それでは、どうぞご覧ください。
ジークの力の制御訓練が始まってから、数週間後……
「大分、制御も安定してきたな」
「ふふん!」
「何でレミが得意げなんですか……?」
「だって私の義弟だもん!」
3人はジークの様子を見ながら、そんな話をしていた。ジークの訓練は順調に進んでおり、今は蛇龍のエーテリアスをほとんど1人で操れるようになっていた。そこに……
「こいつが例の少年か?」
「あっ、ジョイアス君――――って、酒臭っ!?」
「はぁ……また飲んでいたんですか?」
「まぁな……悪いか?」
調査ギルドのエースであり、サンブリンガーと同じ虚狩りのジョイアスがやってきたのだ。100年後の未来では様々な偉業が伝えられているプロキシの始祖とも呼ばれる人物なのだが、二日酔いの常習犯なのだそう……。
「お酒を飲むのは自由だけど……ジークの教育に悪い!」
「教育って……お前、すっかりブラコンだな?」
「……?」
「そんな『この人何言ってるんだ?』みたいな顔されてもな……まぁいい。それよりも――――初めましてだな、少年。俺の名はジョイアスだ。まぁ、よろしく頼むぜ?」
ジョイアスはそう言い、ジークに手を差し出した。
「ジークです。よろしくお願いします、ジョイアス先輩」
ジークはジョイアスのことも先輩と呼びながら、その手をとって握手を交わした。
「先輩、か……中々いい響きだな」
先輩呼びされたジョイアスは、まるでその余韻に浸っているような様子でいた。
「ジョイアス君ずるい!ね、ジーク、私のことも先輩って呼んでもらえ――――」
「?レミ姉はレミ姉でしょ?」
「そ、それはそうだけど……!」
すると……
「サンブリンガー、今日はジークに俺の技術を教えてやって欲しい……そういう話だったよな?」
「あぁ、よろしく頼む……それとジーク、これを」
サンブリンガーがあるものをジークに渡した。それは黒に近い紫の剣をしており、刃の部分は紫色になっていた。さらに持ち手の上部分には、何かを装填するソケットのようなものも作られていた。
「これって……!」
「あぁ、我々の技術を集めて作ったジーク専用の装備だ」
これがサンブリンガーとジークが初めて会った時に話していたジーク専用の装備で、これがあることによってジークの力の暴走の危険性はずっと低くなったといえるだろう……。
「そして……これがジークの中にいるエーテリアスの力を封じ込めたものだ。仮の名をカプセムとした」
それは赤紫色のカプセルの形状をしており、中には紫の蛇龍が描かれていた。
「ありがとう、サンブリンガー先輩」
「よし、じゃあそいつを試しながら行くとするか」
「分かったよ、ジョイアス先輩」
そうしてジークとジョイアスはホロウへと向かおうとしたが……
「私も行く!」
レミエールもそれに着いて行こうとしたのだ。
「レミはこの後任務があるでしょう……?」
「だって、ジョイアス君が技術以外のことをジークに教えないか心配だもん!」
「それはまぁ、そうですが……」
「おい、そこは否定しろよ」
「それについては安心しろ。この後は少し空きがあるから、2人について行こう」
「信用ねぇな、俺……」
そんなやり取りをしつつも、ジークはジョイアスやサンブリンガーと近くにあるホロウの中へと向かっていく
のだった。
◇
ホロウ・ザ・ヒーローが中断されたその日、リンはビデオ屋から深夜の六分街に出ていた……それはシーシィアと話している間に気を失ってしまい、その間に悪夢とも呼べる夢を見たからだ。そんな理由で、リンが気分転換のためにビデオ屋の外に出ると……
「ん?誰かいる……?」
ゲームセンターの前に、会場で会ったラミルがいるのを見つけたのだ。
「ラミル……だよね?こんな夜に、六分街で何してるの?」
「こんばんは、リンちゃん。ねぇ、この『フーディー・ファイターズ』ってゲーム知ってる?この看板に出てるやるなんだけどさ」
「もちろん知ってるよ。私もよくプレイし――――いや、訊きたいのはそこじゃなくって……」
リンはラミルがここにいる理由を訊こうとしたが、話は格闘ゲームの話題に移り変わっていた。
「さて……次は君のターンだよ?」
「えっ……?私のターン?」
「うん。私のキャラ談議に付き合ってくれたよね。お返しに、君も1つ質問していいよ」
そう言われたリンは、最初から気になっていたことを訊いた。
「確かに、さっきからずっと聞きたかったことがあるんだけど……こんな夜遅くに、どうして1人で六分街に?」
「それでいいの?うーん、どこから話そうかな……前置きは抜きにして、結論から話すよ――――君の狙ってる音動機、私も欲しくなっちゃったんだ。悩んだけど、やっぱりああいうビンテージものをコレクションに加えたくて……これで私たち、晴れて本当のライバルだよ」
「!」
ラミルはどうやら、狙いの賞品をリンと同じフリンツ合金製の音動機に決めたようだ。その言葉に、リンが少しながら驚いていると……
「でも……私のエーテリアスカード、壊れちゃって。大会が再会する前に直さないといけないんだけど、六分街に腕のいい技師さんがいるって聞いたから……」
「あ、それエンゾウおじさんのことだ。うちのお隣さんで腕は確かだけど、さすがに今日は店じまいじゃない?第一、どうして壊れちゃったわけ?」
「うーん。コマンドを入れたら画面が点かなくなっちゃって……『上上下下…左左右右BABA』って……」
「よくある隠しコマンドだけど……絶対、あれに入れるやつじゃないと思うな……!」
「別に思いつきでやったわけじゃなくってね、十年ちょっと前の『ホロウ・ザ・ヒーロー』で、実際に隠しコマンドを仕込んだプログラマーがいたんだから!少し調べたら、当時のニュースが出てくると思うよ。今のところランキングは接戦……ボーナスポイントでも貰えないかなって思ったけど……残念、当てが外れちゃったよ」
それを聞いたリンは……
「原因が分かってるなら、何とかなるかも。ちょっと私に貸してくれる?」
「!もしかして直してくれるの?嬉しい!大会がまた始まるまでに直らなかったら、どうしようって思ってたから」
ラミルからエーテリアスカードを渡されたリンは、彼女のカードのメンテナンスを行った。その最中にラミルから『何故、深夜の六分街を歩いていたのか?』と訊かれ、リンは正直に悪夢のことについて話していた。その話をしているうちに……
「……よし。端末はちゃんと動くようになったよ、返すね」
「本当に助かったよ。これで今夜は安心して眠れそう」
「いいのいいの……けど、仮にもライバルならあんまり信用しすぎるのも考えものだよ?ちょっと技術のある人にかかれば、端末を二度と動かないようにすることもできちゃうんだから」
リンはそう言ったものの……
「表裏のないただのいい人に見えたから、任せてもいいかなって思ったの。『信用』とは少し違うよ。でもこうして助けてくれたし……私に何かできることがあったらいいな」
ラミルはそう言った後……
「ねぇ、君の言う悪夢……少し覗いてもいい?」
「えっ?」
「気になっちゃった……君の『悪夢』が、どんなのか――――」
ラミルはリンの瞳を覗き込んだのだ。それから数秒して……
「!……そっか」
ラミルは何かが分かったようにな素振りを見せ……
「表裏がない、っていうのは誤解だったかな。善良な市民さん?カードを直してくれたお礼はきっとするよ。けど、今すぐに私が何かできる感じではないから……君の『悪夢』は」
何やら意味深なことを口にした。
「そ、それってどういう意味?えっと、またあなたの質問に答えたんだから、今度はこっちのターンでしょ?」
「よっぽど『ターン制バトル』が気に入ったみたいだね?」
ラミルにそう言われたリンは……
「さっきの言葉はどういう意味?あと、何でジークのことを探してるの?」
自身が知りたいことと、ホロウの中で会ったジークを探している理由を訊いた。すると……
「?何でジークの話をわざわざ……?」
「えっと、それはね――――」
「まさか……ジークと会ったの!?ホロウの中で!?」
ラミルは突然、取り乱したようにリンの肩を掴みながらそう訊いてきたのだ。
「ちょ、ラミル落ち着いて……!」
「!ご、ごめん……つい……」
ラミルははっとして我に返ると、リンの肩から手を離した。
「……訊かせて。ジークは……どこにいたの?」
「……ジークとは、大会でトラブルがあった後に出会ったんだ……ホロウの中で、巨大な鳥のエーテリアスと戦ってたんだ」
「そっか……それで、ジークはどこに行っちゃったの?」
「ごめん、そこまでは……でもジークは『自分はラミルに会う資格はない』って」
「!……やっぱり、まだあのことを……」
「あのこと……?」
リンがラミルにさらに質問しようとしたが……
「!……今夜はここまでかな?君を探している人がいるからね」
「リンちゃ〜〜ん!どーこ行っちゃったワケー?」
シーシィアが焦った声でリンのことを探していたのだ。
「じゃあまたね?そうそう、大会だけど――――『カウ煮エフ』には気を付けて。それと、こっそり近づいてくる、怪しい人にもね?あ、それとジークのこと教えてくれてありがとね」
ラミルはそう言い残すと路地に入っていき、角を曲がったところで姿を消していったのだった……。
読んでくださり、ありがとうございます!
今回はジョイアスを登場させました。そして現代では、ラミルが意味深な発言を……?
それでは、次回の話もどうぞよろしくお願いします。