それでは、どうぞご覧ください。
紫の蛇龍と出会った少年は、その後も蛇龍の力のおかげで生き続けることができていた。だが、エーテリアスは蛇龍が倒してくれるとはいえ、既に体力や精神などはとっくに限界を迎えていた……その時――――
『GyAAAAAAAAAA!!』
複数の上級エーテリアスが、少年のことを取り囲むように現れたのだ。
「っ……」
少年は逃げようとするも、力がもう無いのかその場に膝をついてしまう……そして、少年にエーテリアスが襲い掛かろうとした……その瞬間――――
『GyA!?』
「え……?」
空から無数の光が降り注ぎ、エーテリアスたちは一掃されてしまった。そして、その上から1人の人物が降りてきた……その人物はピンク色の髪をショートヘアにし、黒い軍服を身に纏った白い翼が生えた女性だったのだ。
「ねぇ君!大丈夫――――じゃないか……安心して、助けに来たよ!」
その人物は少年を見ると、優しく声を掛けてきた。
「助け……?」
まさか自分助けられるとは思わなかったのか、少年は呆然としていたが……
「レミ!」
さらに少年のもとに、紫がかった黒髪をポニーテールにし、少年を助けた人物と同じ色だが違うデザインの軍服を身にまとった人物が、後ろに軍人たちを率いて現れた。
「ベリ!この子酷い傷……すぐに手当てを――――」
「えぇ、すぐに準備を――――」
『了解!』
ベリと呼ばれた人物は、すぐさま後ろにいる軍人たちに少年の治療の準備をするように指示を飛ばした。そして……
「っ……」
「あっ、ちょっと君!しっかりし――――」
少年は限界を迎えたのか、そのまま気を失ってしまった……。
◇
「っ……」
少年が次に目を覚ました時にいたのは、とある部屋のベッドの上だった。そんな少年の身体中には、いくつもの部位に包帯が巻かれていた。
「うっ……!」
少年は何とかベッドから出ようとするも、身体を思うように動かすことができず、ベッドの上から落ちてしまった……すると――――
「さてさて、目を覚ましたかな――――って大丈夫!?」
「ちょ、まだ動いてはダメですよ!?」
そこに少年のことを助けた人物たち――――杖の軍の中佐であるレミエール・ダンと、大佐であるベリオラ・ヴァイクの2人がやってきたのだ。2人は少年が目を覚ましたこともそうだが、怪我が完治していないのにもかかわらず、ベッドの上から落ちてしまっていることに驚き、慌てて少年のことをベッドへと戻した。
「ふぅ……さてと、とにかく目を覚まして良かった。私はレミエール・ダンだよ!で、こっちがベリオラ・ヴァイクでーす!」
「よろしくお願いしますね」
少年に2人がそう自己紹介すると……
「……ジーク」
「?」
「ジークフリード、です」
少年――――ジークフリードも、ゆっくりとだが自身の名前を口にした。
「ジークフリード……うんうん!いい名前だね!じゃあさ、ジークって呼んでもいい?君も私たちに対しては敬語じゃなくてもいいからさ」
レミエールは早速、ジークフリードと距離を詰めようとそんな提案をした。それに対し……
「えっと……分かりま――――分かった……」
「ホント?ありがとね、ジーク!」
「!?」
ジークフリード――――もといジークがその提案を了承すると、レミエールはその頭を撫でた。
「レミ、そのくらいにしておいた方が……」
「えー?だってジーク可愛いんだもん。ベリもそう思うでしょ?」
「……まぁ、否定はしませんが――――って、今はそれよりも本題に」
「あ、そうだったね」
「……?」
すると、レミエールはジークの顔を見て……
「ねぇ、ジーク……
私の
「???」
◇
アキラとリンがオボルス小隊から、ドォーンのことを訊いてから数日後……
「お兄ちゃん早く早く!」
2人はTOPS主催で行われる大会――――ホロウ・ザ・ヒーローへ出場するために、申し込み会場となっているスターループへと来ていた。2人がこの大会に出場する目的として、景品にあるフリンツ合金製の音動機を手に入れるためだ……この音動機――――というよりもフリンツ合金の近くにいると、最近になって出てきたリンの目の不快感が大幅に和らぐということで、2人はこの音動機を欲しているわけだ。
「わぁ、参加者がたくさん!」
そこにはこのイベントに参加するためか、多くの出場者で賑わっていた。
「来た来た!待ってたわよ、プロキシ!」
そこには、既に一緒に出場する邪兎屋の面々が待っていたのだ。この大会に2人を誘ったのは邪兎屋の社長であるニコで、その理由は新エリー都1のプロキシであるパエトーンを雇うことで他の参加者たちを出し抜き、より良い賞品を手に入れるためだ……ちなみに、2人が欲しいのはフリンツ合金製の音動機だけのため、それ以外の賞品を全てあげると言ったところ、さらにやる気を出していた……。
それから2人は受付で邪兎屋としてエントリーし、その後で展示されている目的の音動機を見ていると……
「……」
(凄い……触ってないのに身体が軽くなっていくのが分かる……あのストラップよりもよっぽどフリンツ合金が使われているんじゃ――――これさえあれば、当面の問題は解決するよ……でも、『エーテル安定性指標を向上させ、内外の
環境における強烈なエーテルエネルギーの変動を抑制する』……この説明って、どういうことなんだろう?)
「内外……外部の環境は兎も角、内部の環境ってどういう……人体とも解釈できるけど、そうだとして、強烈なエーテルエネルギーの変動って『侵蝕』と何が違うの……?」
「うんうん、私も同じこと考えてたよ!」
「わぁ!?だ、誰っ!?」
リンは黒い羽を持ったピンク色の髪をした翼のシリオンの女性に声を掛けられた――――彼女の名前はラミルと言い、今回の大会に参加する参加者の1人だという。それからリンは、ラミルと賞品についての話をしていたが……
「じゃあ、お互い頑張ろ――――あっ、1つ訊いてもいい?」
「いいけど……どうかしたの?」
「君はさ……
ジークフリード――――もしくはジークって名前の人、知らない?」
「ジーク……?」
リンは予想外の質問に、思わずそう呟きながら考えたが……
「……ごめんね。私が知る限りじゃ、そう言う名前の人には会ったことないかな」
「そっか……あっ!ごめんね、急に変なこと訊いちゃって――――じゃあ、またどこかで会おうね?」
ラミルは寂しそうな表情をした後で微笑みながらそう言うと、リンの前から去っていった。
◇
その頃、ドォーンに変身する青年は、ホロウの中にある廃墟となった高いビルの上にいた。そんな青年の目線の先には、現在進行形でエーテリアスと交戦している治安局の部隊がいた。
「皆さん、私たちの後ろに下がってください!」
そこには特務捜査班の班長である朱鳶が自身の部隊と共にエーテリアスから市民を守っていたが、そのエーテリアスの数の多さなのか、状況は良いとは言えなかった……。
『GyA……!』
「……分かってる」
「パニッシュ!」
青年はブレイカムドォーンにパニッシュカプセムを装填し、それを左の親指で回転させると……
「フェイス・ユア・シンズ!フェイス・ユア・シンズ!」
「……変身」
「ドォーン・ドォーン・ドォーン!」
「エーテリアス・ライダー!」
「パニッシュ!」
ブレイカムドォーンを双剣状態に分離させ、ビルの上から飛び降りながら変身したのだ。
「な、何だ!?」
ドォーンが地面に着地すると、その衝撃で辺りに砂埃が舞い、エーテリアスと戦闘していた治安局の部隊もエーテリアスたちまでもが警戒を強めた。そして、砂埃が晴れる前にドォーンはその中から飛び出し……
「しっ!」
『GyAAAAAAAAAA!!?』
ブレイカムドォーンを振るい、僅かな間で全てのエーテリアスを一掃してしまったのだ。それからドォーンは武器を大剣状態に戻すと、いつものようにその場に残ったエーテルを吸収し、この場から去ろうとしたが……
「止まりなさい」
「……」
朱鳶はドォーンのことを危険視したのか、すぐさま銃を向けた。それに続くように、周りの部隊員たちもドォーンへ銃口を向ける。
「そのまま武器を下ろしなさい。抵抗するなら――――」
「まぁ待て朱鳶」
「青衣先輩……?」
「この者がどんな存在であれ、市民や我らを助けたのは事実……そう事を急ぐ必要もないと思うが?」
警戒する朱鳶に対し、同じ班に所属しており朱鳶の先輩にあたる青衣は、まずは事情を聞くべきだと言った。
「……そうですね」
朱鳶も一先ずは、青衣の言葉通りに話を訊こうとした……が、
「っ!」
ドォーンは突然、ブレイカムドォーンに装填したカプセムを回転させると、背後に向かって武器を投げたのだ。
「な、何をして――――」
朱鳶や青衣、他の部隊員たちはその行動を見て驚いていたが、次の瞬間……
「か、雷……!?」
「まだエーテリアスが残って……!」
トラキアンというエーテリアスが雷を落として奇襲を仕掛けてきたのだ。その雷は、治安官たちに向かって落ちようとしていたが……
「なっ!?」
「こ、これは……」
先ほどドォーンが投げたブレイカムドォーンが避雷針代わりとなり、誰にも被害を出すことななかったのだ。そして……
「ふっ!」
「あっ……!」
ドォーンは突如現れた蛇龍と共に、トラキアンのいる方へと飛び上がり……
「パニッシュ・シュート!」
「ジ・エンド!」
そのオーラを纏ったキックを命中させたのだ。すると、トラキアンの足元に血溜まりが広がり、そこから血の色の鎖がトラキアンを雁字搦めに拘束した。さらに血溜まりの中から、巨大な蛇龍の頭が出現し……
「さよなら」
ドォーンがそう呟くと同時に、瀕死のトラキアンを喰らってしまった……その後、蛇龍は血溜まりの中に姿を消し、地面にあった血溜まりもすぐに消えていった。
「あれって上級エーテリアス、だよな……?」
「それをこんなに早く……」
トラキアンを一撃で仕留めたドォーンの強さに、治安官たちに動揺とざわめきが広まる。その中には、ドォーンを危険視する視線が変わらずあったが、先ほどよりはその視線は減っているように見えた。すると……
「ありがとうございます。あなたのおかげで、助かりました」
「助かったぞ、紫の戦士よ」
朱鳶と青衣がそう礼を言ってきた。ドォーンも何かを言おうとしていた様子だったが……
「っ……」
突然、胸のあたりを抑え始めたのだ。それを見た朱鳶は、心配そうに駆け寄ろうとしたが……
「ちょっと!?まだあなたに訊きたいことが――――」
ドォーンは武器で空間を斬って裂け目を生み出すと、すぐにその場から姿を消してしまった……。
◇
「くっ……」
裂け目から姿を現したドォーンは、装填していたカプセムを外して変身を解除した……が、
『GyAAAAAAAAAA!!』
「ぐっ!?……静かにしてなよ。さっき食事は終わったでしょ?」
突然、青年の中にいるエーテリアスが急に唸り始め、それによって青年の身体中に蛇龍の紋様が、青年の赤紫色の瞳にも紋様が浮かび上がった……それは数十秒した後で、どちらも何事もなかったかのように収まった。
「っ……早く方法を見つけないと――――」
そう呟き、青年は少しばかりふらつきながらも、ホロウのどこかに姿を消していった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回は過去と現代のそれぞれで、レミエールとラミルを登場させました。そして、主人公は今回治安局陣営のキャラたちと出会いました……ですが、そんな中で主人公の様子が……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いいたします。