結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。
5位以下は2点ずつ下がっていく。(ただし、最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)
・赤組対白組の結果が与える影響
全学年の総合点で負けた組は全学年等しくcp(クラスポイント)が100引かれる。
・学年別順位が与える影響
各学年、総合点で1位を取ったクラスにはcpが50与えられる。
総合点で2位を取ったクラスのcpは変動しない。
総合点で3位を取ったクラスはcpが50引かれる。
総合点で4位を取ったクラスはcpが100引かれる。
「簡単な話、気を抜かずに全力で挑む必要があるということだ。負けた組が受けるペナルティは軽くはない」
確かにマイナス100は小さくない数字だ、だが他にも気になる点がある。
「勝った組には何があるんですか?」
「何もない。マイナスの措置を受けないだけだ」
平田が質問をしたが現実は非情だった。組で勝っても旨味が無い、同学年での1位でしかcpがプラスにならない。
これまでとは異なり、大きなリスクに見合わない見返りだった。
なによりチームを組んだクラスが活躍して勝ったとしても、総合点が最下位だった場合はペナルティを受ける。
これだけ見ると他の試験よりも厳しい事が予想できるが、一応特別ボーナスが設けられていた。
・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)
各個人競技で1位を取った生徒には5000pp(プライベートポイント)の贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える(点数を選んだ場合他人への付与は出来ない)
各個人競技で2位を取った生徒には3000ppの贈与もしくは筆記試験で2点に相当する点数を与える。
各個人競技で3位を取った生徒には1000ppの贈与もしくは筆記試験で1点に相当する点数を与える。
各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000ppのペナルティが科せられる。
(所持ポイントから払えない場合、筆記試験で-1点を受ける)
・反則事項について
各競技のルールを熟読の上遵守すること。違反した者は失格同様の扱いを受ける。
悪質な物については退学処分にする場合有。それまでの獲得点数の剥奪も検討される。
・最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た生徒には10万ppを贈与する。
・学年別最優秀生徒報酬
全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒3名には各1万ppを贈与する。
今までの試験に比べれば少ない。だが、代わりにテストの点と交換することが出来る。
体育祭で活躍し、点数を得ていれば赤点を取ってしまっても、退学を免れる可能性が上がるという事だ。
優等生は筆記試験の点数による恩恵は大したことが無いが、プライベートポイントを得てしまえば問題ない。
ただ、一つ気になる事がある。
・全競技終了後、学年内で点数の集計をし、下位10名にペナルティを科す。
ペナルティの内容は学年毎に異なる場合があるため担任教師に確認すること。
という注意書きだ。
「……先生、このペナルティってなんすか?」
池が不安な顔を浮べ、茶柱先生にそう尋ねる。その様子が少し愉快だったのか茶柱先生は薄く笑った。
「お前たち1年生に科せられるのは次回筆記試験におけるテストの減点だ。
総合成績下位10名の生徒は10点の減点を受ける、詳細は筆記試験が近づいた際に改めて説明する」
「え、えぇっっっ!!?」
つまり、いつも赤点ラインを彷徨っている生徒は相当苦しい試験となる。
阿鼻叫喚、教室の成績が悪い生徒達は小さくない声を上げた。
「ここまでで質問はもうないな?では次のページにいくぞ。ここには体育祭で行われる種目全てが載っている」
ページをめくる音が一斉に聞こえる。
体育祭の種目を分類すると『全員参加』『推薦参加』の二つに分けられる。
全員参加は言葉の通りクラス内全員が参加するもの、推薦参加は選抜された一部の生徒が参加するもの。推薦についてはクラスの同意があれば自薦でも、1人が複数の推薦参加競技に出ても問題はないらしい。
・全員参加種目
100メートル走
ハードル競走
棒倒し(男子限定)
玉入れ(女子限定)
男女別綱引き
障害物競走
二人三脚
騎馬戦
200メートル走
・推薦参加種目
借り物競争
四方綱引き
男女混合二人三脚
3学年合同1200メートルリレー
王道の競技ばかりだ。だが量が多くハードなスケジュールとなる事が想像できた。
そしてなによりこの体育祭。点数の増減などは各競技の結果に基づいて行われるため、ルールは至ってシンプルだった。
だが、チーム戦と個人戦の複合型であることが厄介だった。
敵となるB、Cクラスは勿論の事、味方であるAクラス。つまり竜崎が居るクラスについても警戒をすべきだった。
基本的には助け合うのだろうが、学年別の総合点で勝つためには出来る限り自分たちが競技の上位を占める必要がある。
ただ、一之瀬に関しては協力できるだろう。何せ彼女は須藤の暴力事件や無人島試験でもオレたちが偵察に訪れた際に協力をしてくれた善人だ。
「これ1人がやるのって…、それに一日で終わらなくないスか?」
「心配は無用だ。この量の試験を1日でやるために、応援合戦や組体操などの体力や運動神経を競わない種目は無い」
体育祭というより運動能力テストだ。
純粋な運動能力を体力、筋力等に識別し、詳しく分析するための試験と捉えてよさそうだ。
「それから非常に重要なものがある、参加表だ」
その言葉と共に紙の束を取り出し、教卓の上に置く。
「お前たちにはこの参加表には全ての種目の参加者がどの順番かを記入し、私に提出してもらう。初めての事だろうから注意して欲しい」
「そしてこの参加表だが締め切りがある。締め切り以降には如何なる理由があってもメンバーの変更が出来ない。期限は体育祭の一週間前から前日の午後五時まで。期限を過ぎた場合はランダムで割り振られるから注意してほしい」
体育祭において参加表は命綱とも言えるほど重要である事が理解できる内容だった。
「私から質問宜しいでしょうか?」
「なんだ堀北」
今まで静かに聞いていた堀北が手を挙げた。
この学校は質問が出来るうちにしておくことが後に繋がる事は明白だった。なので堀北も以前に比べ積極性が増しているように感じた。
「決められた参加表は受理された時点で変更不可となるようですが、当日欠席者が出た場合はどうなるんですか?」
「例年なら全員参加の競技において必要最低限の人数を下回る形で欠員が出た場合は続行不可となり失格となる」
「…例年なら?」
「そうだ。いつもならばここまでで説明は終わるのだが、今回は面白い変更点がある」
「参加表を
「え、なんで二枚?書く必要があるんですか?」
「2枚といっても別の選手で構わない。つまり2パターンを提出できる。このメリットは提出後も変更が出来る点だ。本来は提出した参加表は如何なる理由があっても変更できないが、もう一方に記載した参加者に変更できるようになった」
この情報だけを聞くのならば違和感は無かった。体調不良や欠席により欠場となる事を防ぐためにメンバーを変更する手段がある、それだけの話だ。だが、態々この教師は面白い変更点があると言っていた。
つまり、今年に追加されたルール。これが行えるのは生徒会長か学校、だが両者ともにする意味がない。この学校は良くも悪くも生徒に厳しい、だからこそただの救済手段の筈は無いだろう。
「救済措置ということですか?」
「そうだ、だが条件がある」
「ポイントを支払う必要がある」
納得のいく条件だった。好き勝手に選手を変更できるなんて甘い話がこの学校である筈は無かった。
「ぐ、具体的には何ポイントなんですか?」
「各競技につきプライベートポイントで20万だ」
「た、高い!?こんなぼったくりなのに変える奴いるんですか?」
「それは私にも分からない。だが、今回はこのルールもある。しっかりと二つ参加表を提出するように」
参加表を流す裏切り者、これの対策が目的か?だが三年生は既に堀北学が一強の状況だと聞いている。
そしてなにより堀北学はそのような手段を取る人間ではない。
つまり、誰かが指示した。これが一番しっくりくる。
「他に質問者は居ないな?この後の時間は第一体育館に移動し、各クラス他学年との顔合わせとなる。用意をしておけ」
時計に目線を向け、茶柱先生はまだ話し合う時間が残っている事に言及した。
「まだ少し授業時間が残っている、残りは好きなように使うと良い」
教師が許可したことによって張りつめていた空気が霧散した。
それぞれがグループで集まり、体育祭について話し合っていく。
堀北から何か声を掛けられた気がしたが、上の空だったオレははいはいと軽く流しておく。
確かに例年との変更点があるが、ルールだけを確認するに違和感はない。
だが、オレは感じた事のない寒気がした。
(この試験、既にもう仕掛けられているのか…?)
────────
Aクラスの教室。
一之瀬を含む元Bクラスのメンバー計40人は竜崎のお陰でAクラスへ教室が移動となった。
今は星之宮により体育祭の説明がなされた後。どういう方針で臨むかを話し合う時間だ。学年トップに踊り出て、この教室の雰囲気も最高潮に達している筈だった。
…しかし、教室内は静寂だった。
誰も自分からは意見を言わない。一人の生徒の動向にクラスの全ての人間が注目しているからだ。
その視線を受けた竜崎はめんどくさそうに頭を掻いた後、ゆっくりとホワイトボード前の壇上に登る。特徴的な猫背のまま、彼は教卓に置かれた参加表を摘まむように持った。
「皆さんどうも。今日も朝早くからご苦労様でした」
参加表を眺めながら竜崎は話始める。
「貴方たちは無事Aクラスになれましたね、おめでとうございます」
「……」
「まぁ世間話もなんですから軽く確認しておきますね。今回の試験ってなにが貰えると思いますか?」
そう言葉を零し、竜崎はクラスの面々の表情を相変わらずの無表情で眺めた。
だが、誰も反応をしない。無人島での叱責が記憶に残っているのだろう。
竜崎が納得の出来る意見を出せると己を評せるほど、このクラスの面々は愚かでは無かった。
「えぇ?誰も思いつかないんですか。困りましたね、それじゃあ話が進まない」
話が進まない状況に竜崎は無表情ながらも困ったように眉をひそめた。
だからこそ、竜崎は1人の生徒に目を向けた。その生徒はそれに軽く溜息を吐くとすっと席から立ち上がった。
「…俺から良いか?」
「お、神崎君。どうぞ」
「答えは影響のない程度のクラスポイント、だ」
「正解、流石ですね。今回の試験は勝ってもあんまり美味しくない。これじゃあやる気も出ないし、がっかりだ」
この試験は一位になっても50cp、仮に4位を取ってもクラス順位は変わらない程度の報酬だった。
──だからこそ竜崎は今が好機だと考えている。
「だから私は思いつきました」
ぐっと近くにあった椅子を持ってくると竜崎はにいつものように座った。
「──今回の体育祭、私たちは負けたいと思います」
一瞬の無言。そしてクラスの全員が驚きの感情で支配された。
「な、なにを言っている竜崎!!!」
「なんですか?」
真っ先に反対したのは神崎。このクラスがAクラスに上がった際に一番喜んでいた彼だからこそ、その提案は易々と受け入れられるわけが無かった。
「美味しくないからといって負ける意味はないだろう?それに全く旨味が無いわけでは無い。折角Aクラスに上がれたんだ、それを維持すべきではないのか?」
「そうですね、それはキミらしい回答です。では貴方は現状を理解してるんですか?」
「…現状だと?」
「はい、私たちはこれまでで勝ち過ぎました。二回行われた特別試験、これに勝ったのは私たちですよ。なら他クラスは私たちに何を思うんですか?」
そう、確かにクラス争い首位に躍り出たがそれは良い事ばかりではない。
竜崎としてはこのクラスの面々を見た時に、針の筵では耐えれないと判断した。
良くも悪くも平和ボケが抜けていない以上、それを懸念するのは当然だった。
「私たちを何とかして降ろそうとするんです。なのでヘイトを抑えるために負けてあげるんですよ」
「そう、だな。だが…」
「一つ勘違いがあると思うので弁明しておきます。貴方たちの実力が足りないわけでは無いです」
体育祭で負けろと言われればクラスの士気に関わる。竜崎はそう判断し念のためクラスへの擁護を行った。
「仮に本気で取り組もうとすれば一位は固いでしょう」
「そうなのか?」
「はい。貴方たちの優秀さは理解しているつもりです」
「……」
「しかし、それでは目先の餌に釣られるだけです。質問があります、貴方たちはAクラスで卒業したいですか?」
「う、うん。それはしたいけど…」
クラスの幾らかの人間が小さく頷いた。卒業できるのならばAクラスで、そう考えるのは当然であった。
「なら、ここは耐える時期です。私たちはまだ1年生の2学期。ここで焦るべきではない、そう思いませんか?」
だがこれでもクラスは頷かない。
それは竜崎の度重なる独断専行により、印象が良くないからだ。結果は残しているが人としては好きになれない、そうこのクラスの過半数が思っている。
表立って竜崎を批判する事はしない、彼のお陰でAクラスになれたのも事実なのだから。
だからこそ、このクラスで一番信頼と信用を勝ち取っている人物の同意が必要だった。
その人物は静かに席を立ち、私の目をしっかりと見つめてきた。
「竜崎くん」
「はい。なんですか、一之瀬さん」
一之瀬は竜崎の真意を見抜くために、その表情を態度を観察しながら意見を述べた。
「キミの意見は納得できたよ。確かに私たちは勝ち過ぎたよね、だからこそ負けなきゃいけない」
「そうですね、貴方はクラスの皆さんを護りたいと言っていました。なら同意できますよね?」
「んー、言い方は悪いけどキミがクラスを考えてくれてる事は分かったよ。だから私はその作戦に賛成するよ」
「ありがとうございます」
一之瀬が同意したことで、もう反対意見を言える者は居なかった。
「た、確かにな。俺達はまだまだ時間がある」
「それに竜崎くんのお陰でAクラスにもなれてるし…」
ぞろぞろとクラスの意見が統一されていく。クラスの空気が緩んだ。
竜崎と一之瀬、この2人が現在のAクラスの二大巨頭であり彼らが決めた案は絶対なのだから。高い安定力とチームワークを保てる弊害として、このクラスは同調圧力が強かった。
「では、私の提案で構いませんね?」
再度確認を取ったが反対意見はなし、それを確認した竜崎はぽりぽりと右足でふくらはぎを掻いた。
「皆さん、お疲れさまでした。そして一之瀬さん」
「え、なにかな?」
「クラスの運動能力と希望種目についてまとめておいてください。あとで私が出場メンバーを決めるので」
「う、うん。分かったよ」
負けると言っても最下位になるわけでは無い。一位でなければ他クラスの溜飲も下がる筈だ。だからこそ竜崎はある程度の努力をする気だった。
「では、それぞれ希望種目を決めてください。仮に決め切れなければ一之瀬さんに相談しておいてください」
竜崎はそう話を締めくくると、自分の席に戻っていった。
それを皮切りに一之瀬の近くにクラスの大半が集まった。彼女はそれに苦笑いしながらも竜崎に言われた通り希望する種目を聞き出す事にした。