それでは、どうぞご覧ください。
「レミ……いきなりそう言っても、ジークは何のことか分からないと思いますよ?」
「あはは……だよねー、失敗失敗」
レミエールはそう言ってから、先ほどの言葉の意味についてジークに説明し始めた。
「えっとね……まずジークの身体を調べてもらったんだけど、何かエーテリアスと融合しちゃってるらしくて……でね、その力を何とかするのとそれが暴走するかもしれないから、私たちのところで預かることになって――――あ、勘違いしないでほしいんだけど酷いことは絶っ対にしないからね!もしもの時は私が守るから!」
「う、うん……」
レミエールがそう言うと、ジークはその勢いに押されながらもそう返事をした……どうやらジークの身体にはあの蛇龍のエーテリアスが融合しているせいで、この先何かしらの異変が起きてしまう危険性が高いという。そのため、何が起こってもすぐに対処できるように、レミエールやベリオラのいる『杖の軍』でジークを預かることになったのだ。それに加え、ジークの中にいるエーテリアスの力の使い方も、何とかして制御できるようにするというのも理由としてある。
「あとはさ……ジークのこと、純粋に助けたいって思ったんだよ」
『身体中の傷の半分ほどは、ホロウを彷徨う中でついた傷ではないものでした』
『それってどういうこと?』
レミエールはジークの姿を見ながら、治療を担当する医師との会話を思い出していた。
『おそらくは、人為的につけられたものですね。それにあの子の名前が分からないのと、両親と連絡がつかないのを考えると……』
『そ、そんな……』
医師は言葉を濁してそう伝えたものの、その意味を察するのは簡単だった……それを理解したベリオラは思わずそう呟き……
『っ……』
レミエールは黙り込んで、右の拳を握りしめていた……。
「……本当に?」
「もちろんだよ」
レミエールの言葉を聞いたジークは……
「……痛いこと、しない?」
実の両親にされたことをされるかもしれないと思ったのか、レミエールに少しだけ不安そうな表情をしながら
そう訊いてきた。
「うん、絶対にしないよ。約束、ね?」
「……ありがとう」
「!……うん!」
(ジークは絶対、私が守ってみせる……!)
レミエールは心の中でそう決意しながら、ジークのことを優しく抱き締めるのだった……。
◇
「というわけで紹介するよ!私の義弟になったジークフリード・ダンでーす!ジークって呼んであげてね!」
ジークが退院したその日、レミエールは杖の軍の仲間たちにジークのことを紹介していた。仲間たちは事情は聞かされていたものの、初対面のジークに興味津々と言った様子だった。
「っ……」
「大丈夫だよ、みんな優しいから」
そんな軍人たちを見て、ジークは少し緊張しながらも……
「ジークフリード、です。よろしく、お願いします……」
何とか自己紹介をしたのだ。すると……
「よろしく!」
「よろしくね!」
「か、可愛い……!」
「男……なんだよな……?」
軍人たちは笑顔でジークにそう返してくれた――――一部はジークの中性的な容姿に目を引かれていたが……その後、軍人たちに質問攻めにされていたジークだったが、明らかに戸惑っていたため……
「はいはい!ジークが困ってるからそのくらいにしといてよ?」
レミエールは手を叩いてそれを止めさせた。その言葉を聞き、軍人たちはそれに従ってジークから離れていった。
「ごめんね?みんなジークの話をしたときから、楽しみにしてたみたいでさ……」
「いや、それは全然いいけど……何ていうか、こういうの初めてで……」
「そっか……なら良かった」
「正直心配していましたが……これなら、何とかなりそうですね」
そう話すジークの表情は初めて会った時や入院していた時よりも良いものとなっており、それを見たレミエールもベリオラも一先ずは安堵していた。
「さて……顔合わせも終わったことだし、色々案内するよ!」
それから、レミエールとベリオラはジークを連れ、周辺を回ることにするのだった。
◇
『おはようレディース&ジェントルマン!未来のホロウのヒーローたち!さぁ、実力はを証明する時だ……その勇姿を歴史に刻め!』
ホロウ・ザ・ヒーローの本番当日、リンは治安局に所属している蛇のシリオンのシーシィアと邪兎屋のビリーと共に、ホロウの中へと入っていた……ちなみにニコはというと、借金取りに捕まってしまったらしく、急に出場できなくなってしまった……これも日頃の行いのせいだろうか。それから手短に作戦を確認していると……
「やっべぇぞ、店長!ほんの少しモタモタしてただけなのに、もうだいぶ順位が落ちてやがる!とっとと俺らのケツを叩いてくれ!」
「そうよプロキシ!今この瞬間もあーしの……私のポッケから、札束がじゃんじゃん飛んでっちゃってるんだから!早く金ピカのものを追いかけましょ!」
「おいおいヘビの姉ちゃんよ!いくらうちの親分でも、もう少しは慎みってモンがあるぜ!」
「そう見えてんのはぁ、ビリーに『親分』へのリスペクトが足りないからだし!てゆーかこれ、あーしのマジな心の叫びなんですけど!時はディニーなりって教わったっしょ!」
ビリーやシーシィアの言葉通り、リンのチームの順位は最初よりも大きく下がってしまっていた。
「安心して、こっから順位を上げてくよ。スタートの直線で出遅れたって、コーナーで差をつけてやるんだから!狩場がどれだけ広くたって、高得点のエーテリアスは有限だもん。裂け目を通ってショートカットしながら、ガンガンポイント稼いじゃお!」
だが、リンには焦りなどは一切なく、むしろ裂け目を使ってエーテリアスのいる地点を連続で巡る作戦のようだ。その後は順調に進んでいたものの、途中でキャロットのデータに安全なルートの情報ではないものが入っていることが発覚し、現在はそれの解決のためにホロウ内にあるデータスタンドを探しているところだった……それから少し経った後……
「ん?ねぇねぇ、もしかしてあれじゃない?」
「!でかしたよ、シーシィア!」
道中のエーテリアスはシーシィアが蹴散らし、時間を掛けることなくデータスタンドを発見したのだ。それから、パエトーンであるリンとアキラのサポートAIである、Fairyが算出したルートを他の参加者に送信する準備を進めていった。そして……
『転送プロトコル受信、解析中……脆弱性を特定。コマンドをどうぞ』
「よーし……私が、みんなのプロキシだよ!」
そう言ってリンは、参加者全員に配布されている端末であるエーテリアスカードのボタンを押した。すると、安全なルートのデータが全ての参加者のところに送信されたのだ。
「うん、バッチリ!」
「……!」
そう言うリンの目には、金色の紋様が浮かび上がっていた……。
◇
一方で、この大会に参加しているあるチームは、先ほどリンによって送信されたキャロットに従い、高得点のエーテリアスを探していた。
「よし、ここに高得点のエーテリアスが――――」
だが……
「なっ……!?」
「どうし――――って、な、何だよこれ……」
そのチームの目の前には、エーテリアスたちが既に倒され、消えかかっている光景が広がっていた。さらに……
「え、エーテリアスが……ん?」
「……」
そこには血振りをするようにブレイカムドォーンを振るっている黒いフード付きロングコートを着ており、そのフードを深く被った人物――――ドォーンに変身する青年が立っていたのだ。
「これ、お前がやったのか?」
「……」
チームにいるうちの1人がそう訊くが、青年からの返事はない。すると……
「ひぃ!?」
「「っ!?」」
『……ここで見たことは忘れろ』
青年は、一瞬で目の前にいる1人にブレイカムドォーンの切っ先を向け、加工されたような声で今日のことは忘れるように言った。そんな青年からは、とてつもないプレッシャーが放たれているように見えた。
「わ、分かった……!ここで見たことは誰にも言わない!だから――――」
「……」
その言葉を聞き、青年は意外にも素直にブレイカムドォーンを下げた。それから青年は、目の前の参加者たちに背を向けると……
『忠告だ……このホロウから手を引け』
「は?それってどういう――――って、おい!?」
そのまま周りの建物に飛び移っていき、その姿を消してしまった……。
◇
「さて……あれか――――」
建物を飛び移りながら、ホロウの中のある場所へと到着した青年の目には……
『GyA……!!』
明らかにこの大会で設定されている高得点のエーテリアスではない――――化け物と言えるレベルのものが闊歩していた。それはまるで巨大な怪鳥のような姿をしており、今は周辺に誰もいないからよいものの、もしあんなレベルのものが参加者の誰かに襲いかかれば、犠牲者が出ることは間違いないだろう……。
「何であんなのがここにいるかはさておき……あれを喰わせればマシにはなるか――――」
「パニッシュ!」
青年はブレイカムドォーンにパニッシュカプセムを装填した後、それを左の親指で回転させ……
「フェイス・ユア・シンズ!フェイス・ユア・シンズ!」
「速攻で倒す……変身」
「ドォーン・ドォーン・ドォーン!」
「エーテリアス・ライダー!」
「パニッシュ!」
ブレイカムドォーンを双剣へと分離させて、仮面ライダードォーンへと変身を遂げた。そして……
「ふっ!」
ドォーンは蛇龍を裂け目から召喚し、それに乗って空中にいる怪鳥のエーテリアスへと向かっていく。
『GyAAAAAAAAAA!!』
接近するドォーンを見つけた怪鳥のエーテリアスは、自身の羽を周りに飛ばすとそれから無数のビームを放ってきたのだ。ドォーンはそれを蛇龍に乗って回避すると……
『GyAAAAAAAAAA!!』
蛇龍のブレスやブレイカムドォーンによる飛刃で反撃を加えていく。その後もドォーンとエーテリアスは遠距離攻撃を互いに放ち続けていくも……
「しっ!はぁっ!」
『GyAAAAAAAAAA!?』
機動力に分があるドォーンが優勢なのか、怪鳥のエーテリアスの周りを飛び回りながら確実に追い詰めていった。すると……
「あった……コアだ」
遂にエーテリアスの弱点であるコアを発見したのだ。コアを見つけたドォーンは、装填しているパニッシュカプセムを回転させると……
「――――そこ」
『GyAAAAAAAAAA!!?』
ブレイカムドォーンをエーテリアスのコア目掛けて投げた。それは見事に命中し、エーテリアスはその痛みからか苦しみ始めた。そして……
「はぁっ!!」
「パニッシュ・シュート!」
「ジ・エンド!」
ドォーンは蛇龍と共に、エーテリアスに突き刺したブレイカムドォーン目掛けてキックを放った。そのキックは狙い通りに命中してコアを貫き……
「さよなら」
エーテリアスは下の血溜まりから現れた蛇龍によって、咥えられながらそのまま血溜まりへと引きずり込まれていった。それを見届けたドォーンは、装填していたカプセムを外して変身を解除し……
「今は落ち着いてる、か……でもやっぱり、空中戦はレミ姉みたいには上手くいかないか……」
そう呟きながら、青年はホロウの中を進もうとした……その時、
「あっ、リンちゃんいたよ!」
「まさかあいつが……?」
「訊いてみるしかなさそうだね……」
このホロウ・ザ・ヒーローにチームを組んで出場しているシーシィア、ビリー、そしてリンの3人が青年の前に現れたのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回の最後で、遂に原作主人公であるリンと邂逅しました……果たしてここからどうなるのか……。
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。