ようこそ世界一の探偵がいる教室へ   作:叙述トリッピー

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Aクラス(葛城)  …1004cp
Bクラス(竜崎)  …920cp
Cクラス(龍園)  …492cp
Dクラス(堀北)  …87cp




Chapter2 白昼の夢の余韻
page.5 休暇


 

竜崎正の独白。

 

 

窓から入り込む太陽の光。

その暑さから逃げるために室内に逃げ込んだのに、まだ熱さを感じる程の猛暑日であった。

 

「大丈夫か竜崎」

 

「…えぇ。心配しなくて大丈夫ですよ」

 

照りつける日差しと暑さを孕んだ潮風に吹かれ、私は早々に船のデッキにいることを諦めた。

その過酷な環境のせいか、それともこれから暫く船上での生活を強制されることへの憂いなのか、私は胸中で小さく息を吐いた。

 

私は今豪華客船に居る。

先日夏休みが始まり、多くの学生はその休暇を満喫している頃だろう。

そんな中、何故私が客船にいるのか。

 

それは中間試験後に予告されていた通り、バカンスが始まったからだ。

予定では最初の1週間は無人島に建てられたペンションで自然を満喫し、残りの1週間を客船内で過ごすという流れらしい。

 

そして、今乗っている豪華客船には様々な施設が揃っている。

景色を楽しむための広いデッキ、船上の空き時間を埋めるシアターや高級スパ等の娯楽施設。さらには複数のプールが用意され、どの時間帯でも自由に利用が可能だという。

これ以外にも多様なサービスがあるが、それらのすべてが「無償」だとのことだった。

この手厚いVIP扱いは、裏に何らかの試験が隠されていると疑えと言っているようなものだ。

 

この高度育成高等学校において、ただの純粋なバカンスなど存在し得ない。

これから二週間、私はバカンスという名目で外部から隔離された生活を余儀なくされる。 

 

「…それで聞きたい事があるのでしょう?」

 

「分かるのか」

 

「はい、貴方は他の生徒達を押しのけて私の介助しました。露骨すぎますよ」

 

神崎隆二は、私にクラスのリーダーになるよう提案した一件以来、私の動向を注視している。

恐らく私の行動を監視し、必要であればフォローや補佐を行うことが目的なのだろう。

彼は私が断ると予知しつつも納得はしていない。

だからこそ、私の評価を可能な限り高く維持させようと、水面下で動いている。 その献身的なサポートは、どこかワタリの姿を思い出させるものだった。

 

「確かにな。…質問だが、今回のこの船旅はただのバカンスでは無いだろう?」

 

「そうですね。今回の豪華客船は実力を精査するための試験の一環です。そしてその目的とは無人島でのサバイバル。その後にも別の試験があると予想しています。

もっとも現段階では情報が少なすぎるので断定は出来ません」

 

無人島のペンションで快適に過ごすなどという予定が、そのまま実行されるはずがない。

それならば、「水泳が必要になる」という体育教師の言葉は単なる冗談という事になる。

 

だが、あの教師が意味のない嘘をつくタイプとは思えない。

海洋での水泳大会という可能性もゼロではないが、今後「体育祭」のようなイベントが控えていると推測するならば、同じような趣旨の試験を二度行うのは合理的じゃない。

 

「…運動に関する事か?」

 

「はい、しかし同時に『それだけではない』とも思います。生徒たちをただ無人島に放り出し、過酷なサバイバルを強いるだけでは、彼らの精神は1週間も持ちません」

 

何人かはアウトドアの知識があり、無人島での生活を個人的に楽しむことも不可能ではないだろう。

 

だが、「クラス単位での集団生活」となれば話は別だ。

男女混合による不自由な共同生活は、かえってクラス内の人間関係に亀裂を入れる結果を招くだけだ。

 

「成程。おまえの考察は理解した。だが気になる事がある。お前は今回の試験において動く気か?」

 

「結論から言えば動くつもりです。貴方たちもそろそろ戦果が欲しい頃合いでしょう?」

 

「そうだな…、だが良いのか?お前が目立った戦果を上げれば、一之瀬をクラスのトップに据えにくくなるぞ」

 

確かに私自身の評価が上がりすぎて「リーダーとして相応しい」と周囲に認識されてしまえば、『彼女をトップに置く』という目論見は実現しにくくなる。

 

「それについては考えがあります。そして提案です、今回私が起こす行動を貴方たちはサポートしてください」

 

「ふむ。具体的な内容を聞かせてもらえるのか?」

 

神崎隆二は僅かな期待を込めて、質問した。しかしそれには応えられない。

 

「いいえ、今はまだ言えません。ですが、今ここで決断してください」

 

「……仮に、その作戦が失敗したらどうする?」

 

「貴方に以前言った通りにしますよ」

 

自分の作戦が失敗するなど微塵も思っていないが、仮に失敗したところで私がリーダーになるだけの話だ。これは許容範囲内だった。

 

「分かった。他の生徒にもそう言っておく」

 

「頼みますよ」

 

そう言い残し、私は再び憂鬱な気分に沈み込んだ。

この後に待ち受けている、およそ衛生的とは言えないサバイバル環境を想像しただけで気が滅入る。

周囲の生徒たちがこのバカンスを能天気に楽しんでいるのとは裏腹に、彼らが「天国から地獄」へと叩き落とされたとき、一体どんな表情を見せるのか。

 

──そう考えている時、室内にも関わらず人の騒ぎ声が聞こえた。

 

「どうやら始まるようです。神崎君も付いて来てください」

 

「なに……? わかった」

 

重い足取りで外へと出ると、肌を突き刺すような強烈な熱気が私を襲った。 不快感を覚えつつもそれを無視し、景色を一望できるデッキへと足を向ける。

 

到着すれば、すでに多くの生徒たちがそこに群がっていた。

こちらに気づいて無邪気に手を振るBクラスの生徒たちを横目に、私は目の前に広がる景色へと目を凝らす。

 

「成程、あれが目的地ですか」

 

すでに水平線の向こうに見えつつある島影。

どうやらもう到着するらしい。案外、船旅はあっという間だった。

これから一体何が始まるのか頭の中でシミュレーションを始めていると、隣から困惑の声が漏れた。

 

「船が……旋回し始めている?」

 

まっすぐ島に接岸するのかと思いきや、船は島の周囲を回るように進路を変えたからだ。

 

「成程。やはり戦略性ゲームに近いものでしょう」

 

これは島の全容をあらかじめ把握させておくという意図の表れだろう。

一見すれば手つかずの自然豊かな島に見えるが、人工物としての不自然さがあちこちに散見される。

適度に間引きされたような規則正しい森の木々、その隙間に覗く不自然な岩盤の空洞。丁寧に手入れされているらしい小屋の跡。そして、流れ着いた漂流物すらない、清掃された白いビーチ。

 

そして、事前の説明にあったはずの「ペンション」はやはり存在しない。

宿泊施設すらないとなれば、本当に本格的なサバイバル生活を強いられることになる。

 

「……本当に、最悪な気分ですね」

 

 衛生面に期待できないことが確定したため、先ほどよりもさらに気分が沈んだが、嘆いていても始まらないと無理やり思考を切り替える。

 

『これより、当学校が所有する孤島に上陸します。

生徒の皆さんは30分後にジャージに着替え、学校より指示された荷物をお持ちになり、デッキに集合してください。

それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします』

 

スピーカーから、淡々とした上陸を告げるアナウンスが響き渡った。

 

「成程な。おまえの予想は当たりのようだ」

 

「えぇ、そうですね」

 

私の考えを疑う気なんて無いにも関わらず、白々しく感心した態度を見せる神崎隆二の様子に少し呆れた。

誰に似たのだか。そう考えつつも作戦をシミュレーションし、不備はないか考えている。

…念の為、保険を張っておくか。

 

「あぁ忘れていました、彼(・)女(・)にも伝えておいてください。うまく立ち回るように、と」

 

そう言い残し、私は身支度を整えるために自室へと引き返した。

 

 

 

──────────────────

 

 

普段の体育の授業で使用している指定ジャージに身を包み、私たちはAクラスから順番に下船していった。

一年生全員が砂浜に集合し、各クラスの担任が出席確認を始めた。

 

「んー、Bクラスは全員揃ってるかな?」

 

「はい。星之宮先生、全員いますよ」

 

「よーし。じゃあ、そろそろ詳しい説明があるから、みんな整列して待っててね~?」

 

その指示に従い、Bクラスの生徒たちは大人しく列を作って待機した。 周囲を見渡すと、他クラスの生徒たちも続々と砂浜に集結し、ざわめきが広がっている。

 

「これから一体、何が始まるんだろうね」

 

「なんだか、嫌な予感がする……」

 

これが「試験」であることにすら気づいていない、能天気な生徒たちの声が耳に入る。

だが、そんなことはどうでもいい。今は周囲の人間を観察し、警戒すべき標的を洗い出すべきだ。

 

 暑さで表情を歪める教員たち。バカンスという名目の旅行だったはずだが、彼らの表情は一様に険しい。

 

…その中にBクラスの担任の教師と目があった気がしたが、年相応の態度ではない人間の知り合いなど居ない為無視した。

 

作業着に身を包んだ大人たちが船から荷物を降ろし、特設テントの中に運び入れている。

恐らくあそこが試験の本部であり、不測の事態に対応するための拠点なのだろう。

…と、本来なら冷静に分析するところだが、すでに無人島サバイバルという最悪の現実を確信している私にとって、それはもはや驚くべき情報ではない。

 

そう観察していると1人の教師が壇上に上がった。

高身長で英語を担当しているAクラスの教師、彼は軽く咳をし、声を整えると話始めた。

 

「まずはこの場所に無事に付けた事を嬉しく思う。しかしその一方で一名ではあるが、病欠により参加できなかった事は非常に残念でならない」

 

その「1名」とは、坂柳という名前の女子生徒のことだろう。

彼女は先天性の疾患を抱えており、この試験に参加することが不可能であると事前に予測していた。

 

「では、これより本年度最初の特別試験を行いたいと思う」

 

場に満たされるのは疑心、多くの人間が未だに現実を理解していないようだった。

その隙に私は周囲の生徒たちの反応を観察する。

AクラスとCクラスの主要なマーク対象者は、予想通り冷静に事態を受け止めていた。

そして、Dクラスのエリア。ほぼ全員が現実逃避に等しい動揺を見せる中、ただ一人だけ、全く異なる空気を纏っている男がいた。

 

高円寺六助、現段階のDクラスにおいて最も警戒すべき生徒だった。

 

「君たちには今から一週間この無人島で集団生活をしてもらう。つまり、試験の終了は7日後の8月7日午後だ。なおこの試験は実在する企業を参考にしているため現実的なものであると最初に言っておこう」

 

「無人島で生活、ペンションはどうなったんですか!?」

 

「これは『試験』だ。中間試験の際にこの日程を告知した瞬間から、すでに試験は始まっている。それに気がつくかどうかも試験内容だ」

 

「え、そんなのってありなんですか!? アニメや漫画じゃないんだから、無人島サバイバルなんて現実にあり得ないでしょ……!」

 

生徒の必死な抗議に対し、Aクラスの担任は冷淡に切り捨てる。

 

「君はあり得ないと言ったが、それは大きな間違いだ。実際に無人島でのサバイバル研修を取り入れている企業は存在する。それも、誰もが知るような名だたる大企業が、だ」

 

質問への容赦ない回答に、生徒たちは完全に気圧されていた。

しかし、そんな彼らの反応を意に介さず、教師は淡々と説明を続ける。

 

「だが、安心していい。これは君たちに過酷な苦行を強いるためのものではない。この1週間をどう過ごすかは各クラスの裁量に委ねられている。この特別試験の最大のテーマは、『自由』なのだからな」

 

試験であるにもかかわらず、テーマが『自由』

その二つの言葉はあまりにも矛盾していた。 生徒たちは再び混乱の色を浮かべ、その言葉の裏にある真意を必死に測ろうと頭を回転させている。

 

「この無人島における試験は前提として、まず各クラスには試験専用のポイントが『300』支給される。

このポイントを上手く使う事で一週間の特別試験を旅行のように楽しむ事も可能だ。その為のマニュアルも用意している」

 

そう話しつつ、手に持っている数十ページほどの厚みを持った本を掲げた。

 

「スタートの際の支給品はクラスごとにテントを二つ、懐中電灯、そして衛生用品だけだ。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している、必要な者は担任の教師に願い出るように。

先ほども言ったように、与えられたポイントを消費して飲食物や娯楽道具を購入する事も可能であるため、不足している物は各自で揃えるように」

 

その説明を聞くにつれて、生徒たちの間にわずかな安堵の空気が広がり始めた。

地獄のようなサバイバルから一転して「ポイント次第で快適に過ごせる」と知ったことで、彼らの表情が目まぐるしく変化していく様子は、実に面白かった。

 

「だが、一週間後の試験終了時に残っていたポイントの全てをcpに加算し、夏休み明けに反映する。尚、特別試験のルールとして後で説明をするが、欠席者がいるAクラスは270ポイントからのスタートとなる」

 

その言葉に、生徒の誰かが息を飲んだ。

仮にポイントを一切使わずに全額残すことができれば300cpという莫大な報酬が手に入る。出遅れているクラスにとっては下剋上のチャンスだ。浮かれる気持ちになるのは当然なのかもしれない。

 

…だが、これは私にとって非常に好都合な機会だった。

これを好機と捉えて積極的に動く者がいる一方、未だに平和ボケした感覚から抜け出せない能天気な者もいる。

この極限環境の中で、彼らの甘えた認識を叩き直すことは容易だろう。 

 

テーマである『自由』

これは資源管理と情報戦を同時にやらせる試験ということ。

CPに換算可能なポイントをどう運用するかで、各クラスの戦略が問われてくる。

堅実にポイントを節約し、不便を耐え忍びながら他クラスとの差をつけるか。それとも、最初から大量のポイントを投入して快適性を確保し、クラスの団結力を優先するか。

あるいは、その中間のバランスを狙う「器用貧乏」を選ぶか。

それは各クラスの方針次第といったところか。

 

私の所属するBも”本来”であれば堅実寄りで動くのだろう。

 

「この島にはスポットと呼ばれる地点が幾つか存在する。

このスポットを占有する事で一度につき1ポイントを得る。スポットを占有するには専用のキーカードが必要だ。占有権は8時間しか効力を持たず、更新しないと自動的に権利が切れる。

そして、このキーカードを使用できるのは各クラスで事前に決めたリーダーだけだ。正当な理由なくリーダーを変更することはできない」

 

Aクラスの担任は、鋭い視線で生徒たちを見渡した。

 

「そして最終日、お前たちには他クラスのリーダーを言い当てる権利が与えられる。

他クラスのリーダーを的中させることができた場合、一クラスにつき50ポイントが得られる。ただしリーダーを間違えた場合、マイナス50ポイントされる」

 

「「……ッ!!」」

 

その今回の試験において重要なルールに、多くの生徒が息を呑んだ。

これが自クラスのリーダーを隠し通す情報戦だと理解したのだろう。

 

安易にスポット確保に動けば、かえって自陣のリーダーの正体を露呈させる危険性がある。リスクとリターンのバランスが釣り合っていない。

だが、それを指摘する側にとっても同様だ。

説明を聞けば聞くほど、巧妙に作られた優れたルールだと素直に感心させられる。

 

「最後に、ペナルティについてだ。

体調を崩したり、大怪我により続行不可能と判断された生徒が出た場合、所有するポイントからマイナス30ポイントとなり、対象者はリタイアとなる。

他クラスが占有しているスポットを許可なく使用した場合はマイナス50ポイント。

毎日朝8時と夜8時の点呼に不在の場合は、一人につきマイナス5ポイントだ」

 

どれもマイナスとしては重いが、定石通りに試験に取り組むのであれば、お目にかかる機会はないだろう。

 

「では、質問がある者はいるか?」

 

拡声器から発せられる質問の有無を問う声に、私は手をゆっくりと上げた。

 

「Bクラスのキミ、質問を許可する」

 

瞬間、全クラスの生徒と教師たちの視線が一斉に私へと集まった。

本来であれば、この大勢の前で自ら目立つような質問をするのは愚策でしかない。他クラスに無駄な思考の材料を与えるだけであり、不必要なリスクを生むだけだからだ。

 

だが、今回はそれでいい。

私の描く作戦において、この注目こそが最大の肝なのだから。

 

「はい。質問もありますが、その前に一つ『宣言』をしたいと思います」

 

──この試験で取る作戦はもう決めている。

今BクラスはAクラスに王手を掛けている状態だ。

だからこそ、私がこのまま何もしなければ、一之瀬帆波は無難な「守り」の姿勢を固めてしまうだろう。

 

…だがそれでは足りない、私は一度トップに躍り出るべきだと考える。

そうして周囲からのヘイトと注目を集めれば、各クラスからの攻勢も熾烈になり、このクラスの人間たちにとって良い成長の機会となるはずだ。

 

「私はBクラスのリ(・)ー(・)ダ(・)ー(・)になります。ですので最後の指名には私の名前を書くと良いですよ」

 

その大胆な宣言に、周囲の生徒たちは一様に怪訝な視線を向けた。

無理もない。各クラスのリーダーを隠し通すべき情報戦のゲームにおいて、自らその正体を率先してバラすなど、根本からルールを破壊するような行為なのだから。

それこそが、今回の作戦の肝だった。現に、他クラスの何人かは、私の言葉の裏にある意図に気づき始めている。

 

「ほう?随分と面白い事を言うねぇ。この退屈な試験も少しは楽しめそうだ。ただねぇ、君がリーダーになるなんて、口では何とでも言える事だよ」

 

そして、見事に狙い通りの魚が釣れた。

強烈な太陽光を反射する黄金色の髪を優雅に揺らし、不敵な笑みを浮かべる高円寺六助。

彼こそはこの試験において最も予測不能で、最も危険なノイズになり得る生徒だった。

 

だからこそ、私自身が率先して彼の注意を引きつけ、作戦の邪魔をさせないように誘導する必要があった。

 

「確かにそうですね。ではこうしましょう、私は今日各クラスでの作戦会議の終了後に皆さんの目の前でスポットを確保します。これで証明になるでしょう?」

 

「それなら君がリーダーであると保証される、と。すまないねぇ、話の邪魔をしたよ」

 

「いえ、構いませんよ。ただ、各クラスで代表者を2人程度決めてから来てくださいね?大人数で押しかけられてはこちらも対応に困りますので」

 

他の生徒たちの様子を確認すると、私の真意が理解できず、奇異なものを見るように首を傾げていた。

そうだろう。これは実は嘘だったということも出来なくなる自分の首を絞める行為だ。

 

「では、質問を続けます。リーダーの変更に関する規定ですが『正当な事由』、例えば突発的な体調不良などが起きた場合を想定します。これは医師の診断などに基づく厳密な検査が行われるのですか、それとも自己申告制ですか?」

 

「……この試験の基本理念は『自由』だ。健康状態の悪化などにより試験の続行が不可能かどうかの判断は、あくまで生徒自身の自主性を尊重する」

 

「そうですか。ご回答ありがとうございます」

 

Aクラスの担任は、私の問いかけに対して至って真面目に答えてくれた。 この質問を投げたのには明確な目的がある。

『リーダーはいつでも容易に変更可能である』という事実を、全校生徒の前であらかじめ周知させておくことだ。

自分がリーダーであることを堂々と証明した上で、それを覆す手段を提示し、自らは退路を断つ。

これによって、私の本当の意図を見抜くことは難解になるはずだ。

 

「もう他に質問はないな? では、クラスごとに解散して行動を開始してくれ」

 

その言葉を皮切りに、各クラスが円を描くように集まりだした。

 

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